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2011/08/20

白波瀬佐和子「生き方の不平等―お互いさまの社会に向けて」感想。
思想書。2011年08月03日読了。

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生き方の不平等―お互いさまの社会に向けて

本エントリーは長いぞ。覚悟すること。


この本(も)、私が在学している法政大学の夏期スクーリング「人文地理学実習」の教科書なので読んだ。

タイトル見ただけで内容が推測でき、この手の思想が大嫌いな私は一文字たりとも読みたくなかったが、「スクーリングの前に読んでおけ」との指令だったので仕方なく読んだ。

1958年生まれ(たぶん現在53歳)の著者は、同志社女子大を卒業した後、39歳でオックスフォード大学で博士号を取得した方である。39歳でオックスフォードってことは、そこに至るまで頑張って金貯めてから留学なされた苦労人であろうことが推測できる。

んで、現在は東大大学院の准教授である。


んで、本書はエリート様が語る貧困論である。大方の予想通り、社会主義、共産主義的な主張が満載で反吐が出る。

おどれは現実をどんだけ知っとんのじゃ?


で、要約するのである(注:講義の主題で「正しい要約」をせよ、との指令が出たのだ)


第一章 ゆりかごが決める人の一生 要約
 まず子供の不平等について考える。従来制度化されていた児童手当および家族手当は、妻子を養うための生活保障が第一義であり、子供自身の福利を保障する制度ではなかった。これを指標化したものとして、「日本における児童手当の対GDP比が低いこと」(p28)が挙げられ、更に掘り下げた「18歳未満の子供のいる世帯の貧困率を国際比較」(p30・図1-2)を著者は提示する。

 著者はこれらデータを更に詳しく分析し、「未就学児のいる世帯の貧困率が大きく上昇している」(p31)や、「若くして結婚し幼い子供を抱える家族の経済的に厳しい状況がうかがえます」(p32)と述べる。また、「就労状況のジェンダー差」(p32)、「若年既婚者の学歴分布」(p33)、「社会保障負担の高さ」(p34)、世帯構成別に見た貧困率(p35・図1-5)などについても言及し、「子育てに関する負担として最も多く寄せられるのが経済的なこと」(p36)としている。

 その上で、「子供は親を選ぶことができません」(p36)ということが、子供にとって「社会のスタートラインに差を生み出す」(p37)ことにつながり、「世の中の子供は、どのような親元に生まれようが「ひととなり」を保障されなければならない」(p39)と著者は主張する。

 「子供の幸せは親の幸せ」(p39小見出し)であるが、「親たちは貧しかった自分とは違った豊かな人生を歩ませたいと、子供たちへの期待を膨らませ…後略…」(p41-42)ている一方、「ネグレクトならぬ、親からほとんど注目されずに育っていく子もいます」(p43)と、様々な親が存在していることを示し、そして著者は自分の子供だけが子供なのではなく、「この世に生を享けたすべての子もまたわれわれの子です」(p45)と述べる。

 次に母子家庭の貧困率について、世界各国の「両親が揃っている世帯」と「母子家庭」の貧困率を比べ(p47・図1-6)、日本の母子家庭の貧困率は他国より際立っていることを示し、アメリカとイギリスの現状を「教育を十分うけることなく10代で妊娠し、その現実がわからないままに子供を生んで母親になる…中略…彼女たちは貧困層へと転げ落ちていきます」(p48)と分析し、日本においては「日本の母子家庭の母親はアメリカ以上にワーキングプアの状態にあるといえます」(p49)、「母子家庭の子もまた母子家庭となっていく」(p50)と述べている。

 更に著者は日本における、二人親、母子家庭、父子家庭、における子供の就労・就学状況を調査し、「(世帯の)所得が高いほど平均子供数が少なく、低所得層ほど平均子供数が多い傾向にある」(p55)と分析する。しかし子供によりよい教育をうけさせようと希望するのは、高所得者層も低所得者層も関係なく、「我が子であろうが、他人の子であろうが、子供の生活をわれわれ大人が保障していかなければならないのです」(p58)と提言し、具体案として「学ぶ権利の保障」「チャレンジする機会の保障」を示し、更には高校教育までの総合的な教育改革を訴える。この観点から、民主党政権が採った子供手当は、「国が子供を対象として正面切って保障政策を立ち上げた意義そのものは極めて高い」と評価している。

