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2012/02/23

伊藤正孝「南ア共和国の内幕 アパルトヘイトの終焉まで(増補改訂版)」感想。
南アルポ。2012年02月21日読了。

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南ア共和国の内幕―アパルトヘイトの終焉まで (増補改訂版)

私的10点満点の本。

40年も前に取材した内容が中心なのだが、アパルトヘイトにまみれた南アに滞在した黄色人種。そのリアルな体験は、アパルトヘイトとはなんぞや、と思わずにいられない。

これぞ不朽の名作となるであろう

本書は、朝日新聞ダルエスサラーム特派員、カイロ特派員を歴任した著者が、1970年4月から3ヶ月、アパルトヘイト政策まっただ中の南アフリカに滞在し、その実態をルポした本で、初版は1971年に出版された。

本書の初版を書いたことにより、著者は南アフリカ政府から「好ましからざる人物(反アパルトヘイト)」に指定され、南アフリカのビザが下りなくなってしまった。

私が読んだ改訂増補版は、アパルトヘイト政策に行き詰まってきた1989年11月(※)にようやく南アフリカへの再訪を果たした著者が、潜入から20年後の状況を付け加え1992年に出版された本である。

※アパルトヘイト政策をやめる決断を下したデクラーク大統領就任したのが1898年5月、ネルソン・マンデラが釈放された&デクラーク政権がアパルトヘイト法を全廃したのが1990年2月。


本書の存在は、白戸圭一「ルポ資源大陸アフリカ」に記載されていた参考文献によって知った。現在は絶版みたいなので、古本で買った。


◆感想
アパルトヘイトは、国家が一丸となって人種差別をしていることである。という知識はあった。
アパルトヘイト下の南アフリカで、日本人は名誉白人と呼ばれ、有色人種でありながら白人と同等である。という知識はあった。

本書を読んだら、南アフリカは私が新聞やテレビニュースで得た知識より遙かに上をいっている国だった。

アパルトヘイトを可能にした法律が幾つもある。
・背徳法…白人と非白人は性交してはならない
・パス法…非白人はパス(身分証明書)を持たずに外出すると逮捕される
・職業確保の法や条例…白人しか就けない職業がある。白人と非白人の比率が抑えられた職業もある
・共産主義抑圧法…白人と非白人の敵対感情を助長する行為は全て共産主義とみなし、共産主義者の集会への参加や書物の出版は禁止
・サボタージュ法…法務大臣は、共産主義者と見なされる者をいつでも自宅拘禁する権限がある
・ノートライアル法…共産主義者並びにそれに関する情報を持っている者を、裁判無しで90日または180日拘禁できる
・テロリズム法…治安を乱す者は逮捕状が無くても拘禁でき、無罪の証明は被告にある

日本人は名誉白人というのは、貿易のための便宜。実際は差別がすごい。ホテルに泊めてくれない、レストランに入れてくれないなどは当たり前。(※末尾に雑感あり)

1970年というのは、モザンビークはポルトガル領であり、国境はポルトガル軍が守っていた。ジンバブウェはまだローデシアであり、ナミビアも独立前である。

そんな中、著者は観光旅行を装い、3ヶ月も滞在した。そこでの実体験を元に本書が書かれている。


また、何故南アフリカがアパルトヘイトを実行するに至ったのか、歴史を踏まえた解説はとても分かり易い。

1652年に、オランダ東インド会社が中継拠点としてケープタウンに上陸。
オランダ東インド会社の社員が辞めてケープタウンに定住。
移民開始初期、男性の数が多く、現地住民を妻にする白人多数。
労働力の不足を解消するため、定住したオランダ人はマダガスカル、モザンビーク、インド、インドネシアなどから奴隷を連れて来る。(南アフリカの白人のルーツを辿ると、そのほとんどに奴隷の血が混ざっている)
1792-99年のフランス革命でオランダは植民地支配力が無くなり、ケープタウン放棄。定住者を見捨てる。
1815年ナポレオン戦争の勝者イギリスが南アフリカ経営に乗り出す。
オランダ人定住者(アフリカーナー)とイギリスの間で奴隷をめぐる摩擦発生。
1853年、定住者は内陸部に移住、自分たちの国(オレンジ自由国とトランスバール共和国)を造る。
1886年、トランスバールで金鉱脈発見。
イギリスが支配に乗り出す。
第二次ボーア戦争勃発。
1900-02年、定住者のアフリカーナー敗退。
敗戦後アフリカーナーは困窮。
1913年、アフリカーナーに手こずったイギリスは、黒人を差別することで、白人(イギリス人とアフリカーナー)融和を図り、原住民土地法を制定。国土の87%を白人領と決める。

