大沢在昌「影絵の騎士」感想。
近未来SFハードボイルド。2007年07月14日読了。
大沢在昌 /集英社 2007/06出版 508p 19cm ISBN:9784087748703 ¥1,890(税込)
あらすじ(紀伊国屋bookwebより)
「B・D・T」と呼ばれるスラム化に、東京はむしばまれていた。
新東京として何とか再生を果たすが、「ネットワーク」という強大なテレビ機構が、あらゆる産業を牛耳るまでに発展を遂げていた。
番組を通じての連続予告殺人が横行。
世間の関心を独り占めする。
事件の背後に浮かび上がる、謎のグループ「フィックス」、そして日本版ハリウッドともいうべき「ムービー・アイランド」。
探偵はひとり、人工島に乗り込む。
現代のテレビ局は、自分たちの都合の良いようにニュースを流し、世論を操作することができる。視聴率を稼ぐため、世間に迎合した、必ずしも正しいは思えない意見を垂れ流すことが多い。(新聞社は恣意的な傾向が昔から顕著で、朝日新聞は社会主義者もしくは共産主義者の集まり)
本書は、テレビ局が権力を持ちすぎたら世界は一体どうなってしまうのか、というテーマを、近未来SF設定で書いかれたハードボイルドの傑作。新聞社が権力を持てないところに、未来像を感じる。
大沢有昌は日本の(いや世界のか)テレビ局の行く末に、とても危機感を抱いているのではないだろうか。この小説で書かれている行き着くところまで行き着いてしまったテレビ局の姿は、実際に起こりえる姿だと思う。
本書の設定は、テレビ局の報道(ニュース)を無条件には信じない私には、とてもリアリティが感じられた。
2070年頃の設定なのだが、設定を理解させるためか、ところどころ妙に説明っぽいし、近未来の技術発展に関する想像力が甘い。そういうマイナス要因もあるけど、大沢在昌の最高傑作の一つではないかと個人的には絶賛するのである。
9点/10点満点
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