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2006/10/31

池田清彦「環境問題のウソ」感想。
啓蒙書(?)。2006年10月30日読了。

環境問題のウソ(ちくまプリマー新書)
池田清彦 /筑摩書房 2006/02出版 167p 18cm ISBN:4480687300 ¥798(税込)

私はマスコミ、中でも最もメディアパワーがあるテレビ業界で働いている。その私が思うに、今のテレビ業界(民放)は駄目だ。ろくに調べもしないであることないこと垂れ流す報道局がその典型で、中でもニュースステーション、報道ステーションは最悪。報道であるにもかかわらず、世論が食いつきそうなニュースを恣意的に流し、尚かつ無知なキャスターの根拠のない一方的な意見まで垂れ流しだ。世間の人たちはテレビや新聞から得る情報が総て正しいと思いこむことが多いから、テレビや新聞の一方的な見解をそのまま信じてしまう。そして、その反論はほとんど報じられることがない。


著者はこの本の中で、ニュース報道などで語られる環境問題が、如何に適当か(嘘っぱちか)を断じている。

(1) 京都議定書で定められたCO2削減。著者曰く、CO2削減したって地球温暖化防止効果はほとんどない、とのこと。地球が温暖化するのは太陽から降り注ぐエネルギー量が増えていることが最も大きな要因であり、それがゆえ地球環境を数万年の単位で見ると、現在は緩やかな温暖化傾向が見られる時期であるから、CO2が地球温暖化の主原因ではないと言う(一因ではある)。アメリカはそのことを知っているから京都議定書にサインしなかったのだろうと。


(2) ゴミ焼却炉からダイオキシンが出る問題。でも動物実験によると、ゴミ焼却炉から排出される程度のダイオキシン量では、人体にほとんど影響がないと言いきる。


(3) 湖から外来魚であるブラックバスを根絶させよう。というか何で外来種が入り込むのを防がなきゃならないの?何でそんなにしゃかりきになって日本固有種を守らなければならないの?
アメリカザリガニはウシガエルのエサとして連れてきた外来種だよ、そのウシガエルも食用として繁殖目的で連れてきた外来種だよ、トキは日本固有種が絶滅寸前で窮余の策として中国のトキを連れてきて繁殖させているじゃない。矛盾してるなあ。


(4) 天然記念物の昆虫採集は保護のため採集禁止。って言うけどその昆虫を発見したのは昆虫採集を楽しんでいる一般人だよ。環境省や文化庁の連中が主導して発見されたのではなく一般人が発見したのだよ、ということは一般人が見守っていなければ絶滅しても判らないよね。採集出来なきゃ見守れないよね。


と言うようなことが書かれているのだが、結論がまた素晴らしい断じ方である。


(1) CO2削減のために必要な設備を作る会社(と癒着した議員や役人)が大儲けできるじゃないか。

(2) ダイオキシンを発生させない焼却炉を作っている会社(と癒着した議員や役人)が大儲けできるじゃないか。

(3) ブラックバスを駆逐する業者(と癒着した議員や役人)が大儲けできるじゃないか。

(4) 環境省や文化庁がバカだから。


最後に、奥付に著者プロフィールがないので、著者がどういう立場で物申しているのかよく判らない。もしかしたらこの著者は単なるクレーマーなのか?と勘ぐってしまう(まあ内容がしっかりしているから学者だろうという想像は付いたが)。このあたりは、編集部がきちんと対応しなければならないと思う。

ちなみに早稲田大学国際教養学部教授。専門は理論生物学、構造主義生物学です。


8点/10点満点

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コメント

 この本は読んでませんが、この著者の本は数冊読みました。生物学者なのですが、社会的なテーマについてもいろいろ発言している方です。なので本書の内容についても想像がつきます。
 例に挙げておられる4点のうち、ブラックバスについては、日本固有種を守るという以上に、生物多様性を守るという観点から(放置しておくと日本の湖沼はブラックバスとブルーギルだけになってしまうという説があります)、私は駆除に賛成なのですが、日本固有種の維持に狂奔すべきではないと思います(例えばタイワンザルの問題とか)し、あとの3点についてもかねがね賛成です。
 ただ、かなりリバータリアン寄りの方なので、社会的なテーマについての発言は、疑問に思うことも多いです(この著者の『正しく生きるとはどういうことか』を読みましたが、あまり共感しませんでした)。

投稿: 深沢明人 | 2006/11/23 00:55

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