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2006/12/13

吉野次郎「テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか」感想。
駄作。2006年12月12日読了。

テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか
吉野次郎 /日経BP社(日経BP出版センター) 2006/12出版 207p 19cm ISBN:4822245543 ¥1,575(税込)

※私の誤読があったので、12月13日夕方にちょっと直し入れました。


私はテレビ番組制作会社でプロダクションマネージャーをやっている。

映像コンテンツを創るためのコンテンツ投資ファンドを運営したり、自社で作ったテレビドラマを番組販売したり、著作権交渉を行ったり、宣伝プロモーションを行ったりと、会社が大きくないので何でもやる便利屋的な職種だ。

大きい会社ではないが、番組制作部門の売上が年15億円くらいの会社である。
その他の事業全部ひっくるめると年60億円くらいの売上がある。


本書を本屋で見つけたとき、日経BP社が出しているんだから何か目新しいネタが書かれているんだろう、と勝手に思いこみ、ろくに立ち読みもせずに(会社経費で)買った。


さて感想。


新聞雑誌記事をかき集めただけの内容。

独自の視点なし。

分析や掘り下げもなし。

取材が薄っぺらい。

結論ありきで書かれている駄作。

ということである。


理由は、

●著者は著作権に関して十分な知識を持っていない可能性がある。テレビ局が製作費を全額負担する場合、テレビ局が著作権を持つのは自然な話である。

●テレビ番組の共同著作権についての取材が底浅いため、一部のバカな制作会社の例しか取り上げられていない。当社が作ったドラマの場合、テレビ局が製作費を全額負担しているにもかかわらず、放送後、当社に著作権が移るような契約になっている。

●テレビ局とインターネット業界に関して焦点を絞っている書き方だが、テレビ業界について語るのに、電通を筆頭とした広告代理店の話を抜きにしてしまったら何の意味もない。

●テレビ局が、電波という既得権益を守るためにインターネットにコンテンツ供給しないという主張だが、我々番組制作会社もインターネット配信に全面的に賛成というわけではない。その理由は違法コピーである。本書ではインターネットで映像コンテンツを配信する際の、デジタル媒体の危険性を全く考慮していない。違法コピーを防ぐ技術がまだ確立されていない現段階でインターネット配信を行うと、せっかく作った番組が丸ごとコピーされてしまう危険性もはらんでいる。

●著者は、テレビ番組をインターネット配信するために必要な著作権処理が、どれだけ手間暇かかるものなのか全く判っていない。インターネットが普及する前に作られた番組の場合、スタッフとの製作契約、役者との出演契約にはインターネットに関する条項が一切入っていない。ドラマの場合、極論を言えばエキストラに至るまでのすべての出演者からインターネット配信の承諾を取らねばならないが、行方の知れない端役の役者など山ほどいる。(ここからちょっと追加) 役者から許可取れないままインターネット配信して、あとになって役者から文句言われたとき、悪いのは全面的に我々(配信を許諾した者)になってしまうのだ。

●ハリウッドで作られるテレビ番組の予算は日本の数倍で、それが実現できるのはアメリカのコンテンツ投資ファンドが機能しているから、というような記述もあるが、アメリカでコンテンツ投資ファンドが機能する背景に、制作会社が金を持ち逃げもしくは過分な利益を得ないように監視する保険機構があるからなのだが、それについては一切語られていない。

●(ここちょっと直し入れた) 179ページには、世界のコンテンツ産業の市場規模は1兆2000億ドルだと書かれている。そのうち米国のコンテンツ産業は5000億ドル(アメリカのGDPの4%)、対して日本のコンテンツ産業は1000億ドル(日本のGDPの2%)で、GDP比でもアメリカの半分しかなく、これはテレビ局が番組をインターネットなどに配信せずに塩漬けにしていることが原因である、と言うようなことも書かれているが(総務省見解の引用)、それはあまりにも偏ったバカな見解ではないか。こういうところ、少しは著者自身の意見を入れろよ、全く掘り下げが浅いんだから。

●(ここ追加) 日本に於いてテレビという媒体が魅力的なのは、全国津々浦々ほぼ同じ時間に同じ番組が放送され、大勢の視聴者が同じ時間に同じ番組を見ること、にある。全国の平均視聴率が20%とすると、おおよそ2400万人の日本人が同時に同じ番組を見ていることになる。著者にこの意味が判るだろうか。

●(ここも追加) インターネットは国境がない。と言うことは、日本からインターネットで番組配信を行うと、それは世界中で見ることができてしまう(プロテクトすることもできるが)。世界各国の著作権法は、各国毎に異なっている。
万国著作権条約(名称不正確かも)に加盟している国であれば共通の著作権法じゃないの? と世間一般では思われているかも知れないが、実はそうでもなくて日本とアメリカですら著作権は異なっている(著作者人格権などが顕著に異なる)。法律が整っていない国で自分たちが作った映像コンテンツを見られるようになってしまう、それは作り手としてはかなり恐ろしい事態だ。


他にもまだまだ沢山、山ほど言いたいことがあるが、


結論


こんな本は買う必要なし。

読む必要もなし。

どうしても読みたきゃ図書館で十分


本書の金銭的価値:35円

1点/10点満点

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