マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」感想。
製薬業界告発ドキュメンタリー。2006年09月04日読了。

マーシャ・エンジェル/栗原千絵子 /篠原出版新社 2005/11出版 335p 22cm ISBN:4884122623 ¥2,415(税込)
アメリカの製薬業界と、製薬業界にぶら下がっているロビイストと政治家は腐りきっている。
その驚くべき実態が書かれた衝撃のノンフィクションである。
著者は2000年までニューイングランド医学雑誌の編集長を務めていた医師で、医療に関する歯に衣着せぬ批評(批判)は、高い評価を受けている。
本書に書かれている内容をかいつまんで説明すると、
・アメリカでは、処方箋薬の一般大衆向け広告が許されている。(日本を含む先進諸国ではほとんど認められていない)
・アメリカでは、薬価は製薬会社が自由に設定して構わない。(日本を含む先進諸国の多くでは薬価は国や保険機関が設定する)
それらを応用して、
・アメリカの製薬会社は、研究開発費より多額の広告宣伝およびマーケティング費を使っているが、研究開発費が不足しているという理由で薬の値段を上げる。
・アメリカの医師は、年間100単位ほどの研修受講を義務づけられているが、受講プログラムを作成している団体のスポンサーは製薬会社であり、講義の内容は●●社の▼▼という薬は良く効くので使いましょう、という内容であり、更に講義に出席した医師には交通費やおみやげが●●社から支払われる。▼▼という薬はもちろん値段が高く利益率の良い薬である。
・フォーブスに発表されている企業トップ500、そこに製薬会社が10社ランクインしているが、この10社の経常利益の合計額は、残り490社の合計金額より多い。つまり、製薬会社は凄まじいほどボロ儲けしているのだ。
・しかしながら。2000年から2003年までの4年間でアメリカで承認された新薬は314品目あるが、画期的新薬といわれるのはわずか32個しかなく、そのうち上記大手10社が開発したのはたったの7個しかない。それなのに大手10社は研究開発費が不足して新薬が開発できないなどとのたまっている。(画期的新薬を開発するのは、大学の研究機関だったり小さな製薬会社だったりする。大手10社は、その使用権を買うのだ)
・ではどのようにして大手10社は儲けているのか。実は簡単な話で、Aという売れている薬があり、その特許がまもなく切れようとしているとする。製薬会社はAの成分をほんの少しだけ組成変更したAAという薬を開発し新たに特許を取り、得意の広告宣伝マーケティングでAは古い薬だからAAを使いましょう、と宣伝する。Aは特許が切れた途端にジェネリック薬が売り出されてしまい製薬会社の儲けが少なくなるが、AAは特許で守られているので好きなように値段を設定できるのだ。
・更に、上記で書いたAAという薬だが、Aより良く効く薬であるとは限らない。アメリカの薬の承認機関FDAは、AAが薬としての基準を満たしているかを判断する機関であり、以前より良く効く薬であるかどうかは判断基準ではない。
他にも製薬会社の腐敗した行動が、これでもかと出てくる。
実例をひとつ。(適切でない用語があるやもしれず、容認されたし)
・私は8年前から富山化学工業という日本の製薬会社の株を持っている。
・富山化学は画期的な抗菌剤を開発した。
・富山化学はその抗菌剤をアメリカのシェリング・ブラウ社に売った(確か最初に250億円+FDA認可で200億円+別途販売ロイヤリティ)。
・シェリング・ブラウ社はその抗菌剤の承認申請をFDAに出した。
・バイエル社がアメリカ撤退することになり、バイエル社の薬のアメリカ販売権をシェリング・ブラウ社が買った。
・バイエル社の薬の中に、富山化学の抗菌剤と競合する薬があり、競合薬の特許は2011年まであった。但し、富山化学の抗菌剤の方が明らかに効き目がよいと言われている。
・シェリング・ブラウ社は、競合薬の特許が切れる前に富山の抗菌剤を売るのは勿体ないと考え、FDAへの承認申請を取り下げた。
・シェリング・ブラウ社は、2008~9年に、再び富山の抗菌剤の承認申請を行うだろう。
・FDA認可で入手するはずだった200億円の売上げが先延ばしにされた富山化学の株価は、約1300円から700円台まで急落した。本日は600円台である。私は300円台の時に買っているから痛くも痒くもないが、ヤケドをした投資家は大勢いると思う。
興味のない人にはつまらない本だと思うが、少しでも興味のある人は読んで損のない本だ。少なくとも、医学関係者は是非読んで欲しい。
8点/10点満点
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