藤野眞功「バタス 刑務所の掟」感想。
フィリピン刑務所ノンフィクション。2010年08月22日読了。
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日本の旅行会社に就職し、めきめきと頭角を現した大沢。大沢をトップセールスマンにのし上げたのはフィリピン買春ツアーの斡旋だった。そして23歳で独立、マニラに店を構える。マルコスの側近を後ろ盾につけ、イケイケだった。
が、マルコス政権が倒され状況は一変。
マニラの警官と組んで、少女買春とマリファナを楽しんでいる日本人を引っかけ、金を引っ張り出そうと目論むが、失敗。日本大使館も巻き込む大騒動になり逮捕。取調室で拷問を受けた末、起訴。死刑判決。極悪犯ばかり収監されているモンテンルパ刑務所に入る。大沢34歳。
モンテンルパ刑務所には12のプリズンギャングが存在し、ギャングと刑務局の折衝によって均衡が保たれている。刑務所内でリンチや殺しがあるのは日常茶飯事だった。入所者は、いずれかのギャングに入らなければ生きていけない。そして、自分の食い扶持は自分で稼がなければならない。刑務所内で商売が成り立っているのだ。
本書は、最悪の刑務所に収監された大沢が、旨い密造酒の造り方を考案し一儲けし、最大派閥のプリズンギャング「スプートニク」の仲間になり、そしてトップに君臨し、刑務所内にあるサムスンの工場(サムスンすごいな)で受刑者をまとめる仕事をし、飽きてレンタルビデオ屋(刑務所内で、です)をやったりしているうちに、フィリピンで死刑が廃止になったため無期懲役になり、満期出所。19年の刑務所生活を終え、現在は日本で母親と暮らしている。というノンフィクション。
極悪人ばかり収監されている刑務所で、プリズンギャングのトップに立てるくらいなので、大沢という男は悪人なんだろう。けど、本書は、やくざがのし上がっていく物語を読んでいるような感覚になり、一気に読み終えることが出来た。
本書のカバー折り返しに、文芸評論家で慶応大学教授の福田和也氏がコメントを書いており、「なによりも、文章が、言葉が素晴らしい。輝いている。生動している。自分しか書けない、語れない、魅せられない形式を持っている。ここで、読者が突きつけられるのは、誰も示すことが出来なかった世界だ。文芸の未来は、ここからはじまる。」(全文引用)
それは褒めすぎだと思うぞ。
7点/10点満点
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