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2023/05/29

篠田英朗「戦争の地政学」感想。2023年4月22日読了

 

◆Amazonより引用
そもそも「地政学」とは何か?
地理的条件は世界をどう動かしてきたのか?
「そもそも」「なぜ」から根本的に問いなおし、激動世界のしくみを深く読み解く「地政学入門」の決定版!

 

現代人の必須教養「地政学」の二つの世界観を理解することで、17世紀ヨーロッパの国際情勢から第二次大戦前後の日本、冷戦、ロシア・ウクライナ戦争まで、約500年間に起きた戦争の「構造を視る力」をゼロから身につける!

 

「一般に地政学と呼ばれているものには、二つの全く異なる伝統がある。『英米系地政学』と『大陸系地政学』と呼ばれている伝統だ。両者の相違は、一般には、二つの学派の違いのようなものだと説明される。しかし、両者は、地政学の中の学派的な相違というよりも、実はもっと大きな根源的な世界観の対立を示すものだ。しかもそれは政策面の違いにも行きつく。たとえば海を重視する英米系地政学は、分散的に存在する独立主体のネットワーク型の結びつきを重視する戦略に行きつく。陸を重視する大陸系地政学は、圏域思想をその特徴とし、影響が及ぶ範囲の確保と拡張にこだわる」――「はじめに」より

 

◆引用終わり

 

地政学には大きく二つの考え方がある。
・英米系地政学⇒マッキンダー⇒二元論⇒世界はハートランドとシーパワー、周辺のリムランド
・大陸系地政学(ドイツ)⇒ハウスホーファー⇒多元論⇒圏域

 

昨今、日本では地政学に関する本が多数あふれているが、この両者の考え方が精確に分けられていない、かつ英米系のランドパワー・シーパワーによる記述が多い。

 

本書は、同じ出来事(今回のテーマは戦争)を英米系と大陸系の両視点から解説することを試みたものである。

 

が、私の基礎知識および理解力が足りず。

 

評価不能(私の知識が乏しい)/10点満点

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北澤豊雄「花嫁とゲバラを探して」感想。2023年4月4日読了

 

サブタイトルは「南米婚活紀行」

 

スペイン語ペラペラな著者が、若きチェ・ゲバラが7カ月の南米旅行したときの本と映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」の足跡を辿りながら、南米で一番人気のマッチングアプリ「ティンダー(有料)」を使って各地で女性(花嫁候補)と出会う旅行記である。

 

チェ・ゲバラはキューバ革命の英雄だが、生まれはアルゼンチン。

 

ルートはアルゼンチン、チリ、ペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ。4カ月で回ったらしい。(チェ・ゲバラらは7カ月かけてバイクで回った)

 

著者は観光地巡りをするのではなく、町に着いたらひたすらマッチング。

 

旅行記とマッチングアプリの成果記録、その比率が半々くらいで、どうにもこうにも中途半端。
旅行記として読むならとても薄い。
マッチングアプリの成果記録として読むならそこそこ面白いが、彩図社のアンダーグラウンド本(例:バンコク 裏の歩き方)と比べると貧弱。

 

うーん、なぜこのような中途半端な本になってしまったのか。

 

5点/10点満点

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安田峰俊「北関東「移民」アンダーグラウンド」感想。2023年3月30日読了

 

本書のサブタイトルは「ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪」
安田氏は相変わらず文章がうまく、一気に読んでしまった。

 

何らかの事件を起こしたベトナム人不法(とは限らない)滞在者へのアポなし突撃取材記。著者の行動力は相変わらずすごい。
在日ベトナム人の多くは技能実習生として日本に来た。最初の仕事の契約期間(3年)が満了した後、特定活動の在留資格というのを得ると、合法的に日本に居られる。
合法滞在者であれ不法滞在者であれ、日本で犯罪を犯すベトナム人は、日本の法律や地域のルールを知らないまま滞在している場合が多い。

