富坂聰「中国官僚覆面座談会」感想。
中国ルポ。2010年11月20日読了。
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最近超お気に入りのジャーナリスト富坂聡をまたしても読む。
1984年頃に北京大学に留学していてその後もずっと中国ウォッチを続けている著者が、人脈を活かして中国の現役官僚たちと覆面座談会をしましょう、という雑誌(週刊新潮)に掲載された企画をまとめた本。とのこと。
国務院外交部(日本の外務省に相当)の課長補佐、
武装警察部隊北京総隊の大佐、
国際協力機関の職員、
国際シンクタンク日本担当研究員→中国共産党機関紙記者、
司会著者
のメンバーで行われた3回の座談会が載っている。
座談会の開催時期は毒ギョーザ事件、四川大地震、チベット動乱が起こった頃で、北京オリンピックの前。
中国の報道機関は徐々にであるが言論開放の方向に向かっていて、それはなぜかというと中国共産党の言いなりになっていると売れないからで、それは上層部もわかっていて、これは「治安を守るはずの公安が、実は犯罪が完全になくなれば困り、チベット問題がなくなれば統一戦線工作部が困るのと同じ構造だ」(43P)
とか、
オリンピック阻止を叫んで、爆弾もってバスジャック未遂を起こした犯人が実は漢族の退役軍人で、「退役した軍人たちはいま、中国社会で完全な負け組になっているからな。格差を生んだ社会や成功者に対する憎しみは尋常じゃないし、それが転じて政権への反発も強い」(127P)
とか、
台湾が独立しようとしたらオリンピックをぶちこわしてでも全力で台湾と戦争することになるだろう、そのくらい中国にとって台湾は重要で、無理矢理どうこうしようとアメリカが介入して来やがったらアメリカと中国が戦争することになっちまうぜよという中国のメンツがあり、で実際に戦争になったと仮定すると、「中国にもアメリカにない強みがあるんだよ。それは、アメリカの国民と比べて、中国の人民はまだ戦争で人が死ぬということに耐えられるという強みだ。例えば中米戦争が起きてアメリカの軍人や一般市民が十万人も死ぬことにアメリカは耐えられないだろう? でも、中国は軍人はもちろん一般人が十万人死んだとしてもまだまだ戦争を継続できるだろう。だから中国がアメリカと戦うことがあっても、決して勝負にならないというわけじゃない。極端なたとえをするならば、アメリカは核兵器一つで戦争の継続は難しくなるが、中国は三つ四つ落とされてもまだ戦争を続けることができるんだ」(140P)
うーん、面白い。一気に読んでしまった。というか週刊誌の延長線なので読むのに大した時間はかからなかったが。(11/23内容ちょっと修正)
6点/10点満点
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