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内澤旬子「世界屠畜紀行」感想。
ルポ。2008年12月03日読了。

世界屠畜紀行
内澤旬子 / 解放出版社 2007/02 ¥2,310 (税込)

◆買ってから1年以上積ん読だったけど、ようやく読みました。知ってる人は知っている名著です。

◆タイトルにあるとおり、著者内澤旬子氏が、世界中で行われている「肉を食うために動物を殺すこと」について取材した本。取材先は本当に多岐にわたり、韓国、バリ島、エジプト、イスラム犠牲祭、チェコ、モンゴル、韓国の犬喰い、東京芝浦の豚解体、沖縄、芝浦で解体された豚の頭と内臓の行方、墨田で行われている皮鞣し、芝浦の牛解体、その牛の頭と内臓の行方、インド、アメリカ、その後である。

◆私は北海道の田舎生まれで、父方の祖父は酪農家(乳牛)で今も従兄弟がその農家を継いでいるが、今まで見たことがあるのは鳥を絞めたことが一回だけ。そのとき取れた内蔵の黄色い玉(たぶんキンカンだと思う)が異様に気持ち悪く、水玉模様すら受け付けなくなってしまった。未だに水玉は苦手である。

◆私の生まれた町では、同級生に普通にアイヌがいた。私の親の世代(70歳以上)だと、アイヌに対する差別があったのかも知れないけど、アイヌがアイヌであるだけで差別されることは私の世代(私は現在42歳)では既に無く、また朝鮮人差別もなかった。これは差別がなかったというより朝鮮人と呼ばれる人たちがまわりに住んでいなかっただけだが。鈍くさい奴や、理由無く嫌われる奴ってのはいたけど、そういう嫌われ方というのはイジメであり、イジメはこれまでも、これからもたぶん無くならないだろう。

◆さて、私は知識として、屠畜を生業にする人たちは差別されていることを知っている。しかし私は、私の生まれた町でそういう差別がほとんど無かった(気づかなかっただけかも知れないが)ので、屠畜が差別される、忌み嫌われる職業だという実感がない。それどころか私は、士農工商を現代的に言うなら、農家・畜産漁業・屠畜・鉱工業・商人の順番ではないかと思っているくらいだ。ただ人生42年生きていると、私のような考え方が周囲と異なりやや特殊ということもわかってきている。

◆そこで本書だ。肉を食う以上、屠畜をする人々は人々が忌み嫌う仕事をしてくれていて、差別なんて以ての外、尊敬すべき人じゃないのか、というような視点で屠畜の人たちを捉えているのが本書(注:ちょっと違うかも)。

◆肉を作る人たち=動物を殺すことを仕事にしている人たちがいないと、肉を食うことはできない。そんな簡単なことすら考えないでも肉が食える現代。何だか間違っているよなあ、と私は思うのである。まあこれが食育ってことなんだろうけど。

◆本書は著者が自ら見て体験した屠畜作業を、著者自らがイラスト化している。どこの国でも、写真に撮られることは嫌われるようだ。本書を読んで屠畜業は、どちらかといえば世界的に忌み嫌われる職業のようだということもわかってきた。それでいいのかなあ、と私は思う。


9点/10点満点

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