第一章の評価と疑問点
・「国際的に見て日本における児童手当の対GDP比が低い」(p28)
→この文章の直後に出てくる図1-1は、この文章の図ではない。誘導している印象を受ける。
→ここでいうGDPは、名目GDP(単純な金額)なのか、実質GDP(為替変動を考慮)なのか、購買力平価(俗に言うビッグマック指数のような考え方)を考慮しているのかが不明である。

・貧困率の定義を、「貧困問題で頻繁に引用される相対的貧困率(以下、貧困率)は、世帯収入に世帯サイズ(世帯人員数)を考慮して算出…後略…」(p29)、「図1-2は18歳未満の子供の…中略…OECDのやり方を踏襲して世帯の可処分所得を世帯人数で等価して一人当たりの福利厚生度とし、それをもって社会全体人口の貧困率を算出する方法をとっています。」(p30)
→OECDについての説明がない。(社会科学を勉強する者なら知っていて当たり前?)
→OECD基準が適切である根拠は?
→可処分所得、に関する定義が示されていない(OECD基準?)
→世帯の可処分所得を世帯人数で等価して、に関する数式が一切示されていない。
→絶対的貧困率への言及がない。
 ※絶対的貧困率とは、世界銀行の定義で1日の所得が1米ドル以下に満たない国民の割合の事
→それらを踏まえ、図は国別貧困率に置き換えられているため、(日本の場合)世帯年収が幾らからが貧困と位置づけられるのかがわからない=日本の貧困についてイメージが湧かない。

・「図1-4の分析対象者となっている若年既婚者の学歴分布を見ると…後略…」(p33)
→若年ではない既婚者の学歴分布が比較掲載されていないため、図1-4にて示された学歴の偏向性が、“若年既婚者”のみに見られる傾向なのか、読者は判断できない。

・「貧困層にある母子家庭の多くが未婚の若いアフリカ系アメリカ人(黒人)女性です」(p48)
→単純な疑問として、ヒスパニック(中南米系の移民)は含まれないのか?

・「日本の母子家庭の母親はアメリカ以上にワーキング・プアの状態にあるといえます」(p49)
→感情的にはわかるが、それならば働かずに(生きていくための最低限の生活費を支給される)
生活保護を受ければ良いだけの話。最低限以上の生活をしたい人が多いというだけでは?

◆ちょっと飛ぶが、第四章 評価と疑問点
・「格差の測り方」(p164-167)
→4ページに亘り記載されている格差の測り方に関し、この計算方法は「所得」が計算根拠となっており、「資産」への考慮がなされていない。従って、次のような疑問が生ずる。
(疑問例)総額3億円の土地を所有しているが、現金収入は月額12万円(年収144万円)だけの独居老人は、所得で見ると貧困層に分類されるが、果たしてこの老人は貧困層か?
 (この疑問例は、土地を現預金に置き換えても構わない)

・「家族だから介護すべしと言う規範からの解放をめざすのであれば、介護自体をサービスであり労働ととらえて、報酬体系を検討することが急務です。」(p181)
→家族が介護を行うとキャッシュが必要ないというメリットがあり(経営学的にいうキャッシュフローの観点)、著者の主張にはこの視点が抜けている。


◆スウェーデン
・(p113)「アメリカやイギリス、スウェーデンといった欧米諸国において…略…」
・(p128)「福祉国家としてお手本となるスウェーデンにしても」
・(p129)「経済の回復とともに再び出生率が上昇しているのが今のスウェーデンです」
・(p196)「スウェーデンの恵まれた社会福祉政策は、…略…」

知らない人のために書いておくが、スウェーデンは(半分)社会主義国家だよ。


というわけで、(私の価値観に照らせば)ダメダメ本である。


3点/10点満点


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