« 住宅ローンANAマイルで、が~ん。 | トップページ | ルワンダ・ブルンジ・コンゴ(旧ザイール)のまとめ。 »

2010/11/19

大津司郎「アフリカン・ブラッド・レアメタル」感想。
ルワンダルポ。2010年11月19日読了。

にほんブログ村 本ブログへブログランキングに参加しております。
バナーをちょこっと押していただけると恐悦至極なり。


アフリカンブラッドレアメタル―94年ルワンダ虐殺から現在へと続く『虐殺の道』


今回の感想はかなり長いです。

◆1994年に起こったルワンダ大虐殺
ルワンダの多数派であり政権を握っているフツ族が、少数派のツチ族を鉈や棍棒で殴り殺した。わずか3ヶ月で80万人以上のツチ族が殺された。路上の至る所に死体が転がっている映像は衝撃的だった。その後ツチ族が政権を奪還し、虐殺に加担したフツ族を無罪放免することで両民族は表面上和解。現在のルワンダは女性の国会議員数(比率)が世界一という男女平等社会が築かれている。

◆本書の紹介
と世間一般に知られている(知らない人も大勢いるだろうが)ルワンダ情勢だが、本書によるとその情勢は安定しているわけではなく、世界中から半分見捨てられた状態で、ルワンダにおけるフツ族とツチ族の戦いはコンゴに舞台を移して延々と続いてる。

まず、なぜルワンダ大虐殺が起こったか。ルワンダは元もとツチ族(虐殺された方)が旧宗主国ベルギーの傀儡として政権を握っていたが、フツ族(虐殺した方)がクーデターを起こしそうになったのをきっかけにベルギーがツチ族を見捨て、フツ族を政権に据えた(1959年)。

ツチ族はウガンダに逃げ、政権奪還のためルワンダ侵攻を行っていた。

ツチ族勢力にはアメリカが手を貸し、フツ族現政権にはフランスが(ベルギーに代わって?)手を貸していた。

ルワンダ大虐殺は突然起きたのではなく、たびたびウガンダから侵攻してくるツチ族勢力に業を煮やしたフツ族政権が周到に準備した大虐殺なのだった。

大虐殺の真っ最中、ツチ族(虐殺されている方)の反政府組織がルワンダの首都キガリを攻め落とし、虐殺していた側(フツ族)はコンゴに逃走、この後コンゴを舞台に、コンゴ政府軍、反コンゴ政府組織、ウガンダ、ブルンジ、ジンバブウェ、ナミビア、アンゴラなどの国を巻き込んだコンゴ戦争に続いていく。そして、その戦争はまだ終わったとは言えない……

双方の勢力に加担する米欧政府や企業を見ると、それはアメリカ対フランス(&ベルギー・ヨーロッパ勢)対中国の代理戦争の様相をも呈しており、その中心にあるのはコンゴに大量に埋まっている大量の金、ダイヤモンド、コバルト、ウラン、そしてレアメタルなどの鉱物資源である。

という内容である。ルワンダ情勢を多少なりとも知っているつもりだった私だが、知らなかったこともしくは忘れてしまったことが多々あり、本書の内容は衝撃的であった。

◆以降、偉そうなことを書くのでその背景(いつも偉そうだ、というのはさておき)

▽私はアフリカが好き
右サイドバーのカテゴリーを見ていただければわかるように、「アフリカ」というカテゴリーを作る程度に私はアフリカが好きなのです。

▽私のバックボーン1
私は1987年から1997年までNECでノートパソコンの実装設計を行っていた。少なくとも辞める前までの電子部品の需給関係や価格動勢などは、一般の方々より詳しい。

▽私のバックボーン2
私は10年以上前から株取引をやっている。株を始めた直後に買ったのが「東邦チタニウム」という会社で、チタンインゴット製造およびチタン加工技術の高さで世界有数の会社である。1999年頃から徐々にチタンの値が上がっており、東邦チタニウムも上昇するとの情報を得た私は、2005年まで何度も売り買いを繰り返し、この銘柄だけで100万円以上儲けた(最初に買ったときの価格で2005年まで持ち続けていたら1000万円以上儲かっていたはずなのだが、そううまくはいかない)。その後ニッケル価格上昇の情報を得て、住友金属鉱山を購入。この株も何度も売り買いを繰り返し、同じく100万円以上儲けている。

▽レアメタル価格上昇
バックボーンと、私が今まで読んできたビジネス書や雑誌、webマガジン得た情報を元にすると、1997年の段階でレアメタルの受給はそれほど逼迫していなかった。電子部品に使われているレアメタルといえば金(LSIのワイヤボンディングは全て金(GOLD)。金自体は希少でありg単価も高いが、1gの金は3000mもの長さに加工できるし、金は酸化しないためコストパフォーマンスが非常に高い)。他に使われていたレアメタルといえば、筐体メッキに使うニッケル、高性能コンデンサの原料であるタンタル、電池に使うリチウムやモリブデン、強度(剛性)の強い板金用金属としてチタンなど。
レアメタルの価格上昇=投機資金の流入は、チタン価格が上昇し始めた2000年頃からである。その後2002年頃からニッケル価格が急上昇し、その後モリブデン価格も上昇。携帯電話の普及とともにバイブに使われる磁石用の材料としてレアアース(ネオジムなど)が急騰。
私が知る限り、1990年代、レアメタルは希少であり材料としての値段もそれなりに高かったが、希少であるが故に工業製品としての利用は限られており、世界中で争奪戦になるほどの状態ではなかった。レアメタルは元もと流通量が少ないため取引もそれほど多くなく、そこに投機筋の資金が流入したため、市場の予想をはるかに超える急激な価格上昇が起こった。これが世間に広く知れ渡るようになってきたのが2003~5年頃。