こうして人種差別が生まれていくのであった。


世の中には私が知らないだけで素晴らしい本がたくさんあるのだなあ。10点満点。


10点/10点満点

※以前、ケープタウンに何度も行ったことのあるマグロ漁船の漁師と仲良くなり、その彼から聞いた話は、アパルトヘイト下のケープタウンでは、日本人漁師は指定されたキャバレー(売春宿兼務)以外には行けなかったそうだ。死んでも知らないよ、と言われたとか。日本人漁師は気前が良いので、キャバレーでは大もてだったそうだ。

※南アフリカに関する本では、平野克己「南アフリカの衝撃」も良かった。

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2012/02/22

春日孝之「イランはこれからどうなるのか」感想。
イランルポ。2012年02月18日読了。

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イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実

毎日新聞でニューデリー、イスラマバード(パキスタン)支局を経て2005年10月2009年9月までイランのテヘラン支局長を勤めていたのが本書の著者。現在は外信部編集委員っぽい。

本書はイランに4年住んでいた新聞記者の視点で語られる、イランの話である。


へえー、へえー、へえー、へえー、へえー、
へえー、へえー、へえー、へえー、へえー、
へえー、へえー、へえー、へえー、へえー、
へえー、へえー、へえー、へえー、へえー。
20へえである。

※20へえの内訳(引用ではない、要約意約である)

01.イラン各都市とドバイを結ぶ定期便は1日70便!

02.ドバイが輸入する物資の7割は再輸出されるが、その7割はイラン向け。

03.1991年の湾岸戦争、何故湾岸なのかというと、「ペルシャ湾」を「アラビア湾」と言い換えたいアラブ勢力がいて、それに対抗する側面もあったのかも。

04.ホメイニ氏は「ユダヤ人」と「シオニスト」を明確に区別してました。

05.イスラム教シーア派を国教とするイランだが、信教の自由は憲法で保障されている。えっ!

06.イランはペルシャである。アラブではない。その証左の一つがイラン・イラク戦争で中東のアラブ諸国(スンニ派が多い)はイラク(サダムフセインの方でスンニ派)支持に回った

07.著者がパキスタン(イスラム教スンニ派)滞在中、パキスタン人はラマダン(断食)や礼拝はきちんと守っていた。対して、シーア派のイラン人は、日常の礼拝はしないし、ラマダンでも断食しない。

08.パレスチナの抵抗政党ハマスはスンニ派で、シーア派のイランの言うことをイマイチきかないから、レバノンにスンニ派シーア派のヒズボラを作った。

09.イラク(サダムフセインの方で、スンニ派)がIAEAの査察を拒否したのは、「宿敵イラン(シーア派)に軍事的な弱さを見せたくなかったから」

10.イラン(シーア派)は、タリバン(スンニ派原理主義)もアルカイダ(スンニ派の過激派)も大嫌い。だから、アメリカがアフガン(タリバンやアルカイダの拠点ね)やイラク(スンニ派の巨国ね)をやっつけてくれたのは「イラン国民の血を一滴も流すことなく得た大勝利」なので、イランはアメリカに感謝。だけどそのアメリカはイランを敵視。

11.ホメイニ氏によるイランのイスラム革命以後、イランの石油設備は古いまま置き換えが進まず、イランはガソリン輸入国。国内消費の4割を輸入しているとか。(で、税金投入してガソリンを安く供給しているんだとか)

12.イスラム教は偶像禁止だけど、イラン(のシーア派)では無問題で、肖像画とか銅像が多数ある。

13.1979年のイスラム革命以降、イランの大統領も国会議員も国民が直接「民主主義的選挙」で選ぶ近代的民主主義体制である。(ただし大統領の上にイスラム法学者がいる=現在はハメネイ氏

