デクラン・ヒル/山田敏弘訳「黒いワールドカップ」感想。
サッカー八百長ルポ。2017年01月22日読了。
プロサッカーでは八百長がまかり通っている。
中でも一番厄介なのは、試合前から勝敗がほぼ見えている実力差のある試合で、負けが濃厚なチームを買収して本命チームを確実に勝たせること。これはどこからどう見ても八百長に見えない。
八百長を仕掛けた連中は、単純な試合の勝敗ではなく「何点差で勝つか」に賭ける。従って負けが濃厚なチームに「2点差で負けろ」というような買収を行う。
ということを、シンガポール、マレーシアのプロサッカーリーグで実際に八百長を仕掛けていた組織とコンタクトを取り、さらにヨーロッパで八百長を仕掛けている組織にもコンタクトを取り取材したのが本書。
フランスの1部リーグに所属するオリンピック・マルセイユ(現在酒井宏樹が在籍している)は、1993年に八百長が発覚した。
2006年にはイタリアのセリエAで大規模な八百長が発覚し、ユベントスが2部に降格した。
本書の原著は2008年に、日本語版は2010年に出版された。
著者はイギリスのオックスフォード大学院に通いながら本書の取材を開始し、卒業後ジャーナリストになった人。
八百長はワールドカップにもおよび、グループリーグ2試合目で勝ち抜けもしくは負けが決まっているチームは、八百長の手が伸びやすいとのこと。
既に明らかになっている事件の詳細な解説と、著者が独自に八百長フィクサーと面会し取材した内容が混在している。
興味深い内容なのだが、ちょっと読みづらい。
イギリス人の著者は、八百長の結末について比喩や暗喩を多く用いている。ルポなんだからそこはズバッと明確に書いて欲しいのに暗喩を使っているので、もやもやする。
6点/10点満点
2017/04/13追記
本書の訳者は山田敏弘氏。
インド・ムンバイで起きたテロを取材した「モンスター 暗躍する次のアルカイダ」2012年04月24日読了。10点満点の著者と同一人物であるとつい先ほど知った。なるほど、翻訳もされているんですね。
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