東一眞「中国の不思議な資本主義」感想。
新書。2007年06月18日読了。
本書の概要(紀伊国屋BookWebより)
巷にはニセモノがあふれ、官僚は官職を売買し、儲かると思った分野に企業が殺到して共倒れする。
隣国のこの奇妙な経済がどんなタイプの資本主義を形成するか、我々は知っておくべきだ。
第1章 資本主義のタイプ
第2章 中国経済の下部構造
第3章 殺到する経済
第4章 官僚腐敗の構図
第5章 中国経済の未来
終章 ヘデラ型資本主義
2003年~2006年、著者は読売新聞北京特派員として中国国内で暮らした。
その経験から、中国はどうしてあんなにマナーが悪く無秩序なんだろうか、そしてそれが中国経済、ひいては世界経済に与える影響は如何なるものなのだろうか、ということを著者なりに分析し、本書を上梓した。(ヘデラ型資本主義というのは、著者の命名)
本書の中でもっとも説得力があり、納得したのが第3章「殺到する経済」である。
この章で引き合いに出されているのは、中国で次々と作られている製鉄所である。
細かな数字は省くが、製鉄が儲かる、と判断した中国国民は、需要を考えず次から次へと製鉄所を作りまくっている。日本的な考えからすると、製鉄所のような設備産業は、大手資本が長期的な需要観測を元に、計画的につくるものである。
対して中国では、儲かるから、という理由だけで、今まで製鉄などやったこともない連中が次から次へと製鉄業に参入し、今や1500事業所に達する。そして、来年、再来年とまだまだ製鉄所が増え続けるのである。製鉄所が増えることで、当然ながら生産量も増える。1年で増加する生産量は、何と日本のすべての製鉄所の年間生産量を上回っている。
しかし、にわか参入組が高品質な鉄を作れるほど甘くはない。中国で増産され続けている鉄は、質の悪い粗鋼なのだ。粗鋼レベルの鉄の世界需要は、中国が生産する量よりも少ない。行き着く先は値下げ合戦、そして破綻である。
このような現象は鉄に限った話ではなく、中国とはこういう国なのだ。
儲かる商売が見つかる→にわか参入組が殺到する→値下げ合戦→大手以外破綻
カラーテレビも同じ、液晶ディスプレイも同じ、今は中国の国産自動車がこのような状況にあるという。
あまりの興味深さに、一気に読んでしまった。
秀逸。
8点/10点満点
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