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2011/09/05

岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」感想。
講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。

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現代免疫物語―花粉症や移植が教える生命の不思議

◆ドナ・ディケンソンは「ボディショッピング 血と肉の経済」(2011年08月23日読了)で、医学者や科学者が臓器や卵子や遺伝子を扱うことに関する生命倫理を問うた。印象に残ったのは以下のような主張。

肝臓や腎臓の移植は臓器移植である。場合によっては、それが売買されるケースもある。臓器の売買は生命倫理的に許されるべきではない。

では、卵子はどうなのだろうか?卵子は臓器ではないのか?肝臓腎臓と卵子の違いとはいったい何だ?

遺伝子を利用することによって病気の治療につながるのは素晴らしいかも知れないが、それを特許として限られた科学者や製薬会社の独占的所有物として良いのだろうか?

遺伝子を研究することや、幹細胞を研究するために、卵子が利用される。科学者たちは、若くてまだ妊娠を望んでいない若い女性から卵子の提供を受ける(対価を払う)が、これは臓器売買の一種なのではないか?


◆本書

本書は、阪大教授の岸本氏(阪大医学部長も歴任)とサイエンスライターの中嶋氏が、現代の免疫学に関する発見の歴史を、医学知識のないの読者でも分かるように易しく書いた本である。(元々は単行本で出版された本みたいなので、ブルーバックスの読者レベルに合わせたわけではないと思う)

1930年代から1960年代に亘る30年間に、抗体と呼ばれる免疫物質(分子)が続々と発見されていた。

アレルギーを引き起こす原因も、抗体に関係があることが突き止められ、花粉症の現任となる抗体(IgE)は日本人の科学者石坂夫妻が突き止めた。

というような話から始まって、1960年代以降現在に至るまでの、抗体、T細胞、インターフェロン、胸腺の役割、受容体など、怒濤の発見ラッシュの歴史と、それにまつわる科学者達の奮闘、数ヶ月の差で一番乗りを逃してしまった科学者の悲哀、そういうことがドラマチックに書かれている本である。


新しい抗体や受容体を発見するために、特定の抗体に弱いマウス(実験動物としてのネズミのこと)やウサギを生産し、

鶏の卵を使った実験から生み出されたインターフェロン、

遺伝子を利用することによって新たな治療法が確立できると考えた科学者や製薬会社による、遺伝子医療開発レース、

などなど……


本書は科学者達の飽くなき探求心をテーマ毎の物語形式で書かれ、医療科学の発展を知る上で面白い話がたくさん載っており(あとがきで、かなり端折ったと書いているが、私には詰め込み過ぎに感じた)、とても良質なサイエンスブックと思う。


◆だが

冒頭に挙げた「ボディショッピング」を読んだ後に本書を読むと、とても複雑な気持ちになった。「ボディショッピング」の著者が懸念しているような、「医学者達の無垢な暴走」が如実に現れているのだ。

倫理というのはとても難しい。


7点/10点満点

◆余談:臓器売買に関する最近の読書

最近、私は好んで医療関係、なかでも臓器売買及び臓器移植についての本を読んでいる。
◆ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」2011年08月23日読了(生命倫理を問う本)
◆デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」2011年08月06日読了(安楽死本)
◆岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」2011年07月17日読了(医者の思想エッセイ)
◆一橋文哉「ドナービジネス」2011年02月16日読了(作り話っぽく信頼性に欠ける)
◆山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」2011年01月25日読了(臓器売買犯の言い訳)
◆城山英巳「中国臓器市場」2011年01月24日読了(ルポ本としての構成はイマイチだが取材内容は良)
◆青山淳平「腎臓移植最前線」2010年10月17日読了(これは良書)
◆木村良一「臓器漂流」2010年09月09日読了(本としては残念だが事実関係は興味深い)

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