フレデリック・フォーサイス/篠原慎訳「戦争の犬たち(下)」感想。
クーデター実行作戦小説。2012年10月08日読了。
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絶版(たぶん)なので、古本で買いました。
◆内容(本書カバー裏から丸ごと引用)
シャノンはジェームズ卿の依頼を引き受けた。百日で国ひとつを乗っ取るのである。シャノンは、ただちに名うての傭兵四人を集め、準備に取りかかった。
武器弾薬、輸送船等、襲撃に要する一切を知花ルートを通じて調達すべく、五人の”戦争の犬”たちはヨーロッパ各地に散った。
一方、シャノンはジェームズ卿の娘に近づき、計画の真の目的を探り出すことに成功した。その時から、アフリカの大地とそこに住む人々をこよなく愛するシャノンの胸のうちには、卿の意図とは異なる、密かな野望が芽生え始めていた。
◆背景うんちく
政権転覆させられるザンガロ国のモデルとなった赤道ギニアは、首都マラボのあるビオコ島と、アフリカ大陸に少しの土地と、いくつかの諸島で成り立っている国である。
国土の総面積は四国の5割増しくらいで、人口は70万人弱。国土に人が住める場所が少ないという理由もあるが(淡水がない)、アフリカの独立国にしては、とにかく人口が少ない。
で、フォーサイスが「ジャッカルの日」の印税で赤道ギニアを乗っ取ろうとしたのは1972年であるらしい(真実か否かはさておき)。
それ以降も、赤道ギニアは何度もクーデター未遂が発生している。
近いところでは、2004年に民間軍事会社を経営していた元兵士サイモン・マンが、赤道ギニアの石油資源を乗っ取る目的で、イギリスのサッチャー元首相の息子を資金源として、クーデターを企てた(一説によると、サッチャー元首相が本当の首謀者とも言われている)。
このクーデターは、武器と兵士を空路で移送し、一気に攻め落とす作戦だったが、飛行機の燃料補給でジンバブエに立ち寄った際、兵士もろとも全員ジンバブエで逮捕され、赤道ギニアに移送され裁判にかけられ有罪となった。
この知識は、NHK BS世界のドキュメンタリー「赤道ギニア 石油をめぐる陰謀」で得たものなので、興味有る方はこの番組を見られたし。
◆感想
と言うわけで、本書は現実世界でも付けいる隙のある赤道ギニア(物語上はザンガロ国)を舞台にした、クーデター実行手順を詳細に記した、ノンフィクションに思えてしまうフィクションである。
今と違って携帯電話もなく、インターネットもなく、電報や手紙が有効な連絡手段で、為替送金や小切手、トラベラーズチェックが決済手段として有効な手法である時代に、主人公シャノンを中心としたプロの傭兵五人が、与えられたミッションを忠実にこなしていく様は、読んでいて痛快である。
これを現代に置き換えると、個々の傭兵にここまで複雑な知識があるだろうか? 一昔前の傭兵というのは、実に様々な知識を持っていたのだなあ、と言うことを感じる。
シャルル・ルウという傭兵の中途半端さや、ジェームズ卿の娘との件や、結末にはがっかりしたが(これは好き嫌い)、クーデターに至る過程の綿密さに読み応えがあり、40年前が舞台であっても、古さをあまり感じさせない。
おもろかったよ。
7点/10点満点
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