 

そこで著者は新聞報道などをもとに、犯罪を犯したベトナム人にアポなし突撃取材を敢行する。
無免許ひき逃げ死亡事故を起こした女。
豚窃盗集団。および桃窃盗集団
ベトナム人同士の殺人犯。
違法エステ(買春)で働く女。

 

見えてきたのは、一昔前、不法滞在中国人が問題を起こしていたポジションに、今はベトナム人がいる。

 

著者曰く、ベトナムは経済発展しているので、15年後には日本に来るベトナム人は減少する。
代わりに来るのはインドネシアやカンボジア、ミャンマー、ネパール人で、日本の人口が減り続ける以上、発展途上国からの外国人流入は止まらない。

 

8点/10点満点

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パラグ・カンナ/尼丁千津子訳「移動力と接続性(下)」感想。2023年3月22日読了

 

本書のサブタイトルは「文明3.0の地政学」
原著のタイトルは「MOVE」

 

パラグ・カンナの本は3タイトル目(5冊目)。

 

人間の歴史は、常に移動が伴っていた。
古くは200万年前、アフリカから猿人がユーラシア大陸へ移動し、30万年ほど前に「ホモ・サピエンス」へ進化を遂げ、モンゴル帝国は世界中をまたにかけ、ジャガイモ飢饉でアイルランドからアメリカへの大量移住が発生した。

 

世界中の多くの人たち(著者推定では40億人。多くがアフリカやアジアの貧国に住む人々)が、自国を離れ移住したいと考えている。携帯電話とインターネットがあれば、移住は昔ほど困難なことではない。ただし、受け入れてくれる先進国は少ない。

 

本書は、人々がより良い暮らしを求めて移住(移動)する流れは止まらないし、止められない。そして、その移動力こそ、2050年の未来を形作る源である。移住先は先進国の都市とは限らない。気温上昇で、グリーンランドやシベリアの永久凍土地帯が快適な移住先になるかもしれない。
的なことを、詳細なデータをもとに書かれた本である。

 

アメリカはメキシコ経由でやってくる中南米の移民を追放している。
スペインやイタリアはアフリカからの不法移民を追放している。
シンガポールは移民によるスラム化を防ぐため、多民族共生を選んだ。
チェコやポーランドは優秀な移民(戦争前のウクライナ人が多い)を積極的に受け入れる政策を進めた。
ドイツは移民(シリアなどの中東難民が多い)を受け入れすぎた。
フランスは移民(旧植民地のアルジェリア系など)とフランス系の間で分断してしまった。
カナダは移民大歓迎。
(この辺りまでが上巻)

 

カザフスタンは豪州とほぼ同じ面積で、人口は2000万人に満たない。国庫は石油ガスで潤っている。カザフ政府が本気になれば人は来る。
インド人はウズベキスタンにビザなしで入国できる。それもあってインド系の承認が多くいる。
日本は優秀な人が出ていく国である。上級学位(修士号や博士号)を取ったのに仕事がなく、8,000人もの人が中国で研究活動をしている。

 

下巻p188
「より大きな国が一定の居住権や生活水準を保障せずにさらに多くの移住者を呼び込んだ場合、自国民と外国人、技能を要している人といない人、富裕層と貧困層という階層化が定着するのは避けられないだろう」

 

本書には結論めいたことは書かれていない。「こうなるだろう」という示唆にとどまっている。

 

移住を考える人々は減らないし、移住の意欲も止まらない。
移住を受け入れる国は今のうちに受け入れ態勢を整えていかなければならない。
先進国はほぼすべての国で人口減少に直面している(もっともましなフランスでも出生率は2.0⇒人口維持には2.1必要。日本は1.4、スペイン1.3、イタリアとシンガポールは1.2、韓国は1.0)。

 

先進国は、いつまで先進国でいられるのか。

 

7点/10点満点

 

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