平山瑞穂「エンタメ小説家の失敗学」感想。2023年2月24日読了
いつも行く本屋で立ち読みして、出だしが面白かったので買った。
本書は面白かった。もしかしたら、著者の作品で一番売れる本になるのでは。
以下感想。
私はマンガが大好きで、マンガは編集者と作るもの、という理解はあった。
だが小説の世界でもそうなっていたとは驚いた。
本書に書かれているのは、エンタメ系小説の世界(その作家リストに熊谷達也(P38)が含まれているのは意外だったが)でも同様のことが起きており、小説執筆も編集者の意見がそれなりに重要であり、編集者の意見にある程度沿った内容で書かなければ出版してくれない。出版しても売れない状態が長引けば、執筆依頼すら来なくなる。売れない小説家平山瑞穂(本書の著者)には、もう出版社から小説執筆の依頼が来ない。
自由に書かせてくれた時もあれば、書籍編集者の指示に従った時代もあり、逆らった時代もある、結果としてほぼすべての小説が売れなかった著者。本書は、回想と反省と愚痴と若干の恨みで構成されている。
のだが、私的には面白く読め、痛快ですらあった。新潮社や角川はもう相手にしてくれないんだ、だったら(本書の版元)光文社で暴れてやる。
著者はもう商業小説家としての道を諦めたのかもしれない。じゃなければ、ここまであけすけな本は書けない。と思う。という意味で本書は、暴露本と同等レベルで面白かった。
ただ、まあ、私が著者の小説を読むことは無いかな(本書では、著者の自著を何冊も紹介しているが、どれもこれも「読みたい」と思わせる内容ではなかった)。
※どうでもいいが、マンガの世界でも「今、売れているジャンル」を模倣した作品をよく見た。今なら「転生したらスライムだった件」の亜種が山もりもりに出てくる。いわゆる異世界ものだ。あの亜種を書いている人たちは、3年後生きているのかね?(「葬送のフリーレン」は亜種じゃない方向性で成功した例だと思う)
8点/10点満点
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