高野秀行「神に頼って走れ!」感想。
国内自転車旅行記。2008年03月26日読了。

高野秀行 /集英社 2008/03出版 242p 15cm ISBN:9784087462784 \499(税込)
高野秀行の名著のひとつに「西南シルクロードは密林に消える」という本がある。ユーラシア大陸を横断するシルクロードにはいくつかのルートがあり、タイトルとなっている西南シルクロードとは中国・成都からビルマ北部を通り、インドのコルカタ(カルカッタ)まで抜けるルートである。と著者高野秀行が書いているのでそうなのだろう。で、高野秀行は、そのルートを陸路で踏破した。「西南シルクロードは密林に消える」はその経緯を綴ったルポである。
2002年の2月末、高野秀行は成都から、昆明、大理と進み、中国とビルマの国境近くの街・瑞麗に行き、瑞麗で全ての旅費約70万円を盗まれ、家族に頼んで送金してもらい、ビルマ・カチン軍の手引きにより国境検問も通らずにあっさりとビルマのカチン州に密入国→ビルマの紛争地帯をゲリラ軍に引き連れられ歩く→ジャングルでマラリアに罹る→インドのナガランド州に密入国→カルカッタに行き日本に戻るためやむなくインド警察に自主。インド警察からは懲役5年を覚悟しろ、と言われた。
しかし、高野秀行は収監されることなく、日本への強制送還だけで済んだ。
出発してから帰国するまで約4ヶ月の旅だった、とエピローグに書かれている。
その後、辺境と怪獣を愛してやまない高野秀行は、ウモッカという怪魚を探しに行くため、インドへの入国を試みるのであった。その面白い顛末は「怪魚ウモッカ格闘記」に詳しく書かれている。
結果として未だにインドへ入国することはできないのだが、ウモッカを探すためにどうしてもインドに行きたい高野秀行は、日本の神さまに頼ることにした。
東京から沖縄の波照間島まで自転車で走り抜け、道中に祀ってある道祖神に「インドに行かせてくれ」と片っ端から頼む旅、なのだ。
本書は集英社のホームページに毎週連載されていたコラムをまとめた本。最初はコラムをまめに読んでいたけど、一冊の本にまとめることが決まったとアナウンスされた後は、楽しみを取っておくためにWebコラムを読まずに待っていましたのです。ようやく出版された本書、高野ファンならじゅうぶん堪能できるでしょう。今回の旅は国内旅行なので、高野秀行がいつも好んで行っているような海外の超辺境に比べそれほど突拍子もない出来事が起こるわけもなく、でも高野ファンとしては突拍子もないとんでもない出来事が起こって欲しいわけで、そういう意味ではちょっとあっさりした内容かも。
でもね、やっぱりこの本を読む前に「西南シルクロードは密林に消える」と「怪魚ウモッカ格闘記」を読んでいるのといないのとじゃあ、本書の楽しみ方が全然違うと思うのですよ。そう考えると、本書は高野秀行上級本と位置づけるべきであって、書店で平積みすべき本ではないと思うのですね。
春風亭昇太が推薦文で「高野くん。常識って言葉、知ってるか?」と書いているのだけど、この本で高野秀行がやっていることは常識の範囲内だなあ。密入国とかアヘン栽培(「ビルマ・アヘン王国潜入記」参照)に比べたら。
7点/10点満点
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