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2023/01/30

ケイシー・ミシェル/秋山勝訳「クレプトクラシー 資金洗浄の巨大な闇」感想。2022年12月23日読了。

 

千葉県の松戸の駅近ビルに「喜久屋書店」という本屋があり、ふらっと入ったら、めちゃくちゃ売り場の広い本屋だった。充実した本屋に入ると、本を探すのが楽しい。この時期、ニコラ・シャクソン「世界を貧困に導く ウォール街を超える悪魔」を読んでいたことから、関連した本を探していて見つけたのが本書。

 

読後の充足感として、ニコラ・シャクソン「世界を貧困に導く ウォール街を超える悪魔」より上だった。同じようなテーマなので、どちらを先に読んだかで印象は変わると思う。

 

本書のメイン登場人物は2人。
◆ウクライナのオリガルヒ(ソ連崩壊のどさくさに紛れて大儲けした成金)イーホル・コロモイスキーと、
◆赤道ギニアの独裁大統領テオドロ・オビアン・ンゲマ・ムバソゴの息子テオドリン(テオドリンは通称。テオドロ・ンゲマ・オビアン・マングリンク先は英語版)(BBCの参考記事)。

 

※ウクライナは、オリガルヒに政治を乗っ取られ、国中のありとあらゆる企業が寡占独占が当たり前(独禁法などないも同然)、賄賂が無ければ何も動かない国。ロシアのウクライナ侵攻後、ウクライナはEU加盟を直訴したが、EUは腐ったウクライナを知っているから「ウクライナ国内を何とかしてから出直してこい」というスタンス。ロシアに攻撃されて不憫な国だねえ、などと思ってはいけない。ウクライナを助ける意味ってあるのか?! というレベルで腐っている。そういう意味(ほっとけば自壊する)では、ロシアのプーチンは何で侵攻したのか私には分からん。廣瀬陽子センセや佐藤優氏やロシア通がこぞって読み間違ったのも理解できる。

 

※赤道ギニアは国である。旧ポルトガル領。アフリカ各国の独立機運に乗り独立。したのはいいけど何も産業が無い(カカオとコーヒーと林業)。建国時(1968年)の大統領マシアス・ンゲマが恐怖政治を敷き、反対するものは全員粛清。甥っ子のテオドロ・オビアン・ンゲマがクーデターを起こし(1979年)、マシアス・ンゲマ(叔父)を処刑。1979年以降、テオドロ・オビアン・ンゲマは43年間、赤道にギニアに君臨する独裁大統領。重要なのは、1990年代にギニア湾(赤道ギニアもその一部)で石油がザクザク見つかり、テオドロ・オビアン・ンゲマ一族は独裁大統領として、国庫の全てを自分と取り巻きのモノにした。国民には一円も使わん。

 

◆という2人を主軸に、奴らはどうやってマネーロンダリングしているのか、その一端を解き明かしたのが本書。

 

端的に言うと、ウクライナや赤道ギニアの国内にドルがあっても、いざというとき使えなければ意味がない。
なので、目に見える形でアメリカから実物を買う。

 

コロモイスキーはアメリカ・クリーブランド(オハイオ州)の寂れたビルをいくつも高額で買い、
テオドリンはマイケル・ジャクソンの遺品を買い漁った。

 

ウクライナや赤道ギニアでドルを持っていても、国際政治や国際金融が制裁を課せば、ドルそのものの移動が禁止されると同じなので、他国に持っていけなくなる(ただし自国では使える)。

 

しかし、アメリカ国内にあるビルを買ったり、マイケル・ジャクソンの遺品に変えたら、それらはいつでも売れる。

 

アメリカの不動産を売買するということに関しては、ドナルド・トランプ=トランプタワーがその一翼を担っていた。トランプは、誰にでもトランプタワー(の一室)を売っていた。

 

さらに、その手助けをしていたのはアメリカの弁護士税理士不動産業界だった。

 

という内容が超濃密に書かれています。

 

9点/10点満点

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