宮崎学「右翼の言い分」感想。
インタビュードキュメント。2007年03月12日読了。
宮崎学 /アスコム 2007/03出版 270p 20cm ISBN:9784776203919 ¥1,680(税込)
宮崎学が15の右翼団体幹部に直接インタビューし、本書のタイトル通り「右翼の言い分」をまとめた本。
登場する右翼は以下の通り(紀伊国屋bookwebより引用)
●正氣塾塾長代行・中尾征秀郎
抗議や質問に筋の通った返答をしたら、テロなんてやりませんよ
●日本皇民党党主・大島竜〓(みん)
政財界の人間を名指しで追い回せば、日本を変えることができる
●忠孝塾愛國連盟会長・藤元正義
加藤邸焼き討ちは、なぜ起こったのか。事件の背景に疑問を持って欲しい
●大日本一誠会会長・渡邊謙二
シマ(縄張り)のためじゃなく日本のために体を張る。いわば日本全部がシマ(縄張り)なんです
●敬天新聞社社主・白倉康夫
私は恐喝屋ではなく「恐喝家」です。しかし、金だけが目的ではありません
●松魂塾塾長・直隆志
任侠右翼、経済右翼、純粋右翼、右翼には3つのタイプがあるんです
●大日本朱光会名誉顧問・阿形充規
ヤクザは親分に忠誠を誓うけど、右翼民族派は天皇陛下なんです
●護國團元團長・石井一昌
憲法改正なんてとんでもない。天皇批判は「天皇の國」「神の國」をつくるため
●二十一世紀書院代表・蜷川正大
朝鮮や中国が嫌いでも、仲良くすべき。日本が引っ越すわけにもいかないから
●日本青年社理論文教局長・杉山洋
かつては最大のテロ集団でしたが、それについての反省をしています
●大行社理事長・岡樹延、本部長・丸川仁
昔は公安警察と飲みに行ったりしましたが、すっかり時代は変わりました
●大日本愛国党総隊長・舟川孝
最近の入党希望者には、「給料はいくらですか?」と聞く人もいます
●一水会代表・木村三浩
自堕落なので会社まわりができなかった。それがわれわれの歯止めだったのです
●統一戦線義勇軍議長・針谷大輔
この国を変えるには、クーデターしかない。自衛隊が蜂起すると信じる
●行政調査新聞社社主・松本州弘
戦後の日本を汚したのは、日本の政府、政治家なんです
▲巻末対談―なぜ右翼は生まれ、どこに向かうのか? 猪野健治(ジャーナリスト)×宮崎学
宮崎学はインタビューの際、15人全員に同じ質問をしている。
・自民党加藤紘一の自宅が元右翼に放火された事件についてどう思うか。
・マスコミが右翼の暴力に対して「言論には言論で」と反暴力キャンペーンを張ることについてどう思うか。
・あなたの信条(信念、理念、主張)は何か。
・ネット右翼についてどう思うか。
などである。
15人に同じ(ような)質問をしているが、当然ながら回答は全員違う。その回答の違いにより、右翼とは何を考えているのか、右翼は何に怒っているのか、右翼は今後どのような活動をしていくのか、などが見えてくる。(ま、細かな内容は読んでください)
私は常々左翼的な人々、中でも平和主義者、環境運動家、動物愛護団体などの活動に疑問を抱いている。
平和主義は理解できるが、自衛隊全廃論は理解できない。自衛隊がなくなったら有事の際誰が守ってくれるのだ?
環境破壊を止めるには人類の消費活動を抑えることが必須なのに、それに触れずリサイクルを推進しましょうというのは言葉のまやかしではないか、だいたいがリサイクルをするのに作るよりエネルギーを要する(=石油を消費し二酸化炭素をより多く排出する)方法でリサイクルしてどうするのだ?
動物を保護する前に飢えて死んでしまうアフリカの子供たちを何とかしようと思わないのか?
などなど。
このように左翼的な人々の主張には全く共感できないのだが、本書に登場する15人の右翼幹部の言い分はとても筋が通っており、私はかなり共感した。共感した、つまり私の思想はきわめて右翼に近いということなのだろう。
そんな私が書くと嘘くさいかも知れないが、本書に登場する右翼幹部の言い分は実に興味深く、読んで損しない本だと思うのだ。
7点/10点満点
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