小松秀樹「医療崩壊」感想。
医療ドキュメント。2007年06月22日読了。

小松秀樹 /朝日新聞社 2006/05出版 280, 20cm ISBN:9784022501837 ¥1,680(税込)
自宅の近所にある厚生総合病院では、日曜も内科診療を行うなど、地域に根ざした病院を目指していた。特別な診療科目を除き、たいてい土曜日でも受診できた。とある土曜日、ぎっくり腰を診てもらうために久々に厚生病院に行ったら、「整形外科は平日診療のみに変わりました」と言われた。
最近のニュースで、全国的な小児科医不足、産科医不足ということを報道している。
独身オヤジの私には産科も小児科も関係ないので、医師不足ということが実感として感じていなかったが、20年間続いていた厚生病院の土曜日の整形外科診療が無くなった、ということは無関係ではあるまい。
で、2年近く前に買った本書「医療崩壊」を読んでみることにした。
この本に書かれていることは、想像以上の医療崩壊の実態だった。
著者が言う医療崩壊とは、一言でいうと「医療関係者がやる気をなくしている」であり、その原因は「医療に対する過度の期待と、その裏返しとしてのクレーム多発」である。
医療ミスをしたわけでもなく、たまたま手術の直後に運悪く合併症が発生し患者が死んでしまったケースで、患者の遺族が執拗にクレームを付け、裁判に持ち込まれ、場合によっては刑事告訴に発展し、医師や看護師が実刑を食らってしまう。
別の医師が手術をしても患者が死んでしまうケースもある。誰が看護しても防ぎようのない場合(患者の無意識の寝返りで人工呼吸器が外れるなど)もある。しかし裁判では、裁判官がマスメディアを気にするあまり、患者(=弱者)救済の方向に判決が下されている。結果として患者を死に至らしめたことは反省するが、実刑判決はやり過ぎではないか?と著者は問いかける。
その過大なまでに患者を救済するシステムは、何も悪いことをしていないのに実刑を食らってしまう。そのことにやる気を無くした医師が病院を辞め、残された医師に更なる過酷な労働を託し、残された医師も疲弊し辞めていく。それが医療崩壊の原因ではないだろうか。
特にクレームの多い産科と小児科を診療する医師の不足となって現れて生きているのではないか。
著者が言いたいのは医師の責任逃れの言い訳ではなく、ミスした医師を刑事裁判にかけて有罪判決を出していたら、医師のなり手がいなくなる、ということを言いたいのだ。
また、著者は本書でマスコミの有害性についてかなりのページを割いている。
マスコミは弱者救済を至上命題にして、世間の人々はマスコミに踊らされマスコミの論理を鵜呑みにし、政治家はマスコミに踊らされている世間の歓心を引くために弱者救済に政治家生命をかける。
この構造は民主主義といえるのかね。
日本の頂点はマスコミだと言うことにならんのかね。
ということまで考えさせられる。
8点/10点満点
※6/27、大幅修正しました
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