14.イランはIAEAに加盟し、(平和利用目的の)核開発を行っている。IAEAに加盟しないで核開発しているイラクや北朝鮮(やイスラエル)とはちょっと違う。

15.アメリカはブッシュからオバマに変わって、イランに攻め入るどころか、イスラエルがイランに攻撃するのを止める抑止力になっている。

16.イランは、タリバンやアルカイダの情報をアメリカに流していた。

17.イスラム法学者で元大統領のラフサンジャニ氏は、有数の大富豪。腐れ坊主に国民はうんざり。

18.イランは第二次世界大戦中、イギリスとソ連に分割統治されていた(知らんかった……)

19.サウジアラビア(スンニ派)などの国と違って、イランの女性はけっこう肌を露出してますよ。

20.イランでは酒がけっこうおおっぴらに飲まれてる。


面白かったですよ。でも雑学本ではなく、イラン略史なども踏まえた読み応えのある一冊です。イスラムに関する知識が少ないと、へえー、と思う回数は減るでしょうが。


8点/10点満点

※どうでも良いことですが、毎日新聞記者の本をけっこう読んでいます。毎日新聞ってのは、記者の能力をもっと自社内で活かせばいいのに。

以下は当ブログの中で毎日新聞記者が書いたと断言できる本。私が気づいていないだけで、もっと多くの本を読んでいるかも。

藤原章生「絵はがきにされた少年」(毎日新聞記者、95-2001駐ヨハネスブルク・アフリカ特派員、2002-メキシコ市支局長・ラテンアメリカ特派員)

河内孝「新聞社 破綻したビジネスモデル」(毎日新聞元常務、退職してから本書を上梓)

福原直樹「黒いスイス」(毎日新聞ジュネーブ特派員を6年勤め、本書執筆時ブリュッセル支局長)

白戸圭一「ルポ資源大陸アフリカ」(毎日新聞の元ヨハネスブルク特派員で、本書執筆時は政治部記者、現在は外信部)

※2月23日、ちょこまかと誤字や間違いを修正。

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2012/02/21

野村進「コリアン世界の旅」感想。
在日コリアンルポ。2012年02月15日読了。

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コリアン世界の旅


「島国チャイニーズ」を書いた野村進の出世作。なので読んでみた。

◆本書の内容(amazonから引用)
「コリアン」とは、どんな人たちなのか?一見容貌が似かよっているがゆえに誤解を深めがちな日本人と在日韓国・朝鮮人のあいだの「透明な壁」を相手に、気鋭のノンフィクションライターが果敢に挑む!私たちのすぐ隣にある「コリアン世界」を、世界的視野で掘り下げた意欲作。
大宅壮一ノンフィクション賞・講談社ノンフィクション賞ダブル受賞作品!

◆感想
私は北海道で生まれ育ち、学校を出てからずっと千葉にいるので、在日コリアンとは縁が薄い。

生まれた町はアイヌがいる町で、小学校中学校の同級生にもアイヌはいた。私(1966年生まれ)の世代では、アイヌの同級生を「やーい、アイヌー」と言ってからかうことはあっても、アイヌを民族として差別したことはない。だから昨年(2011年)アイヌが政党を作ると聞いたとき、「なんで今さら?」という感じがした。「アイヌ差別ってどんなのがあったの?」と親に聞いても「俺の周りじゃほとんど無かったな、部落じゃいろいろあったかもしれんけど」という感じなので、差別が激しかったのは戦争より前の話だったのかもしれない。違うかもしれないけど。

差別というのは、差別する側は特別意識していなく記憶にも残っていないことが多い。対して差別される側の記憶には残り続ける。

何を偉そうに、お前は差別されたことがないだろう! と言いたい方、私はアルゼンチンで人種差別に遭い、恐怖した経験があります。たった2日だけど、悔しくて涙が出ました。(アルゼンチンは南米唯一の白人国家で、白人至上主義を掲げる輩がそれなりの数いる)

