早坂隆「祖父の戦争」感想。
徴兵記。2014年11月27日読了。
私的10点満点の本。
著者の早坂隆氏の本は、
早坂隆「世界の日本人ジョーク集」2006年10月03日読了。8点
早坂隆「世界の紛争地ジョーク集」2006年10月11日読了。4点
早坂隆「ルーマニア・マンホール生活者たちの記録」2006年10月21日読了。7点
早坂隆「世界反米ジョーク集」2006年10月25日読了。6点
を読んでいる。全部2006年の10月に読んでいる。理由はよく覚えていないが、マイブームだったのだろう。本書は2005年8月に出版されている。なので、マイブームの流れの中で買った本だと思う。
だがマイブームが突如過ぎ去ってしまったらしく、本書は8年間積ん読だった(実のところ積ん読になった経緯はよく覚えていない)
本書は、癌で余命わずかとなった著者早坂隆氏の祖父の徴兵体験を、ジャーナリストとして一本立ちしようとしている著者が祖父にインタビューし、それを時系列に再構成したもの。
著者の祖父は第二次世界大戦に徴兵され、昭和18年に戦地(中国・えん州→たぶんここ)に出征し、討伐戦に出ることはあったものの、自身が大けがを負うことなく終戦を迎え、シベリア送りにならず、天津から博多へと帰国した。
本書で特筆すべき点は、著者の祖父が、東大卒(東京帝国大学文化乙類)のインテリだったことである。
東大卒のインテリが、学のない野蛮な上意下達の徴兵システムに組み込まれ、知識は役にたたず、暴力の渦に巻き込まれた。
著者の祖父は第二次世界大戦に巻き込まれた。だから、それ以前に起きた戦争である日露戦争や第一次世界大戦の経緯は知っている。しかし、国家が否応なく戦争に巻き込んだ。知力ではなく暴力の世界に巻き込んだ。それが故、著者の祖父は、戦争で体験したことを家族にも話さなかった。
著者の祖父は癌で弱っていて、かわいい孫がジャーナリストとして一本立ちする手助けになるのならば、という思い(もあったのだろう)で自身の戦争体験を著者に語った。
こういう本は探せばたくさん出てくるのだろうが、私は今までこういう本を読んだことがなかった。素晴らしい本だと感じた。
10点/10点満点
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