山崎朋子「サンダカン八番娼館 (新装版)」感想。
からゆきさんルポ。2009年05月01日読了。
◆幕末から明治を経て第一次世界大戦が終了する大正中期までのあいだ、北はシベリア、南は東南アジア、インド、アフリカにまで出かけていって、外国人相手に売春をしていた<からゆきさん>という海外売春婦が大勢いた。彼女たちは自ら好きこのんで売春をしたわけではなく、多くは女衒に「もっと稼げる場所に連れて行ってあげるよ」と騙され、付いていったら船倉に押し込められ、海外に連れて行かれ知らぬ間に借金まみれになっていて売春をする羽目になったという。もちろん、自分の意志で<からゆきさん>になった人もいるのだろうが。
◆著者は、今でいうストーカーに顔を切りつけられ、新劇女優になることを諦めざる得なくなったと書かれている。その後選んだ道が、底辺女性史の研究であった。本書は、その研究テーマに基づき、<からゆきさん>を多数輩出している天草地方に取材に行くところから始まる。
◆天草で偶然出会ったサキさんというおばあさん。話をするうち、サキさんが<からゆきさん>だった可能性が高い。偶然の出会いを元に、百足が住み着くほど腐った畳を取り替えることができない極貧生活をするサキさんの家に泊まりこみ、サキさんとの会話から<からゆきさん>の一端をひもといていく。
◆本書が「サンダカン」となっているのは、サキさんが働いていた地が、マレーシア、ボルネオ島のサンダカンだったからだ。
◆本書は出版年次が昨年であったので、比較的新しい本なのかと思って読んだが、読み進むにつれ、日本人の性道徳感や村社会ぶりがやや古くさく感じ、奥付を見ると原書は1975年に出版された「サンダカン八番娼館」と1977年に出版された「サンダカンの墓」の新装合本であることがわかった。
◆日本は豊かな国だと思う。しかし、100年前までは貧しい国だったのだ。その如実な例が本書に出てくる<からゆきさん>だろう。
◆本書には衝撃を受けた。後世まで絶版になることなく、大勢の人々に読んでもらいたい本だ。
10点/10点満点
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