ダン・ライオンズ/長澤あかね訳「 スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家」感想。
中年再就職ルポ。2017年06月25日読了。
「ニューズウィーク」のテクノロジー・エディター(技術系の記事を書くライター)である著者は、52歳で「ニューズウィーク」を解雇された。理由はもちろん雑誌が売れなくなったから。
ハブスポットというスタートアップ企業(資金調達済み・上場準備中)のCMO(最高マーケティング責任者)クラニアム(仮名)に誘われ、ハブスポットのマーケターとしてお世話になることになりました。
意気揚々と初出勤。ところが、クラニアムはいません。その部下もいません。受付で電話をかけまくったら、ようやくザックという20代の若者がきて、「ようこそ、たぶん私があなたの上司です」的なことを言います。
「ニューズウィーク」のテクノロジー・エディターってのは、ハブスポットのCEOですら小物過ぎて相手にしない立場だったのに、そのハブスポットCEO、より下のCMO、の部下よりさらに下の下のザックが上司!?
私は何のために雇われたの?
で、所属部署に連れていかれたら椅子がバランスボール。「クールでかっこいいでしょ」とぬかしやがる。ふざけているのか?
そこで著者は観察した。
椅子がバランスボールなのはクール、
キャンディは無料だ、どんどん食べろ、
会社でハロウィンパーティやるときは朝から仮装が当たり前、
というか目茶目茶高い頻度で会社でパーティやっている、
「Webマーケティングを効果的にかつ効率よくするためのツール」を売っている会社なのに、営業は電話で売り込んでいる、
電話で売り込んでいる連中は大学出て間もないインターンばかりで、とにかく電話をかけまくれ、売れ、売れ、売れ、給料は安いが成功報酬はあるぞ、だから売れ!
よくよく自社製品を見てみたら、セールスフォースの劣化プラグインじゃねーか、
そのくせ、セールスフォース主催のカンファレンスに参加して悪ノリ大はしゃぎ、
でも資金調達に成功しちゃっているから、経営陣は上場(経営陣にとってのゴール)まっしぐら、
赤字垂れ流しでも、資金調達に成功しているからキャッシュフローは困らない、
赤字で上場ってアリなの?
結論からいうと、著者はストックオプションを行使できる「採用1年」を経過して辞めた。ハブスポットは上場した。
内幕を暴露した本書を執筆中、何人かのIT系の大物知人から「お前、喧嘩を売る相手が分かっているのか、時価総額1000億円の会社だぞ、殺されるとは言わないが潰されるぞ」と忠告されるも、本書の出版にこぎつける。
本書の登場人物はほぼ仮名なのだが、エピローグで、ハブスポットの広報が「本書の出版前にハブスポットの幹部が本書の現行を入手しようと違法行為を働いた形跡がある」と発表し、著者自身の身の安全のため?に、仮名で書いたのは実は誰それでしたと明かしている。
シリコンバレーのスタートアップはカルト宗教と似たり寄ったりなんだなあ。ということがよくわかる一冊でした。
私の知り限り、日本のスタートアップの一部もこんなレベルですけどね。
ちなみにハブスポットの株価は、日本でもYahooファイナンスで業績を見ることができる(https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/HUBS)
(Yahooじゃなくてもアメリカ株を扱っている証券会社ならデータは見られる→ティッカーシンボルHUBS)
9点/10点満点
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