まあ結局のところ、アイヌ差別に関心もなく、「差別する側であった普通の日本人」である私や私の親は、差別があっても知らぬ気づかぬだけだったのかもしれない。


と言うわけで本題。


在日コリアンに関して、私はほとんど実態を知らない。
以前勤めていた会社の後輩が、

後輩「いやあ、俺こないだ帰化したんすよー」
私「へ?何の話?」
後輩「俺コリアンですよ、知らんかったんすか」
私「知らんかった」
後輩「けっこう手続きめんどくさかったんですよー」
私「へえー、そうなんだ」

本人から言われなかったらコリアンだったなんてまったくわからなかった。そのくらい日本人と区別が付かない。と言う程度の認識しか私は持っていなかった。

1990年代の拉致問題以降の新聞テレビ雑誌メディアの北朝鮮報道によって、およびネット大好きな私はネトウヨの北朝鮮(&韓国+中国)バッシングによって、そういや在日ってすごく特殊だよな、と気づくのである。(その頃数多く出版された嫌韓本をかなり読んでいた)

本書の著者野村進は、私ほどじゃないにせよ、在日コリアンについて何も知らない「普通の日本人」だった。その著者が在日コリアンについて興味を抱き、多くの在日コリアンに会い、さらにはアメリカに住むコリアン、ベトナムに住むコリアンにも会いに行き、在××コリアンの姿を書き表したのが本書である。

その視点は、
在日コリアンって差別されて可哀想……に偏ることもなく、
在日コリアンは帰化しないなら祖国に帰れや……という右翼思想に偏ることもなく、

自分の身近にいるのにその存在がよく分からない状態にある在日コリアンのことを、「なぜ自分はこの人達のことを知らなかったのだろう?」という疑問を解き明かすかのごとく、次から次へと取材を進めていく。

その取材成果である本書は、見知らぬ世界について教えてくれるルポ・ドキュメンタリー・ノンフィクションの醍醐味そのものであり、楽しみながら読めた。

満足。


8点/10点満点


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2012/02/20

石井光太「ニッポン異国紀行」感想。
在日外国人ルポ。2012年02月13日読了。

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ニッポン異国紀行―在日外国人のカネ・性愛・死


少々更新をサボっておりましたが、今日から最低4日連続で更新します(要するに更新をサボっている間に4冊本を読んだ)


わたくしが贔屓にしているノンフィクション作家、石井光太の新作。

私は石井光太の取材力を高く評価していて当ブログでもたびたび絶賛しているけど、amazonで氏の著書のレビューを読むと、拒絶反応に近いネガティブレビューなども見受けられ、万人受けするわけではないのだなあ、と改めて感ずる次第。世の中全ての人に受け入れられる作家などいやしないのだから、当然な話ですが。(例えば私は村上春樹の良さが一つも解らない)


さて本書は、在日外国人に関する、

第1章 日本で死んでしまった外国人の遺体はどうなるのか?
第2章 セックスビジネスに関わる外国人女性の今昔
第3章 日本で布教する外国の宗教団体
第4章 在日外国人は病気になったらどうするのか、外国人を診療する病院の話

このほか、章にまとめるほどではない小ネタとして、スクラップ業を営む外国人の話、日本にあるインド系インターナショナル幼稚園に通う子供の95%は日本人、中古車の輸出には手間もかかるが輸出先でのコネが大事、日本のあるインド料理レストランは必ずしもインド人が経営しているわけではない話、北朝鮮製の偽マイルドセブンを日本で売って設けている人の話、などなど。


乱暴な言い方をすると、在日外国人に関する雑学本の一種と言える。


いつもの石井光太本のような、ハードなルポを期待するとちょっと肩すかしを食らうかもしれない。

けど気張らずに読めば、感心するような話が多く載っている。


本書231-232ページに載っていた、中古車輸出に関する話が興味深かった。

日本の自動車メーカーは海外に車を輸出する際、現地の物価に合わせて売れるようにするため、安い部品に取り替えたり、一部の部品を取り付けずに出荷する。要するに輸出仕様の低コスト車である。海外で暮らしている人たちは「自分の国で売られている日本車は品質の悪い製品である」ことを知っていて、だから「現地仕様の新車の日本車」よりも「日本で売っていた高級仕様の中古の日本車」を買うらしい。

