« 元凶≠現況。 | トップページ | 岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」感想。
エッセイ。2011年07月17日読了。 »

2011/07/25

デイビッド・バットストーン/山岡万里子訳「告発・現代の人身売買」感想。
ルポ。2011年07月15日読了。

にほんブログ村 本ブログへブログランキングに参加しております。
バナーをちょこっと押していただけると恐悦至極なり。

告発・現代の人身売買―奴隷にされる女性と子ども

今年初めての10点満点本。

本書を読むつもりのある方に言っておきます。本書を読み切るには、かなりの覚悟が必要です。不用意に読み始めてしまうと、信じがたい現実に打ちのめされるかも知れません。

◆本書で紹介されている人身売買の例

現代でも世界中の至るところで奴隷売買がされている。

アフリカの話である。
東南アジアの話である。
南米の話である。

ヨーロッパの話でもある。
アメリカの話でもある。

人身売買という言葉に多少なりとも関心のある方は、東南アジアや中南米に住む若い女性を、先進諸国や金持ち国の連中が騙して連れてくる話、と思うかも知れないが、本書には、

アメリカに住む白人が、アメリカ国内で奴隷として売買されている例

も載っている。

序章。サンフランシスコ大学教授の著者が、たびたび行くインドレストランの従業員が実は奴隷であった。レストラン店主の一族が、偽のビザと身分証明書を使い、何百人という子供をインドから密輸し、店主の所有する幾つもの店で働かせていた。

第1章。タイやカンボジアの貧しい農村から、口減らしのために親に売られて、家政婦として重労働を課され、体が成熟すると売春婦として監禁状態で働かされる少女の話と、そこから導き出される東南アジアの人身売買構造。

第2章。インドの貧しい農民を騙し、当座の生活費として金を貸し出し、その農民の家族親族を何人にも働き口を斡旋する工場主。しかし工場主は借金を盾に取り、農民一族を奴隷状態にする。一族の女はもちろん犯す。誰かが逃げようとしたら、逃げ(られ)なかった一族がどうなるかわからないぞ、と脅す。

第3章。ウガンダの農村部に「神の抵抗軍(LRA)」というのがいる。反政府ゲリラだったが政権奪取に失敗し、現在では気の狂った宗教団体なのか反政府ゲリラなのかよくわからない集団に成り果てている。LRAは無差別に農村を襲う。子供は捕らえる。大人は全員村の中央に集める。そして、捕らえたばかりの村の子供に「大人を殺せ」と命令する。やむにやまれず子供は大人を殴る。殺せない。しかし別の村で捕らえてきた子供が大人を殺す。こういうことを繰り返すことで、子供は帰る場所がなくなり、LRAに洗脳される。女の子はもちろん性奴隷になる。

第4章。モルドバ。旧ソ連のヨーロッパ最貧国。この国には「イタリアで働き口があるよ、ビザも用意してあげる」と仕事を斡旋する奴等がいる。良い噂は聞かないが、働き口が全くないモルドバの若者はこの仕事に応募する。若い女は、集団でイタリアに向かう。ルーマニアを経由しセルビアに着く。売春を強要させられる。断ることなど出来ない。セルビアで1ヶ月くらい売春すると、その後アルバニアへ向かう。アルバニアでは単に強姦される。アルバニアからイタリアへ密入国する。そしてヨーロッパ各地へ売られる。(この章の話は海外テレビドラマ「セックス・トラフィック」の下敷きになったのだろうか?と思えるくらいドラマと同じ話)

第5章。ペルーのストリートチルドレンが売春その他奴隷になっている話。

第6章。アメリカ人の白人女が洗脳のような感じで騙され売春させられている話や、教会の牧師がザンビアの農村から聖歌隊を呼び寄せチャリティーコンサートを開いていたが、ザンビアの聖歌隊には約束の金をほとんど払ってなく、事実上の奴隷だった話。


◆本書の内容

先に挙げた例は、実に細かなところまで取材されていて、圧倒的な現実感を感じる。

しかし本書は、ただ単に人身売買の事例を挙げているだけではなく、人身売買組織と闘う人たちがどうやって奴隷を救っているのか、を同時に書いている。(人身売買組織と闘っている人たちがいるから、詳細な手口がわかり、本書のようにまとめることが出来る)

強制的の売春婦にされた少女達に働く場を与えている人。
強制労働を見つけては起訴に持ち込む弁護士。
人身売買された女性を見つける度に救い出す神父。
子供兵の話を聞き心の平安を取り戻す手助けをしている女性。

そういう意味では、本書は救いのある本であるし、けれども救っても救ってもなくならない人身売買の多さに絶望する本でもある。

◆余談

本書では日本の事例は出ていないが、日本の人身売買も相当ひどいだろう。

日本で働いている東南アジアや南米出身の売春婦なんて、かなりの数が人身売買だろう。(自主的に違法滞在して売春やっている人たちも多いだろうが)

また、日本の農業研修制度で中国(などいろんな国)から農民を連れて来る制度がある。農水省が率先して斡旋している制度で、この研修農民に払う給料というのがけっこう安くて、国際的には政府が先導している人身売買といわれている。(いまのところ日本人も中国人もハッピーな場合が多いみたいだから問題になってないけど)

同様に造船業にはベトナムから研修生が来ているし(国交省が先導切っているんだったかな?)、厚労省はインドネシアから看護師を受け入れているし。


日本人が書いた同様の本では、以前、長谷川まり子「少女売買-インドに売られたネパールの少女たち」という本に10点満点を付けた。(この本は賛否両論が激しい)


まとまりのない感想になりましたが、この手の話に興味を持っている人は、本書「告発・現代の人身売買」は読むべき一冊です。


10点/10点満点


|

« 元凶≠現況。 | トップページ | 岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」感想。
エッセイ。2011年07月17日読了。 »

◇ルポ・ドキュメンタリー」カテゴリの記事

◇臓器移植・臓器売買・人身売買」カテゴリの記事

●海外作品(原著英語)」カテゴリの記事

☆私的10点満点」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/43036/52215538

この記事へのトラックバック一覧です: デイビッド・バットストーン/山岡万里子訳「告発・現代の人身売買」感想。
ルポ。2011年07月15日読了。
:

« 元凶≠現況。 | トップページ | 岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」感想。
エッセイ。2011年07月17日読了。 »