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2011/12/05

マイク・デイヴィス/酒井隆史訳「スラムの惑星」感想。
社会学の本。2011年11月29日読了。

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スラムの惑星―都市貧困のグローバル化


世界各国の都市にスラムがある。その人数は世界で10億人になるらしい。

著者は本書で、現代は新石器革命や産業革命に匹敵する人類史上の分水嶺であると指摘している。

「地球上の都市人口が農村人口を初めて凌駕する」と。


本書の原著は2006年に出版された。邦訳が出版されたのは2010年5月。著者の言う分水嶺はもう過ぎたことなのかもしれない。


◆著者紹介
1946年生まれの著者マイク・デイヴィスは、16才で父親が病に倒れ高校を退学、精肉工場の工員として働き、その間に従姉妹の夫である公民権運動活動家と知り合い工場を辞め、人種平等会議サンディエゴ支部で活動しながら高校を卒業。カレッジに入るものの寮に女を連れ込み退学。フルタイムの活動家になり、共産党に入党し、党の本屋で2年間過ごしたが、監視に来たソ連の役人を追っ払って解雇され、4年間トラックドライバーをしながらマルクスの「資本論」などを読み、自分の学んできたことを総括するためUCLAに通い、アイルランド史研究のためスコットランドに留学。留学中にロンドンの「ニューレフト・レビュー誌(NLR)」関係者と知り合い、1980-1986年までNLR誌のオフィスにフルタイムで働く。1986年に最初の著作「アメリカンドリームの囚人」を発表。1987年ロスに戻り、再びトラックを運転手となるも、低賃金を補うためにカレッジで教鞭をとりはじめる。で、現在はカリフォルニア大学バークレー校の教授である(いつ教授になったのかはよくわからん)。なかなかすごい人生だ。


◆感想

本書は、世界各国の都市にスラムができ、そのスラム人口が爆発的に増えていることを、膨大な数の論文を参照し(各章ごとに80以上の参照論文が掲載されている)、具体的なデータを元に検証している。

少しでも本書の内容を伝えるため、何とか要約しようと思ったのだが、本書は大学3年以上(もしくは大学院)の講義で取り上げるような内容であり、内容も濃く、要約なんて無理。

すみません。


私は自分の知的好奇心を満たしたいだけで、この手の本をいろいろと読んでいるのだが、やや敷居の高い本だったのかもしれない。


ただまあなんだ、本として考えたら完成度は低い(教科書として考えるのならどうでもいいことだが)。

理由1:句点が出てくるまでを一つの文章とすると、その中に多数の地名が出てきて、ややこしい。というかわかりにくい。

(P10)
ラゴスのアジェグンルというスラムである女が子供を出産し、ジャワ島西部の村から逃げた若い男がジャカルタのまばゆい光を求め、貧窮化した家族を持つ農民がリマにある無数のプエブロス・ホーベネス(pueblos jovenes)の一つに家族を移動させるだろう。


理由2:著者が括弧書きを多用し、それも傍点ありのハイフンの上に二重括弧とか平気で使っているなど、ただでさえ読みづらさ満点なのに、翻訳者が二重括弧の上に訳註を入れたりして、うひゃぁ。

(P139)
ナイル川東方のムカッタエ丘の麓にあるマンシエット・ナスルでは人口密度は少しだけましだが、150万人以上がわずか350ヘクタールにいる(『フィナンシャル・タイムズ』紙によれば、「ダンテのごとき困窮状態」にあるその南端で、かのザリバーン〔コプト派キリスト教徒の貧しい共同体〕がゴミから食料を拾い集めている)。

※原著のイタリックは傍点表記、「」は原著の""、『』は紙誌名、()と[]は原著に記載されている補足、〔〕は訳註。上記例に[]はありませんが本書には出てきます。

ややこしすぎるわ!


理由3:これは翻訳の問題だが、スクワッターというような言葉が頻出させているのに、そういう言葉に全く日本語で説明が無く、知らない言葉が出てくるとネットで調べなきゃならなかった。これは面倒。学問的には日本語(外来語)として通用しているのかもしれないけど、私は知らんがな。

※スクワッターとは無断居住者のこと


理由4:本書は全8章+エピローグで構成されているが、章分けするほど章と章の内容に違いを感じられなかった。学問的には意味があるのかもしれないが。もしくは私に読解力や基本的学力がないだけなのかもしれないが。


◆というわけで

社会学の読み応えたっぷりな翻訳本を3冊立て続けに読んだのだが(「援助じゃアフリカは発展しない」「ネクスト・ルネサンス」、そして本書)、それは各著者の意見の違いを意識しながら読めるわけでとても有意義なんだけど、誰がどういう意見を主張していたんだっけか?とちょっと混乱する部分もあり、社会学の本を1冊読んだら、連続して同じような本を読むのではなく、全く傾向の違う本を間に挟んだ方が良いのかもしれないと実感したのであった。


(読み物としては)6点/10点満点


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