ところが、著者医が2004年にバングラデシュに訪れたとき、バングラデシュでは日本車の存在感が薄れ、ヒュンダイを多く見かけるようになった。

「日本人が海外向けに作る車は手抜きのものばかりだ。それなら韓国製の車を買った方がマシだ」

と考えるバングラデシュ人がいるんですとさ。


ま、8年も前の話なので、今もこうなのかは分かりませんが。

7点/10点満点

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2012/02/11

須貝信一「インド財閥のすべて」感想。
いわゆる新書。2012年02月06日読了。

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インド財閥のすべて―躍進するインド経済の原動力

◆前振り

2006年にツアー(に一人参加)でケニア旅行した際、走っている大型トラックの多くがタタ社製で、同じく一人参加だった田村さん(産廃会社の社長さん)が「アフリカはタタが強いんだ、どこに行ってもタタを見る」と言っていた。それまでインドの車なんてアンバサダーしか知らなかったが、帰国してから調べるとタタ・モータース(オフィシャルサイトはこちら)という会社はかなり大きいことが分かったのですよ。

当時、香港株やタイ株やロシア株の現物取引をやるくらい株にトチ狂っていたので、インドの現物にも手を出さないとなあ、と思いインドについて調べていたりした。タタも有望そうだし、インフォシスとかICICI銀行とか巨大企業がわんさかあるじゃないですか。とはいえ結果的にはリーマンショックでインド株に魅力が無くなったし、自分の資産も涙目になってしまったのでインド株の現物を買う機会はなかったが、インド市場はやっぱり有望だよな、自分の目で確かめてこなくちゃ、と世界一周の最後にインドに行ったらテロに巻き込まれました。

そんなことがありながらもインドで商売でもしようかなと調査をしていると、カースト制度が鬼のように蔓延っていて、例えば掃除は掃除専門のカーストがやるべき仕事で、経理やウェイターに「ちょっとその辺汚いから掃除しといて」なんてことを頼もうものなら、激怒されたり会社を辞められたり徒党を組んで襲われたり。そんな話がやたらと聞こえてくるので、インドで起業するってのは一筋縄じゃいかないんだなあ、と実感したのです。


◆本書の感想

本屋で立ち読みしたらタタ財閥の詳しい歴史などが書かれていたので、軽い気持ちで本書を買った。ところがどっこい、最近ありがちなライト新書じゃなくて、昔ながらの真面目で堅い新書だった。

曰く、インドの財閥の歴史は、イギリスが作った東インド会社およびイギリス人のアヘン取引に端を発し、東インド会社が徐々に撤退をはじめる頃(1800年代半ば)、デリー近郊が発祥の地となるマルワリ商人、カラチ近郊が発祥の地となるグジャラーティ商人、ボンベイ近郊が発祥の地となるパルシー商人という勢力が出来上がり、それぞれの商人グループはそれぞれに得意分野を持ち……という東インド会社の盛衰とインドの歴史とインド財閥のつながりだけで第1章丸々70ページ以上割いて説明している。

第2章以降は現代インドの3大財閥についての詳細であり、

タタ財閥はパルシー商人、創業者はジャムセトジー・ナッセルワンジー・タタ(1839-1904)うんたらかんたら、

ビルラ財閥はマルワリ商人、現在は財閥継承の際のいざこざで6つのビルラ財閥があり、主系統はアディティヤ・ビルラ財閥であり、ジャイマル・ビルラという人物が系図上確認できる最初の人物である、うんたらかんたら、

リライアンス財閥はグジャラーティ商人、ディルバイ・ヒラチャンド・アンバニ(1932-2002)が1949年に16歳で英領イエメンのアデンに渡りフランス系の商社で働き、1954年22歳で帰国し結婚し再びアデンに渡り、1958年に帰国しボンベイで商売をはじめたのが始まりである、リライアンス財閥は新興財閥でありながら2010年度の売上高は580億ドルの巨大企業である、うんたらかんたら。


第5章で、3大財閥には敵わないけどそれなりの巨大さを誇っている、TVS、アヴァンサ、エッサール、オベロイ、キルロスカ、ゴエンカ、ゴトレジ、ジンダル、バジャージ、ヒーロー、マヒンドラ、UB、ライバル、DCMシュリラム財閥についても記述がある。

ミタル・スティールのラクシュミー・ミタルは出てこない。財閥じゃないんですね。


何はともあれ、インドの歴史とインドの財閥について、入門書としては大変よろしいのではないかと思うのです。

系譜の説明=人物名が凄まじく多く登場するため、途中でゲップが出てきますけど。

7点/10点満点


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2012/02/06

木村元彦「オシムの言葉」感想。
ノンフィクション。2012年02月04日読了。

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オシムの言葉

◆内容(amazonより)
05年ジェフ市原を優勝に導き、06年より07年11月に病に倒れるまでサッカー日本代表監督を務めたイビツァ・オシム氏。数々の名言の背景にあるものとは?

