真保裕一「栄光なき凱旋・下」感想。
純文学。2006年06月14日読了。

真保裕一 /小学館 2006/05出版 651p 20cm ISBN:4093797277 ¥1,995(税込)
粗筋(紀伊国屋を改):第二次世界大戦時、アメリカに住む3人の日系二世が、日本軍のパールハーバー奇襲以降、日系人という偏見と闘いながら自らの運命を切り開くために、アメリカ軍へ志願する。親から半分見捨てられ、一人で生きているジロー。頭でっかちな優等生で鼻持ちならない態度をとるのに、自分でそれに気付いていないヘンリー。やや成功した両親と平和に暮らしていた好青年マット。
終戦の時は近づいていた。アメリカ軍は日本軍を罠にかける秘密の作戦を立案する。その命令を受けたマット・フジワラは太平洋の小島でジロー・モリタと出会い、彼の過去の秘密を知る。収容所から日系部隊へ進んだヘンリー・カワバタは、仲間とともにイタリア戦線へ投入され、過酷な戦場に身をさらしていく。やがて彼らが再会する時、運命は三人に残酷なまでの試練を与える。
ほぼ同世代、20代前半のジロー、ヘンリー、マット、3人の話が時間軸に沿って交互に語られる。パールハーバー以前の生活、以後の生活、日系人強制収容所での暮らし、軍に志願するまで、軍での生活、訓練、過酷な作戦、激しい最前線。
上下巻合わせて1200ページを超える分厚い物語は、誰が特別の主人公ということなく、3人同じような分量で書かれており、しかし、だからといって散漫な印象はなく、人種差別や偏見に理不尽さを感じながらも生きていかなければならない日系人社会を見事に書ききっている。主役3人の個性はまったくのバラバラでありながら、軍での生活を経て、戦場での経験を経て、個性はより強い形に変えていく。そういう人物描写も最後までうまく書き分けられている。
欠点は色々あるけど、最近の真保裕一にしては出色の完成度。
でも直木賞狙うにはちょっと話が長すぎる気がする。
8点/10点満点
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