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2010/11/13

小島剛一「漂流するトルコ 続「トルコのもう一つの顔」」感想。
学術紀行ルポ。2010年10月26日読了。

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漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」

◆概要(紀伊國屋Bookwebより)
政府に弾圧され続けるトルコの少数民族の言語と、その生活の実態を、スパイと疑われながら、調査し続けた著者。
前著『トルコのもう一つの顔』(中公新書)が、まるで推理小説のようなスリルに満ちた物語と、著者の少数民族に対する愛情に涙が出たと絶賛され、長らく続編が待望されながら20年。
前著でトルコを国外追放されたあと、再びトルコへの入国を果たし、波瀾万丈のトルコ旅行が開始される。
著者の並外れた行動力と、深い知識、鋭い洞察力が生み出した画期的トルコ紀行。


◆著者の前著である「トルコのもう一つの顔」は、昨年(2009年)3月に読んだ。フランスに留学していた著者は1970年に初めてトルコを訪れそしてトルコの魅力に惹かれた。言語学者としてトルコ語を研究するため1977年に自転車&ヒッチハイクでトルコ旅行を行い、その後トルコ国内の少数言語(クルマンチュ語(北西部クルド語)、アブゼフ語、カバルド語、ザザ語、ラズ語他多数)研究に力を入れるようになったが、トルコ政府は「トルコにはトルコ語以外の言語は存在しない」という建前になっており、トルコ語以外の言葉を公で話すと投獄されるという少数民族・少数言語圧政の実態が見えてきた。それでも著者はあの手この手で少数言語を調べていたが、1986年「トルコ国外退去勧告」を受け、事実上の入国禁止処分になってしまった。

◆本書は、1986年の国外退去勧告を受けた直後、ギリシャ経由でフランスに戻るところから現在までの著者の足跡を記した、まさしく続編である。

◆1986年、ギリシャ経由で(留学先の)フランスに戻る際、北キプロスの入国印があったためギリシャの入管で追い返されそうになったが、著者がギリシャ語で丁寧にトルコから追い出された経緯を説明すると、ギリシャの入管は「北キプロス印を見なかったこと」にして入国を許可してくれたエピソードから始まり、

※キプロス島の北半分はトルコが軍事制圧し、北キプロス=トルコ共和国として独立宣言をしているが、国際的にはトルコ以外は一カ国も承認していない。これが元で、北キプロスの入国印があるとギリシャ(キプロス島南側つまりキプロス共和国はギリシャ系)には入れない。

◆フランスに戻ったら、著者はクルド語を研究しトルコ政府から追い出されたくらいなのでクルド人寄りの人物である、との噂が広まっており、フランスに逃げてきたクルド難民が「難民申請書を書くのを無償で手伝ってくれ」と申し出てきて、著者は彼らの難民申請を手伝ったこともあった。とある難民青年から話を聞くと、彼はクルディスタン独立運動家と見なされトルコ政府に捕まり投獄され、毎日気絶するまでゴム棒で殴られ真冬にホースで水をかけられ性器肛門に電気を流され、たまらず脱獄してきたという。

◆その後、偽装難民ではなく本当の難民だが、ろくでなしのどうしようもない奴と関わり合いになってしまって迷惑した話であるとか、

◆旅行先のネパールでヒマラヤトレッキングをしているとき、一緒になったフランス人から「本を書けば」と言われ、日本に帰国した際、つてを辿って出版社に原稿(前著「トルコのもう一つの顔」)を持ち込んだが、最初の出版社では相手にされず、氏名を伏せ字にするなど改稿した後、別の出版社からようやく出版されるに至った話とか、

◆などというエピソードでまだ1/3程度。ここから、トルコ政府から再入国を許可され再び言語調査に赴き、旧知の人々(トルコに住む人々)と再会し、旧知の人々は皆トルコ語もクルド語もぺらぺらに喋れる特異な日本人(著者)のことを覚えておりとても感激したエピソード、知り合ったトルコの出版社からトルコ語で本を出そうとしたが、共著人が適当に原稿を改竄して困り果てるエピソード、トルコ政府関係者が適当なことを言い出し著者の立場を貶めるようなことを画策しているエピソード、など、著者20年の人生が凝縮された本書は読みどころが満載である。

◆最終的に著者は、2003年、再び国外退去処分(国外追放)になっている。


◆約350ページの本書、おちゃらけた話はなく、きわめてまじめな話と適度に硬い文章で綴られている。きちがいじみた天才言語学者である著者は、本書に出てくる内容から類推するに40~80の言語を喋れると思われる。少なくとも日本語、英語、フランス語、ギリシャ語、トルコ語、クルマンチュ語(北西部クルド語)、アブゼフ語、カバルド語、ザザ語、ラズ語、ウブフ語は喋れてかつ読み書きも出来ると思われるし、ポーランド語、ルーマニア語、ブルガリア語、アルバニア後、アッシリア語、アルメニア語、アラブ語、グルジア語も喋れるのだろう。

◆その天才的言語学者と、「トルコ国内にはトルコ語しか存在しない」と言い張りクルド人弾圧政策をとるトルコ政府の暗闘は、スパイ小説さながらの展開である(アクションシーンはないが)。

◆親日で、人々は親切で、飯が美味くて、観光名所もたくさんあり、良い国のイメージがあるトルコだが、裏の顔はなかなかどす黒い。トルコ国内にだけ存在する少数言語を研究している著者にとって、トルコ政府批判とも受け取られかねない本書を書くのは勇気が要っただろう。

◆とにもかくにも、名著である。と断言する。


9点/10点満点


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