伊藤計劃「虐殺器官」感想。
SF小説。2010年09月14日読了。
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近未来の話であるけれど、ドミノ・ピザであったりケビン・ベーコンであったりCNNであったり映画エンゼルハートであったり、そういう現代の実在するいろんな何かを引き合いに出すことによって、著者の思い描く近未来は現在の延長線上にあり、決して荒唐無稽な近未来ではないのだ、ということを読者に感じさせ、それがリアリティのある近未来を構築しているように思う。のだけれども、何となく村上春樹っぽい感じがする。私は村上春樹をそれほど読んでいるわけでもなく、というか3作品しか読んでいないのだけれども、何となくそう感じた。
SF小説が大好きだった10年前までの私だったらこの本を絶賛していただろうけど、貧困国の現状に関する本を読みすぎた今、それってちょっとどうなのよと思う部分もある。というか、この物語のバックボーンである「実際に核兵器が使われてしまいました」という明日にでも実際に起こりえるかもしれない設定のリアルさに比べ、ナノマシンとかナノディスプレイという設定は、10年先だったら実用化されているかもしれないけれど明日の実用化は無理でしょ、と飛躍しすぎの感があり、やっぱりそれってどうなのよ。
とはいうものの、文庫版270ページより引用
「サラエボで核爆弾が炸裂した日、世界は変わった。
ヒロシマの神話は終わりを告げた。どういう意味かというと、世界の軍事関係者が薄々気づいていながら決しておくびにも出さなかったある事実を、おおっぴらにしてもいい、ということ。詰まりそれは、核兵器は「使える」ということだ」
私個人的な感想としては、この文章にこの本の素晴らしさが凝縮されているような気がするのですが、まあいずれにせよ著者は夭逝してしまい、今後の活躍は期待できなくなってしまったわけで、私は著者のファンでもなんでもないけれど、こういう作家が夭逝してしまったのはとても残念なのです。
追記 著者データ(紀伊國屋Bookwebより)
伊藤計劃[イトウケイカク]
1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』で作家デビュー。「ベストSF2007」「ゼロ年代ベストSF」第1位に輝いた。2008年、人気ゲームのノベライズ『メタルギアソリッドガンズオブザパトリオット』に続き、オリジナル長篇第2作となる『ハーモニー』を刊行。同書は第30回日本SF大賞のほか、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門を受賞した。2009年没
7点/10点満点
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