小島剛一「トルコのもう一つの顔」感想。
トルコ圧政の実体験。2009年03月31日読了。

小島剛一 / 中央公論新社 1991/02 ¥777 (税込)
◆内容(紀伊国屋Bookwebより)
言語学者である著者はトルコ共和国を1970年に訪れて以来、その地の人々と諸言語の魅力にとりつかれ、十数年にわたり一年の半分をトルコでの野外調査に費す日日が続いた。
調査中に見舞われた災難に、進んで救いの手をさしのべ、言葉や歌を教えてくれた村人たち。
辺境にあって歳月を越えてひそやかに生き続ける「言葉」とその守り手への愛をこめて綴る、とかく情報不足になりがちなトルコという国での得がたい体験の記録である。
1 トルコ人ほど親切な人たちも珍しい
2 トルコのもう一つの顔
3 言語と民族の「るつぼ」
5 デルスィム地方
5 Y氏との旅
6 「トルコに移住しませんか」
7 トルコ政府の「許可」を得て
◆本書は、辺境ライター高野秀行のブログ「ムベンベ」で、高野秀行が褒めていたので読んでみることにした。
◆1970年代、トルコはトルコ語以外、自国に他言語があることを認めず、トルコ人優遇の強硬な政治姿勢を採っていた(今もなのだろうか?)。フランスに留学し民俗学で修士号を取っている著者は、博士号をトルコ語学にしようと決め、トルコにバックパック旅行をした。本書はその旅行記でもあるが、クルド人に対し圧政を敷くトルコの現実を分析した政治学的な本でもあり、トルコ語だけでならず、クルド語やらザザ語やらクルマンチュ語やら、トルコ国内で実際に使われている、トルコ語以外の言葉の話が無数に出てくる言語学の本とも言える。
◆クルド語とザザ語は起源が異なるまったく違う言語であるのに、トルコ政府は同じクルド語とひとまとめに扱い、
クルド語で喋っていると反政府クルド人ゲリラにされてしまう。しかし、クルド語とザザ語はお互いが通じない言語なので、クルド語の人とザザ語の人の共通言語はトルコ語である。というような話は、バックパッカーならではの身軽な旅のついでに、トルコ政府が立ち入りを許可していない地域にまで行って調べた結果わかったことである。
◆軽妙なバックパッカーの話と、強硬なトルコ政府の話と、世にもマイナーな言語学の話がうまくミックスされていて、とてもためになる本である。
◆本書の著者小島剛一氏はこの本しか上梓していない。この著者の著作をもっと読んでみたいのだが、出版されていないのはとても残念だ。
9点/10点満点
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