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2010/10/28

富坂聰「中国の地下経済」感想。
中国ルポ。2010年10月23日読了。

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中国の地下経済


中国がこの先どういう方向に進んでいくのか興味があり、たまに中国関連の本を読んでいる。

中国国民が多少なりとも洗練されパチモン作るのをやめ正しい経済発展を遂げ先進諸国のようになっていくのか、強気の国際政策や経済摩擦を続けたため国際社会で孤立しその勢いで少数民族が諸外国から支援を得て独立内戦に発展するのか、それとも今と何も変わらずに一党独裁歪んだ経済発展が続き凄まじい勢いで高齢化する人口が生産性の低下を招き気づけば経済が鈍化し国民全部大貧民に戻ってしまうのか、どう転ぶんだろうか。昨今のニュースからわかることは、中国は以前ほど低賃金で工員を雇える国家ではなくなってきており、賃金が安いとすぐに転職してしまうから工員の熟練度は足りず、結果として品質ではマレーシアやタイに敵わず、賃金ではベトナムやバングラデシュに敵わない。世界の工場たる地位は徐々にではあるが、他のアジア諸国に奪われつつある。ということはそう遠くない時期に中国の経済発展が萎み出し、新疆ウイグル自治区辺りがイスラムマネーを得て独立闘争を始めるのかな、と思っている。私は中国ウォッチャーじゃないからそれほど中国情勢に詳しいわけではないけど、ニュースを見ているだけだとそうなりそうな印象を持っている。


というわけで本書。

著者は1964年生まれ、北京大学に留学したのち、中国情勢を発表し続けているジャーナリストとのこと。1980年代から中国の中に入って中国の実態を見続けているのだから、正真正銘の中国ウォッチャーなんだろう。

本書は、中国の地下経済とはいったいいかなるモノなのか、その一端を取材したルポである。留学経験とその後構築したと思われる中国人脈は豊富で、本書に書かれている話の信憑性は高い。(例えば、経済官庁に籍を置く国務院の幹部とコンタクトをとれる、など)


中国のデパートで主婦が買い物をしようとしていると、女が近付き「デパートのプリペイドカードを額面の7割で売る」という。実際そのプリペイドカードは問題なく使える。なぜか?

中国で売られている高級タバコは一箱3900円(300元)もする。しかし、このタバコがとても売れているという。なぜか?

いずれも賄賂代わりだという。官僚に賄賂としてプリペイドカードや高級タバコを送る。官僚はそれを街にあるなんてことはない店(実は換金所)で簡単に現金に交換できる。換金率は額面の3~4割(だから7割で売っても元が取れる)。

デパートで近付いてきた女も、街角の換金屋も、どちらも地下経済の住人である。


別の話として、著者の携帯に「月3%で地下金融から金を借りませんか」とメールが届く。そのメールに書かれていた電話に連絡すると、無担保で6500万円(500万元)化してくれるという。つてを辿り地下金融に取材すると、無担保で貸しても、必ず返済させる(もしくは返済相当の儲け話を引き出す)手段を地下金融は持っているという。この話をきっかけに地下金融の取材を進めると、中国経済の問題点が見えてくる。中国の銀行は、中小企業相手に金を貸すようなことはしない。そんな連中を相手にしても、大した金儲けにはならないからだ(ちなみに、中国の銀行の融資担当は、凄まじい利権職なのだそうだ。融資担当の胸先三寸で金を借りられるか借りられないかが決まるから、金を借りたい企業は融資担当に山ほど賄賂を渡すそうだ)。

では銀行が金を貸してくれないなら、中小企業の経営者はどこから金を借りるのか。ほとんど地下金融から借りているらしい。

2008年、著者は地下経済に詳しい現役経済官僚と会い、地下経済の規模を聞いた。その解答は「表のGDPの半分」=日本円にして200兆円という驚くべき数字だった。(本書69ページ)


更に別な話として、最初に書いたプリペイドカードを売る女などは、職にあぶれた連中であることが多い。地下経済は、職にあぶれた連中の最後の拠り所として、中国社会に深く根を下ろしている。コピー商品を作っているのも、地下経済の連中であることは言うまでもない。


本書の半分くらいまで、興味深い部分に付箋を貼りながら読んでいたが、途中でやめてしまった。本書の全てが興味深く面白いのである。付箋が多すぎてあまり意味が無くなってしまったのだ。

この著者は非常に面白い。今後要注目である(まあ私が今まで知らなかっただけで、多方面から注目されている方なんだろうけど)。


本書を読み、中国が今後どのようになっていくのかを考えると、やっぱり分裂内戦がいちばんあり得そうに思えてくる。


9点/10点満点


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