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2017/03/04

ダニエル・カーネマン/村井章子訳「ファストアンドスロー(下) あなたの意思はどのように決まるか?」感想。
行動経済学。2017年02月25日読了。

下巻も非常に面白かった。読むのに時間がかかったが、とても有意義な時間を過ごせた。

この本(上下巻)は内容が詰まっている。詰まっているというのは、余計なことがあまり書かれていなく、斜め読みをすることができない状態のことである。一言一句、かみしめるように読み進めないと、次に書かれていることが理解できなくなるのである。

翻訳に関しては、無理に日本語化した部分が悪目立ちしたが、これだけの内容を伝えたという点では良い翻訳と言える。


下巻のポイント(ほぼ私的メモです。分かりづらくてすみません)

p53
アメリカでスタートアップ企業の存続率は35%である。しかし、スタートアップ(起業)する人のほとんどは、自分が成功すると信じ、失敗する側(65%である)になると思っていない。

p67
所属している会社で、ある新規事業を始めるとする。事業を進めたがる人たちは概ね自信過剰に陥っているので、そういう人たちに「いまが1年後だと想像してください。私たちは、先ほど決めた計画を実行し、大失敗しました。なぜ失敗したのか、簡潔に答えてください」と問うと、新規事業への楽観は消える。

これを「死亡前死因分析」という。


これから後は、ギャンブルをベースにした問いが増える。これこそがノーベル経済学賞を獲ったプロスペクト理論。

問1:あなたはどちらを選びますか
・確実に900ドル貰える。
・90%の確率で1000ドル貰える。

問2:あなたはどちらを選びますか
・確実に900ドル失う。
・90%の確率で1000ドル失う。

たいていの人は、問1では確実にもらえる方を、問2では損をしない可能性が少しでもある方を選ぶ。(期待値の考え方なら、どちらの選択肢も同じである。問1なら+900ドル、問2なら-900ドル)

これは問題の内容をいろいろ変えても同じ結果になり、得をするときは確実な方を、損をするときは少しでも損する額が小さくなる方を選ぶ。


これは株式の売買にも通じ、

あなたは資産をすべて株で運用しています。突然1万ドルが必要になりました。現在儲かっている株を売りますか(利益確定)、それとも損している株を売りますか(損切り)?

多くの人が利益確定に走る。

人間の心理的に、損を確定させることは「自分の失敗を認めることになるので苦痛」に対し、利益確定は「自分の勘が正しかった確かめる作業なので精神的に楽」ということである。


p147
100万ドル貰えるかもしれない確率について、5%ずつ上昇するときの気分の変化
A) 0%から5%に上がる
B) 5%から10%に上がる
C) 60%から65%に上がる
D) 95%から100%に上がる

このうち最も嬉しいのはAであり、次に嬉しいのはDである。

Aは簡単に言うと宝くじ。当たる確率は低いけど、買わなければ絶対に当たらない。買えば買うほど当籤確率は上がる

Dの例は遺産相続。普通に考えたら遺産を全額相続できる立場にいるが、万が一、自分の知らない親族がいて、遺産の相続権を要求してきたら困る。そんな時、あなたの遺産相続権を満額の90%で買い取りますよ!と言ってくる弁護士が居たら、弁護士に権利を売る可能性が高い。


というようなことが満載で書かれている本書は、とにかく面白かった。


9点/10点満点

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