山本一巳・山形辰史編「国際協力の現場から」感想。
現場リポート(?)。2007年06月20日読了。
山本一巳/山形辰史 /岩波書店 2007/05出版 206, 18cm ISBN:9784005005642 ¥819(税込)
「国際協力の現場から―開発にたずさわる若き専門家たち」という本書には、国際協力の現場で働く18人の人たちが原稿を書いている。
執筆者の現所属先は、
国際協力銀行ナイロビ駐在員事務所
世界銀行ヤングプロフェッショナル
国連難民高等弁務官事務所スーダンの国連ボランティア
国際労働機関本部バンコク事務所テクニカルオフィサー
などなど。
でも読んでいくと、執筆者もその所属場所も違うのに、なんだか同じような話が繰り返される。
18人の執筆者が書いているけど、約200ページ。一人あたり約10ページ。つまり掘り下げが浅い。
なんかちょっとテーマにそぐわないなあ、と思っていたのだが。
本書は書店で平積みになっていたので、あまり考えずに買った本なのだが、よく見たら「岩波ジュニア新書」だった。ううむ、国連のようなところで働きたいと考えている高校生が対象なのだろう。
この本を読んだ私は、
似たような名前の異なる国際協力機関が、
端から見たら同じようなテーマの援助を、
異なる組織間の連携があまりされないまま、
実は重複しているかも知れない援助(開発?)を行っているのだなあ。
と感じた。こんなのでいいのかね?
あと、本書のサブタイトルは「開発にたずさわる若き専門家たち」なのだが、執筆者18人の2007年の満年齢は、38歳、34歳、35歳、37歳、39歳、40歳、36歳、45歳、36歳、30歳、不明、47歳、43歳、49歳、41歳、40歳、46歳、38歳、である。
ちっとも若くないのである。
国際協力の現場では、英語は読み書き聞き喋りペラペラが最低条件で、そのほかに2~3カ国語使いこなせなきゃ仕事にならないだろうし、そのほかにも協力を行う現場知識も、相当に高いレベルの知識を持っていないと相手にされないのだろう。だから現場に出る頃には、日本の教育制度ではどうしたって30歳を超えてしまっているのだろう。
国際協力の現場で働きたいと思って興味を持ってこの本を読んだ高校生が、この現実=あと10年勉強し続けてようやく現場に立つことができ、更に10年経ってもまだ若手と呼ばれてしまう=を知って、それでもなお国際協力の現場に立ちたいと強い意志を持ち続けることができるのだろうか。
更に言えば、これは別の本で読んだ話だけど、がんばって国連職員になれたとしても、国連職員は2年契約の契約社員が基本で、働きが悪いと思われたら契約更新無し、という更なる厳しい現実がある。
この本の出版意図がちょっとよく判らないのです。
5点/10点満点
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