菅原出「外注される戦争」感想。
ノンフィクション。2007年05月24日読了。

菅原出 /草思社 2007/03出版 261p 20cm ISBN:9784794215765 ¥1,680(税込)
概要(紀伊国屋BookWebより)
「民間委託」の流れはいまや軍事の分野にも及んでいる。
その主役が「民間軍事会社」と呼ばれる企業群だ。
戦闘地域での物流サービスから捕虜の尋問、メディア対策、はては実際の戦闘行為にいたるまで、そうした会社が提供するサービスは多岐にわたる。
イラクでは、なんと一国の軍隊と同規模の人員を民間軍事会社一社で派遣している例まであるのだ。
本書は、イラク戦争以降にわかに注目されている新ビジネスの実態を、企業側および最大の顧客である米軍関係者への取材をもとに描いた刺激的なノンフィクションである。
9.11以降、アメリカは先制攻撃を行う国になった。そしてアメリカ軍が派遣される国は大幅に広がっていった。戦場が拡大しているにもかかわらず、アメリカ軍の人手不足は深刻である。9.11以降、危険なミッションへの参加が増えているのに、賃金が高くないから、辞める兵士が続出しているのである。同じ意味で、新兵の集まりも悪い。このあたりは日本の自衛隊と同じ。米軍新兵の採用基準は従来より大幅に引き下げられ、英語を母語としない米国人(不法滞在者の子供のこと)も構わず採用、その数は急増しているとか。
優秀な兵士、中でも陸軍のグリーンベレーや海軍のSEALsなどで働く兵士たちも、賃金の面では不満を抱いている。問題を起こさず兵卒を勤め上げると、一生涯潤沢な年金を貰えるが、今貰える給料については不満であるらしい。
今アメリカ軍では、優秀な兵士が軍を辞め、続々と起業している。
業種はプライベート・ミリタリー・カンパニー、民間軍事会社だ。
民間軍事会社が手掛けるビジネスは様々で、
・危険地帯に赴く政府要人の警備。
・危険地帯で生活し働いている国連職員やNGO関係者の警備、建物の警備。
・危険地帯といっても全土が危険なわけではないので、特にどこが危険かを軍や現地警察から情報を得て、民間軍事化医者同士連絡しあう連絡網の設置。
・危険地帯に設置される軍の宿舎の設営、および配食サービス。
・危険地域に設置されている軍の基地に、食糧や郵送物を運ぶトラック野郎。
・危険地帯に赴く軍関係者の訓練。
・危険地帯に行かなければならないNGO職員やジャーナリストなどに対する、テロや誘拐から身を守る訓練。
などなど。本書には民間軍事会社の実態(の一部だろうが)が、事例を元にたくさん紹介されている。
アフガニスタン戦争や、イラク戦争初期では、潤沢な資金がアメリカ政府からばらまかれ、民間軍事会社は雨後の筍の如く設立された。中には当然質の悪い会社もあり、下請に丸投げなど当たり前のように起こっている。さらに、人件費削減のためフィリピン人、ネパール人、フィジー人、コロンビア人と、民間軍事会社の採用基準は、どんどん多国籍化していく。
もうこうなってくると、誰が何のための彼の地で誰と闘っているのか判らなくなってくる。
私がうだうだ感想書くよりも、この手の本に興味のある方は、ぜひこの本を読まれることをお薦めする。
7点/10点満点
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