トム・クラインズ/熊谷玲美訳「太陽を創った少年」感想。
人物伝。2018年06月23日読了。
◆内容(Amazonから引用)
「うん、核融合炉を創ったよ! 」。若干14歳の核物理学者はどうして生まれたのか?
9歳でロケットを実作した、アメリカ・アーカンソー州の早熟の天才、
テイラー・ウィルソンは11歳の若さでさらなる野心に燃えていた。
祖母がくれた本に刺激を受け、核融合炉を自宅で創ろうと決意したのだ。
危険と隣り合わせのそんな作業を、子どもがやってのけられるはずがないという大人の常識をしり目に、
彼には自分がやれるという自信と勝算、そして適切な知識があった。
「ギフテッド」といわれる天才児にもさすがにムリかと思えることが、なぜできたのか。
息子を見守る両親の苦労、大学教員をはじめとする教育関係者の奔走。
彼のそばで直接取材したジャーナリストが語るサイエンス・ノンフィクション。
◆感想
テイラー・ウィルソン氏は、2018年現在23歳である。
彼が14歳で核融合炉を作るに至った経緯が、本書には詳しく書かれている。
類まれなる才能を持った子供=ギフテッドと呼ばれる=が、その才能を開花させるためには、子供自身の努力に任せるのではなく、周囲の大人たちの適切な助力が必要である。
あまりにも頭が良すぎたテイラー少年には、コカ・コーラのボトラー会社を経営している父親(そこそこ裕福)はテイラー少年の投棄された放射性物質探しに付き合い、核融合を目指す物理学オタクが集まったオンラインフォーラムの発見と参加、実験器具を買うために協力してくれた薬剤師(例えばテキサス州では三角フラスコを買うのは許可制)、ギフテッドの子供集めて学年別カリキュラムではなく学力に見合った授業を展開するデイヴィッドソンアカデミー(ネバダ州)への入学、そこからネバダ大学リノ校の物理学教授陣との出会い、そういうラッキーな出会いがたくさんあって、優しい大人たちがテイラー少年を道を外さないよう指導していた。
テイラー少年は、理論物理学は嫌いで、実験(応用物理学)が好きだと言っている。
既に実用化が見込めそうなアイデアをいくつか披露している。
ガンの放射線治療に使う放射線源は、製造できる場所が限られており、また寿命も短いため、放射線源を作ったらすぐに飛行機で病院まで届けなければならないが、小型の核融合炉が完成すれば、病院で放射線源を作ることができるようになる。ほかにも空港の荷物検査のX線の代わりになるスキャナに関しても、本書に書かれている。
ノンフィクションとして間違いなく面白いのだが、ギフテッドの子供をどうやって教育すべきかという教育論にかなり多くのページが割かれていて、個人的にはそれが不満。
8点/10点満点
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