ジョビー・ウォリック/伊藤真訳「ブラック・フラッグス(上) 「イスラム国」台頭の軌跡」感想。
ルポ。2018年01月26日読了。
本書は2015年に原著が出版され、2017年8月に日本語版が出版された。
本書帯(が載っているAmazon)より引用
「連続ホテル爆破事件当時、ザルカウィは「イラクのアル= カーイダ」と呼ばれるきわめて凶暴なテロリスト・ネットワークのトップだった。だがヨルダン側は、ザルカウィがまだ「ごろつきのアフマド」と呼ばれていたころからよく知っていた。大酒飲みで喧嘩っ早いと評判の、高校中退の落ちこぼれ。そんな彼が1980年代末、共産主義者たちと戦うと言ってアフガニスタンへ向かい、戦場で鍛え抜かれた狂信的な信仰者としてヨルダンに戻ってきたときも、ムハーバラートは注視していた。初めてテロ活動に手を染めた結果、ヨルダンのもっとも闇の深い監獄の一つに姿を消した。そして今度は、戦場で鍛え抜かれた狂信的な信仰者であるだけでなく、卓越したリーダーとなってふたたび姿を現した。」(「プロローグ」より)
引用終わり
※ムハーバラートとは、アラビア語で諜報機関を意味する
本書は、ISISの前身組織を作ったザルカウィについて、その生い立ちから調べ、イスラム教徒なのに大酒のみの不良少年という青春時代を調べ(当時のザルカウィを知っているヨルダン諜報部が情報源)、アフガニスタンに赴きソ連と戦おうとしたがあまり成果を上げられなく、ヨルダンに戻って王政打倒を画策していたら摘発され刑務所へ。
刑務所収監中にマクディシというイスラム原理主義者(でも過激派ではない)の薫陶を受けイスラム原理主義に目覚め、1999年にヨルダン国王の死去と皇太子の新国王即位に伴う恩赦で釈放され(ヨルダン諜報部は、なぜザルカウィが恩赦リストに載ってしまったのか、と後悔していた)、その足で再びアフガニスタンに赴き、アルカイダと接触(この頃のアルカイダは1998年にケニアとタンザニアのアメリカ大使館爆破、2000年にイエメン沖に停泊していた米駆逐艦爆破攻撃、2001年に9.11テロを起こしていた。ビンラディンの死は2011年)。
資金面や武器の供給などでアルカイダの支援を得たザルカウィは、アフガニスタンでヨルダン王政打倒の過激組織を設営、その後ヨルダンに戻り、在ヨルダン・アメリカ大使館員暗殺などを起こした後、イラク戦争(2003年)で大混乱に陥っていたイラクに入り、反米テロを繰り返すようになった。
以下、下巻
8点/10点満点
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