船戸与一「河畔に標なく」感想。
冒険小説。2006年03月31日読了。

集英社 2006/03出版 493p 20cm ISBN:4087748049 ¥1,995(税込)
早大探検部出身の船戸与一は新作の舞台をミャンマーにすると決め、取材旅行の同行者に、ミャンマーの少数民族が大好きな早大探検部後輩の辺境ライター高野秀行を連れて行った。高野秀行はその顛末をまとめ「ミャンマーの柳生一族」をつい最近上梓した。高野秀行は「ミャンマーの柳生一族」で船戸与一のことを「フセインのような面構えのふんぞり返った男」と表現している。先輩かつ、(最早文壇功労賞と化してしまったが)直木賞受賞作家である船戸与一を、フセインのようなおっさん呼ばわりするあたり、さすが早大探検部出身の文筆家である。まあそれはそれとして「ミャンマーの柳生一族」でこういう会話が記されていた(一部抄訳)。
船戸「小説の題名を思いついた」
高野「どういうのですか?」
船戸「カハーニーシルベナーク」
高野「東欧系のタイトルとは船戸さんには珍しい、というかミャンマーには全然合ってない」
船戸「バカ、河畔に標なく、だよ」
これで私は船戸の新作が出ることを知ったのだった。
さて本書。良くも悪くも、ミャンマーを舞台にしたいつもの船戸である。
金にあさましい自己中心的で下卑た連中がてんこ盛りで出てくる。
そしていつもの殺し合い。
そしていつもの救いようのないラスト。
まさしく船戸節絶好調なのである。
しかしね。
前作「蝶舞う館」と同じで、主人公がはっきりしない小説なんだよね。それがまあなんというか、興を削いでいるのだ。私は船戸信者だからいつもの船戸節を堪能したわけだが、信者じゃない人には、ただひたすらに下卑た男ばかりが出てくるくらい小説で、面白いとは思わないのではないかなあ。
って、船戸作品は、肌に合わない人が読んだらどれもこれも全作品がくそみそうんこな話にしか感じないみたいで、村上春樹が好きという普通の女性に船戸を勧めた場合、下手したらなあんた最低とか言われてしまいかねないのだけれども(私だけか?)。
5点/10点満点
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