◆これらを踏まえて本書を評価

▽題材は素晴らしく良い
著者は40年前に初めてアフリカに行き、以降チャドやタンザニアの駐在を経て1992年からテレビメディアを中心に取材しているジャーナリストだそうだ。
ルワンダ大虐殺後の難民押し寄せるゴマ(自衛隊が援助に行った地)での取材や、ブルンジ、コンゴなどでも取材を続け、本書には非常に良い取材成果に溢れている。

▽レアメタル争奪
著者は、ツチ族対フツ族の争いの舞台がコンゴへ移ったのは、レアメタル(を含む資源)争奪戦であるとの結論に導いているが、前述のようにレアメタル争奪が本格的に始まったのは2000年以降と思う。投機筋が参入する前のレアメタルは、単純に採掘コストがかかるから値段が高いのであって、儲けがそれほどあったとは思えない(もともとそれほど売れるものでもないから)。しかし投機筋が入ってきたことによってレアメタルは大儲けできる物に変貌した。
そうなると、1994年のルワンダ大虐殺の時点ではまだ争奪戦は始まっていないことになる。著者の言いたいこともわかるが、言い切るには証拠がない。全て推論だ。証拠がない状態で結果から原因を探るのは、フリーメーソンが世界中の全ての陰謀を企てているという都市伝説と大差ない。と私は思う。

▽軸のない構成
本書はその構成に軸となるものがない。最初はフツ族(虐殺した方)難民の親子マリアとトキオの行方を探すところから始まる。その後はルワンダ大虐殺に至るまでの経緯と、その後コンゴへ舞台を移した後の展開(史実を取材で裏付けしたルポ)が7割を占める。マリアとトキオ親子の話は時折出てくるのだが、ルポとして話の軸となるほどの力はない。マリアとトキオ親子の話を入れる必要があったのだろうか(省けなかったのだろうか)。

▽時制がメチャクチャな構成
更にだ。本書は章ごとに時が移り変わりすぎる。これが徹頭徹尾本書を読みづらく苛立たせる原因となる。例を出すときりがないから出さない。読んでいる途中に思ったのは、著者は全体的な構成を考えずに書き始め、書いている途中でどんどんあれも書きたいこれも書かなきゃとなってしまい、頭に浮かんだ内容を次から次へと書いているうちに収拾がつかなくなってしまったのではないだろうか、と思えてしまうくらい、構成がメチャクチャなのである。

▽写真にあまり意味がない
本書はペーパーバックスタイルの書籍なので、レイアウトとしてページの下1/4くらいが空白になっており、それなりの頻度で写真が印刷されている。のだが、かなり多くの写真が、掲載されているページの本文と無関係の難民キャンプの日常なのである。この写真に何か意味があるのだろうか。

▽著者の固有名詞選択
レアメタルの一種にタンタルという物がある。コルタンという鉱石から採れる。コルタンの英語表記はColtan、タンタルの英語表記ではTantalumとなり、著者はそれぞれコールタン、タンタラムという表現を本書で用いている。しかしだね、日本で一般に広く使われているのはコルタンとタンタルなんだよ。英語圏や現地(コンゴ)で実際にどのように発音されていようが、日本人ジャーナリストが日本人のために日本語で書いた本なのだから、日本で広く使われている表記をなぜ用いないのだろうか。Wikiで調べればすぐわかるのに。
同様のことは地名にも現れており、ベルギーの首都ブリュッセルを、著者は「ブラッセル」と書いている。著者の信条として譲れないものがあるのかも知れないが、ブラッセルなどという読み慣れない言葉を使われると、ルワンダ・ブルンジ・コンゴに実在する私が知らない地名のことなのかと思ってしまう。読者に無用の誤解を与えるような固有名詞の使い方は間違っていると思う。

▽著者の一人称
著者は一人称に「オレ」を使う。これも前述の固有名詞と同じで、いきなり「オレ」と出てくると、おっ?地名か? と一瞬迷ってしまう。読み進んでいけばそのようなこともなくなるが、それよりも「オレ」という表現は単純に下品である。

▽分厚くて読みづらい
本書の厚さは約3cm。厚すぎて非常に読みづらい。

▽そうは言っても
内容は非常に良い。取材の成果もある。話のつくり(マリアとトキオ親子)も最初は良かった。しかし段々と読みづらくなってしまった。読みづらいだけで、内容は良い。だからとても残念なのである。


6点/10点満点


|

« 住宅ローンANAマイルで、が~ん。 | トップページ | ルワンダ・ブルンジ・コンゴ(旧ザイール)のまとめ。 »

■アフリカ」カテゴリの記事

◇ルポ・ドキュメンタリー」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/43036/49875680

この記事へのトラックバック一覧です: 大津司郎「アフリカン・ブラッド・レアメタル」感想。
ルワンダルポ。2010年11月19日読了。
:

« 住宅ローンANAマイルで、が~ん。 | トップページ | ルワンダ・ブルンジ・コンゴ(旧ザイール)のまとめ。 »