◆感想
旧ユーゴ、サラエボ(現在のボスニア)で生まれたオシムは数学者になれるほど勉強ができたのに、サッカーの道へと進んだ。そして旧ユーゴの代表監督になった。その最中にユーゴの分裂が始まり、遠征に出ている間にサラエボは戦渦に巻き込まれ、妻とは2年半も会えなかった。

元サッカー日本代表監督オシムがそんな経歴の持ち主だなんて、ちっとも知りませんでした。

本書の著者木村元彦のユーゴスラビアサッカー三部作の完結編である本書。オシムっつーのは優れた監督だったんですね。

三部作の前2冊、「誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡」「悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記」に負けず劣らずの秀作です。

個人的な好みで言えば「悪者見参」がナンバーワンですが、世間一般的には本書「オシムの言葉」の評判が高いみたいです(amazonレビュー)


7点/10点満点


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2012/02/05

井田徹治「データで検証 地球の資源」感想。
ブルーバックス。2012年01月30日読了。

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データで検証 地球の資源―未来はほんとうに大丈夫なのか?


本屋で立ち読みして面白かったので買ったしまいましたが……1092円もする。最近のブルーバックスは高いなあ。


本書の内容はタイトル通りで、

1章 原子力
2章 化石エネルギー(石油や石炭)
3章 再生可能エネルギー
4章 レアメタル
5章 食料
6章 水産物(魚など)
7章 森(森林資源)
8章 水

に関して、これらの資源はいま現在どのような状況にあるのかを、データを下に検証している。

こんなことが載っている。

BP(イギリスの石油会社)のデータに基づく天然ガスの現状は、「確認埋蔵量」を「2010年の消費量」で割った数値が約59年となり、つまり59年後には天然ガスはなくなる。(p66)

プラスチックは石油から作られるが、石油の90~95%は輸送用燃料として使われており、発電に使われるのは数%、プラスチックの原料となるのは1%程度。(p86) ※天野才蔵注:石油を使った発電は世界的に規制されていて、発電は石炭や天然ガスを使うことが多い。

熱を電気に変換する素子に使われるテルルという物質は、銅鉱を精製する際の副産物としてしか産出されない。(p158)

農作物を作るのに欠かせない窒素肥料。地下に浸透した窒素が微生物の働きで硝酸となり地下水中に蓄積され、その汚染(硝酸汚染)が飲料として適さないレベルに達しているところもある。(p181)

一般的に気温が1度上昇すると、穀物の収量は10%低下すると言われている。(p195)


などなど、興味深い話が多数載っている。

「データで検証」のデータに?となる部分もあるが(下記)、一つのデータが変だからと言って全てが間違っているわけではないので、概ね信用しても良いんじゃないだろうか。


なかなか興味深く読める一冊でした。

データに基づいているので、自称ジャーナリストみたいな連中がギャーギャー騒いでいるだけの感情論的な本やネット記事読むよりは為になります。(例えば、中国人が日本の森林を買ったら「水を強奪する気だ!」とか言うようなの→どうやって日本から水を運ぶんだよ、ちょっとは考えろバカ。)


7点/10点満点


データの変なところの例:レアメタルの章で、p159の図タンタルの生産国トップ3がオーストラリア58%、ブラジル20%、モザンビーク6%となっている。しかしp160の図タンタルの存在量トップ2ではオーストラリア93%、ブラジル7%(2カ国のみ)となっている。オーストラリアとブラジルにしか存在しない鉱物を、なんでモザンビークで生産してるの? &タンタルはザイールコンゴでも採れるはずなので、モザンビークの生産はコンゴのタンタルじゃないの? とか。

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