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2011/12/03

パラグ・カンナ/古村治彦訳「ネクスト・ルネサンス―21世紀世界の動かし方」感想。
提言書。2011年11月23日読了。

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ネクスト・ルネサンス―21世紀世界の動かし方


しばらくは積ん読本(400冊以上ある)を粛々と消化するのに留め、新しい本はなるべく買わないようにしていたのだけれども、本屋で立ち読みしたらどうしても欲しくなってしまったので買ってしまった一冊。買ってしまったからには、積ん読本の仲間入りにならないよう、とっとと読み終えることにした。


◆著者 パラグ・カンナ
1977年インド生まれ。ジョージタウン大学外交学部で学士号、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで博士号。ニューアメリカ財団上級研究員、兼ブルッキングス研究所研究員。米国特殊作戦部隊アドバイザー。外交問題評議会(CRF)会員。


◆本書の内容(本書帯の文句改)
国家の時代は終わった!

新しい(ネクスト)ルネサンス=21世紀を動かすのは、ビジネス界のリーダーらメガ・ディプロマシー(巨大化する外交)の担い手たちだ!

世界規模での大変動が起きている現在、私は、本書で、新しい中世の時代から新しいルネサンスへと進む道筋を示そうと試みている。私は、2種類のアクターたちが世界の外交を発展させるために大きな役割を果たすに違いないと確信している。その2種類のアクターたちとは「企業のCEOたち」と「各都市の市長」たちである。


◆本書の内容(一部引用)
本書をざっくりと言うと、これからの世界は、旧態依然とした政治家や外交官や国際機関に勤める官僚による外交が主ではなくなり、企業のCEOやNGOや各国大都市(の市長)が勝手に連携して勝手に動かしていくのが主となるだろう、というような主張が書かれた本。


(P39-40)
「世界は国民国家の総体であり、まとまりを持つ国民国家が主役となって世界を動かしている」と考えるのは時代遅れだ。現在世界を動かしているのは、国民国家の中央政府ではなく、中世のように、より小さな統治形態であり、世界は、地方政府や州政府などの「小さな統治形態が島のように散らばってそれらがつながっている」状態であると認識すべきだ。簡単に言うと、こうした小さな島々は国家ではなく、都市のことを指している。現在、四〇の都市部と呼ばれる地域が世界経済の三分の二(私の注:P14では三分の一となっていた)を占めている。そこには資金、知識が集まり、安定している。ニューヨーク市の経済規模は、アフリカのサハラ砂漠以南の国のほとんどよりも大きい。ドバイのような港湾都市や自由貿易都市は、ヴェネチアの二一世紀版といったところだ。港湾都市や自由貿易都市は「自由ゾーン」である。

(中略)

下層民たちは、混沌の中におり、「地下経済」に依存して生活している。そして、彼らは階層化された「生態系」の中で生活している。階層化された社会というのはまさに中世時代の都市の特徴である。金持ちや貧乏人であることは関係なく、個人、そして都市が、現在の世界で起きていることの主役となっている。国家が世界の主役であった時代は終わりつつある。昔、世界は一つの村であるという主張がなされたが、現在の世界は村のネットワークであると言えるだろう。


という著者の主張を裏付けるため、根拠となるような話を幾つも展開する。


(P125)
スーダンのダルフールの大虐殺に関し、アメリカとヨーロッパは指導力を発揮して介入しようとはしなかった。そうした失敗を隠すために国連安保理は利用されている。国連安保理は国際法の実施に責任を持つ機構であるが、世界各国に対する道徳的な指針を示すことはほとんどない。


(P171-172)
2004年に大規模な津波がインドネシアを襲った。インドネシアの中心部から遠く離れたバンダアチェに救援物資を届けたのはオランダの多国籍企業TNTだった。(中略)ユニリーバは、食品会社ダノンが製造し、寄付した栄養価の高いビスケットを被災者たちに配布した。国連世界食糧計画(WFP)はシティグループから提供を受けたオフィスを本部として使用した。(中略)40億ドル以上集まった国際社会の寄付のほとんどは何に使われたか、その使途をインドネシア政府は未だに発表していない。

(中略)

チャド国内で最も衛生状態がよいのは、国連が運営している難民キャンプの中である。このキャンプには五〇万人ほどの難民が生活している。彼らは、スーダンと中央アフリカ共和国から避難してきた人々だ。国際救援委員会(IRC)は世界中に飲料水の供給と衛生教育を行っている。IRCの予算の九〇パーセントは、直接現地の活動に使われている。世界で最も効率のよい人道支援団体だ。


付箋を貼ったところが30ヶ所以上あり、全部引用していたらきりがないのでこの程度に留めておきますが、著者の主張を極限まで要約すると、常任理事国の我が儘がまかり通る国連は、もはやその存在に意味がなく、それに気づいている人たち(大企業のCEOや各国のNGOや各都市の有識者など)が勝手に事実上の外交を始めている、ということです。要約しすぎですけど。


◆感想

最初の数ページを立ち読みして衝動的に買ってしまったけど、読めば読むほどかなり難しい社会政治学の本であることがわかり、1日50ページずつ、じっくりと内容を理解しながら読んで、へとへとになってしまった。

著者の主張には共感する部分もあるけど、国際NGOの活動を褒めちぎったりしている部分には共感できなかったり。

とりあえず言えることは、この本には私がいままで全く知らなかった国際機関(NGOだけじゃなく)に関する情報が多数載っており、これから国際機関で働きたいと思っている若い方は、無理してでも本書を読むべきだと思う。


8点/10点満点


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