船戸与一「残夢の骸 満州国演義9(完結)」感想。
歴史冒険小説。2015年05月11日読了。
1970年代まで、日本では「犯罪」が絡んだ小説はすべてミステリというカテゴリーに一括りにされていた。
1976年から大映が西村寿行原作の「君よ憤怒の河を渉れ」「犬笛」「黄金の犬」、1979年から角川映画が大藪春彦の「蘇る金狼(松田優作)」「野獣死すべし(松田優作)」「汚れた英雄(草刈正雄)」が公開され、また同時期にフレデリック・フォーサイス原作の映画「戦争の犬たち」などの洋画も公開され、この辺りからバイオレンス小説(今で言う冒険小説)というジャンルが認知されるようになった。
このジャンルを得意とする作家には、北方謙三、志水辰夫、逢坂剛、大沢在昌、佐々木譲、高村薫などのベストセラー作家が居る。
船戸与一(功労賞的に直木賞を受賞している)も、冒険小説を得意とした作家である。
その船戸与一は、今年、2015年4月22日、癌で没した。享年71歳。
本書は、日本が満州を属国化する前の1920年代から、終戦後の1945年までの満州を舞台にした小説で、2007年に第1巻が出て、著者が死ぬ前に最終刊である本書を上梓した。
この本を書き上げる前に死ねない。そういう著者の執念を感じる。
船戸与一らしい救いようのないない終わり方をしているが、船戸与一の著作を何冊も読んでいる人ならば、実に船戸与一らしい終わり方だと思うだろう。
巻末に、13ページに及ぶ参考文献一覧が記載されている。また、「あとがき」に、資料を読めば読むほど、どれが本当の史実なのかが分からなくなってきた、的な事も書いている。
本書は、主人公である敷島四兄弟を狂言回しに据え、基本的に史実と思われることをなぞらえている(船戸与一が調べた範囲での)満州史実である。
圧巻である。
7点/10点満点
第1巻
第2巻
第3巻
第4巻
第5巻
第6巻
第7巻
第8巻
| 固定リンク | 0
« 石井光太「浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち」感想。
ルポ。2014年04月30日読了。 |
トップページ
| 桑嶋幹「よくわかるレンズの基本と仕組み 第2版」感想。
光学入門書。2015年05月15日読了。 »
「◆小説・冒険小説」カテゴリの記事
- 船戸与一「残夢の骸 満州国演義9(完結)」感想。
歴史冒険小説。2015年05月11日読了。(2015.07.22) - 船戸与一「南冥の雫 満州国演義8」感想。
歴史冒険小説。2014年02月28日読了。(2014.03.12) - 大沢在昌「鮫島の貌-新宿鮫短編集」感想。
冒険小説。2014年01月30日読了。(2014.02.06) - 逢坂剛「さらばスペインの日日」感想。
イベリアシリーズ7(完結)。2013年12月17日読了。(2014.01.04) - フレデリック・フォーサイス/篠原慎訳「戦争の犬たち(下)」感想。
クーデター実行作戦小説。2012年10月08日読了。(2012.10.17)
「◆小説・時代小説・歴史小説」カテゴリの記事
- 新田次郎「劔岳<点の記>」感想。
近代歴史小説。2017年12圧15日読了。(2018.06.12) - 井上靖「蒼き狼」感想。
歴史小説。2017年12月07日読了。(2018.06.09) - 船戸与一「残夢の骸 満州国演義9(完結)」感想。
歴史冒険小説。2015年05月11日読了。(2015.07.22) - 熊谷達也「銀狼王」感想。
時代小説。2014年11月23日読了。(2014.12.30) - 船戸与一「南冥の雫 満州国演義8」感想。
歴史冒険小説。2014年02月28日読了。(2014.03.12)
「▲船戸与一」カテゴリの記事
- 船戸与一「残夢の骸 満州国演義9(完結)」感想。
歴史冒険小説。2015年05月11日読了。(2015.07.22) - 船戸与一「南冥の雫 満州国演義8」感想。
歴史冒険小説。2014年02月28日読了。(2014.03.12) - 船戸与一「雷の波濤 満州国演義7」感想。
歴史冒険小説。2012年07月17日読了。(2012.07.29) - 船戸与一「大地の牙 満州国演義6」感想。
歴史冒険小説。2011年06月11日読了。(2011.07.05) - 船戸与一「降臨の群れ」感想。
冒険小説。2004年07月20日読了。(2004.07.20)
コメント