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2006/11/08

陳惠運「わが祖国、中国の悲惨な真実」感想。
ドキュメンタリー。2006年11月08日読了。

わが祖国、中国の悲惨な真実
陳惠運 /飛鳥新社 2006/09出版 220p 19cm ISBN:4870317478 ¥1,365(税込)

近年、凄まじい経済成長を遂げる中国。

その裏には、中国政府が伝えない驚くべき人民軽視の実態がある。

1949年上海生まれの中国人である著者は、1987年37歳で日本に留学し、1995年に日本への帰化申請を行い、その1年後帰化する。日本に来てから、日中協会会員として日中の橋渡しを行っていた著者は、日々腐敗が進行し、誰も彼もが拝金主義に傾いていく現在の中国に対し、警鐘を鳴らすべくこの本を書いた。


その内容は驚くべきことばかりである。

・中国の病院は、(国からの補助がないため)金を持っていない病人を診察しない。
・中国の病院では、薬は院内処方のため、病院内で買わなくてはならないが、薬の値段は病院の自由。仕入れ価格と販売価格の差分(薬価差益)は、医師と院長と監督役人の懐に横領金として収まる。
・中国では、1年間に新薬が1万種類も認可されている。パッケージや色を変えただけで新薬認可されるケースもある。新薬にすれば新たな効き目があるように見せかけ、値段を高くしても文句を言われないから。
・薬の製造コストを下げるため、薬成分の代わりに有毒な工業用薬品を混ぜる薬品メーカーがある。

・中国のダムのかなりで手抜き工事が行われている。あるケースでは鉄筋が一本も入っていなかった。無鉄筋ダムは3年後洪水で決壊した。手抜き工事で浮いた金は、役人の懐に賄賂として収まる。
・竣工後、半年で壊れて使えなくなった高速道路がある。原因は手抜き工事。

・中国では、コストを下げるため食品にもヒドイ手抜きをしている。
・ハムの製造で、ハエが寄りつかないようにするため農薬を混ぜる。
・病気にかかって死んだ豚の肉を使ってそぼろを作る。
・下水道から取り出された油で揚げたパン。

・その他、公害被害や土地の強制接収などヒドイ話ばかりである。


これらの話は、経済発展する前のことではない。今の中国の話だという。

今の中国は、役人を中心にして誰も彼もが金儲けに走り、金のためなら贈収賄や横領、手抜き工事、あげくは人命に関わるようなことであっても、自分の身に降りかからない人ごとであるなら平気でやるようになってしまったという。

昨年末から今年にかけて、私は中国の小説家、張平(ぢゃんぴん)の「十面埋伏」という本を読んだ。この小説に出てくる中国役人の腐敗ぶりも相当なもので、強烈すぎてイメージが湧かないこともあった。しかし、この本(わが祖国、中国の悲惨な現実)を読むと、「十面埋伏」で書かれている世界がくっきりとイメージできる。中国人作家の書く小説に描かれている世界と、この本で書かれていることが同じなのである。

この手の告発本は、ややもすればオーバーに書かれているだけで真偽のほどが疑わしいことがよくある。内容を鵜呑みにするのは危険だと思うが、この本には信じるに足る迫力がある。


加工食品のいい加減さは、特に中国の田舎町で危険だそうだ。それを読んでしまった今、私は中国に旅行するのが怖くなってきた。


9点/10点満点

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