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2012/05/01

スコット・カーニー/二宮千寿子訳「レッドマーケット 人体部品産業の真実」感想。
臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。

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レッドマーケット―人体部品産業の真実

ここ数年、製薬業界の実態や臓器売買に絡む本をそこそこ読んでいる(※)。2006年に、何かの書評(何かは忘れた)で取り上げられていたマーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」を読み、この本はアメリカの製薬業界の闇を露わにした本で、それどころか製薬業界だけではなく医者の世界もかなりどろどろしていることが書かれていて、以降、内戦とか紛争のルポ本ばかり読むのではなく、医療製薬業界の本もいろいろ読もうと思っているうちに、臓器売買のルポ系に興味の対象が移ってしまったのだ。

◆内容(紀伊國屋Bookwebより)
インド……経済的成長著しいこの国の、混沌とした片田舎で繰り広げられる骨泥棒。しかしそれは、骨だけではなかった。靱帯や角膜、心臓、肝臓、腎臓などの臓器、血液、さらには人間本体までが日々売りに出され、買い取られている。
インドだけではない。中国、ヨーロッパ、アフリカ……世界中で取引される人間の部品(パーツマーケット)の実態とは?
気鋭のジャーナリストが暴く、その驚くべき真実に迫る。

◆著者(紀伊國屋Bookwebより)
カーニー,スコット[カーニー,スコット][Carney,Scott]
調査報道を専門とするアメリカ人ジャーナリスト。インドにのべ10年滞在した経験を持ち、「ワイアード」「マザー・ジョーンズ」「フォーリン・ポリシー」などに寄稿する他、BBC、CBC、「ナショナルジオグラフィック」などのテレビ番組やラジオ番組のレポーターも務める。子供の拉致、売買を扱った報道では、2010年にジャーナリズムにおける倫理賞(The Payne Awards for Ethics in Journalism)を受賞


◆感想

本書は、大学院で人類学を学び教職に就いたアメリカ人の著者が、

12人の学生を引率してインドに連れて行き、そのうち一人が死んだ。引率者として死んだ学生の遺体をアメリカに送り返すまでに、「遺体を引き取る権利は遺族のものとは限らない」と言う現実をたたきつけられた。そこから著者は、臓器だけではない、人体組織の売買に関する現実について理解し始め、調査した結果をまとめたのが本書である。

本書に記されていることの一部を記すと、

・ヒト成長ホルモンを製造するため、イギリスでは人間の死体から脳下垂体を盗む例が10万件を超える。つまり、ヒト成長ホルモンは人間の死体の脳下垂体から抽出される(一昔前までの話)

・髪の毛は、溶かしてアミノ酸にして、パンを発酵させる発酵剤になる(だから髪の毛はカツラやエクステ以外にも需要がある)

・インドや中国やサモアやザンビアやグアテマラやルーマニアや韓国の孤児は孤児院に入り、施設に入って間もない子供はアメリカやヨーロッパ諸国に養子として輸出される。孤児院には手数料が入る。

・アメリカでインドでも売血は合法だった。売られる血の品質が悪かったので、売血は禁止され、献血(無償提供)が中心になったが、インドでは未だに献血(というか血を抜かれること)に抵抗感を示す人が多く、惨めそうな男を誘拐して、監禁して、監視して、一年中誘拐してきた奴から血を抜き取る集団がいる。

・土葬されたばかりの墓から死体を盗んできて、死体を網でくるみ、おもりをつけて川に沈める。1週間もするとバクテリアと魚のおかげで骨はばらけ、肉片もどろどろになる。骨をこすったあと、苛性ソーダ水を入れた大釜で煮立てると、骨から肉片は無くなり、残った骨をキレイに磨けば(漂泊すれば)、世界中の医科大学に置いてある人骨標本の出来上がり。

スマトラ島沖地震 (2004年)で発生した津波は、インドやスリランカも襲った。津波に襲われたインド、タミルナードゥ州の村人は、「ツナミ・ナガール」という難民キャンプで被災生活をしていた。インド政府はろくな支援をしてくれない。村人の生活は困窮を極めた。そして、難民キャンプには腎臓売買を持ちかけるブローカーが跋扈するようになった。村人の多くが、腎臓を売った。

・イランでは、中央省庁の規制に従っている限り、臓器売買は合法である!

・キプロスは卵子売買が合法であり、ヨーロッパ諸国(卵子売買禁止の国が多い)の貧しい女性は、キプロスに来て卵子を売っている。卵子ドナー(売っている女性)の学歴が良ければ、取引価格は上がる。SAT(全米大学進学適性試験)スコアが100点上がる毎に、卵子の価格は2350ドル上昇する。

この他にも政府がほぼ公認している状態にあるインドの代理母の話、新薬の治験(実験台)プロフェッショナルの話、プロがいると治験の意味が薄れるので、インフォームドコンセント無しでインドや中国で新薬治験している話、

何かもう、てんこ盛り。


個人的には、医科大学の人骨標本が、(主にインドで)墓泥棒が土葬されたばかりの死体を盗んで加工して作られ、それが全世界にばらまかれている話には、かなり驚いた。

あと、髪の毛がパンの発酵剤になるのも(うげぇぇぇ)。ちなみに髪の毛のケラチンがLシスチンというアミノ酸になるらしい。


著者は延べ10年インドに住んでいたらしい。その関係もあり、紹介されている事例にはインドの例が多い。しかし、インドだけの実態ルポではない。

ある程度この手の知識を持っている私でも、本書に書かれていることはかなり衝撃的だった。

良書である。


9点/10点満点


※本書111ページに、アメリカの国連代表デイビッド・マータスと、カナダの元国会議員デイビッド・キルゴアによる論文「血塗られた収穫 中国における法輪功信者に対する臓器採取の報告」が紹介されていて、読んでみたくなったが原題が分からない。で、検索したら、
「戦慄の臓器狩り
中国における法輪功学習者を対象とした
「臓器狩り」調査報告書改訂版」

というのが引っかかった。リンクはPDFファイルです。


※ここ数年に読んだ製薬・臓器移植・臓器売買・医療関係の本
・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」生命倫理の書。2012年03月29日読了。8点

・広野伊佐美「幼児売買-マフィアに侵略された日本」ルポ。2011年09月10日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・粟屋剛「人体部品ビジネス」ルポ兼思想書。2011年09月06日読了。8点

・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。7点

・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」ルポ?哲学?2011年08月23日読了。8点

・岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」エッセイ。2011年07月17日読了。6点

・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点

・一橋文哉「ドナービジネス」ノンフィクション……?2011年02月16日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点

・城山英巳「中国臓器市場」ルポ。2011年01月24日読了。6点

・青山淳平「腎臓移植最前線」ノンフィクション。2010年10月17日読了。8点

・木村良一「臓器漂流」ルポ。2010年09月09日読了。4点

・佐藤健太郎「医薬品クライシス」いわゆる新書。2010年04月29日読了。7点

・里見清一「偽善の医療」エッセイ。2009年06月10日読了。8点

・小松秀樹「医療崩壊」医療ドキュメント。2007年06月22日読了。8点

・マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」製薬業界告発ドキュメンタリー。2006年09月04日読了。8点

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