« 船戸与一「雷の波濤 満州国演義7」感想。
歴史冒険小説。2012年07月17日読了。
| トップページ | 放射能 »

2012/08/07

ニコラス・シャクソン/藤井清美訳「タックスヘイブンの闇」感想。
経済書。2012年07月2日読了。

にほんブログ村 本ブログへブログランキングに参加しております。
バナーをちょこっと押していただけると恐悦至極なり。

タックスヘイブンの闇―世界の富は盗まれている!

マフィアが闇で稼いだ資金を、タックスヘイブンに隠している。

大金持ちが税金をのがれるため、タックスヘイブンに住居を移している。

アップルやGoogleやマイクロソフトやGEやトヨタやサムスンは、タックスヘイブンを迂回して利益を見えなくして法人税をまともに払っていない。

と言うことをニュースや雑誌記事などで目にすることがある。

タックスヘイブンとはケイマン諸島のような税金がかからない国のことを指し、要するに合法的節税をしているんだろう。

私はタックスヘイブンについて、その程度の知識しか持ち合わせていなかった。

本屋で本書「タックスヘイブンの闇」の数ページを立ち読みしたとき、かなりの手応えを感じ、いったん帰宅してamazonレビューを見たら評価が高かったので買ってみた(値段も高かったけど)。


◆プロローグ
まずここで度肝を抜かれる。

1994年に発覚した、フランスのエルフ事件について書かれている。

フランスの元植民地で、現在は独立しているアフリカの小国ガボン。

ガボンのオマール・ボンゴは、1967年に33歳の若さで2代目大統領に就任してから、2009年に死去するまで実に41年以上にわたってガボンを支配してきた。

ボンゴは若い大統領だったが故、フランスの後ろ盾(=フランス軍の駐留)を必要としていた。

ボンゴは、ガボンに眠る石油など天然資源の採掘権をフランスの国営企業エルフに売った。

エルフ社からガボンに金が入る。
その金はボンゴにも入る。
その金は秘密裏にプールされ、金の出所がたぐられないようあちこち迂回させながら、フランスの右派政党の資金源になる。
その資金源は、ミッテラン元フランス大統領(の政党)も利用していた。

ちなみに第3代ガボン大統領は、オマール・ボンゴの息子のアリ・ボンゴである。


◆バナナ会社は儲けているのか?

世界3大バナナ会社、デルモンテ、ドール、チキータは、2006年にイギリスで7億5000万ドル(当時レートで900億円くらいか)の売上を記録したが、払った税金は3社合わせて23万5000ドル(同じく当時レートで3000万円くらいか)だった。

バナナ会社は多国籍企業である。熱帯地域でバナナプランテーションを経営し、収穫したバナナを船で運び、世界各所で売る。

実態はこれだけなのだが、会計上は複雑だ。

会社がアメリカにあり、ホンジュラスでバナナを獲り、イギリスで売る場合でも、
イギリスのスーパーマーケットに売っているのはケイマン諸島にあるバナナ会社の販売子会社で、
輸送子会社はマン島にあり、
経営部門はジャージー島に、
金融部門はルクセンブルクに、
保険子会社はバミューダにあるかも知れない。

この場合、どこの国に法人税を払うのが妥当なのだろうか?

数字を出してみよう。

ホンジュラスのバナナ生産子会社がバナナを収穫した。
ルクセンブルクの金融子会社が、ホンジュラスの生産子会社に運転資金2000万ドルを貸し出した。
ホンジュラスの生産子会社は、借りた2000万ドルの利子をルクセンブルクの金融子会社に払う。従ってホンジュラスでは利益が出ない。

ルクセンブルクの法人税は極めて安い。

ホンジュラスに入るべき法人税が、ルクセンブルクに移動してしまった(しかも税率は安い)。


手口は他にもある。

ホンジュラスの生産子会社で使う日用品は、本社購買部門から一括購入すればよい。トイレットペーパーを4000ドルで買って、経費で落とせばいいのだ。


しかしこれは(程度の問題はあるにせよ)いずれも合法的であり、普通オフショア取引といわれる手法だ。


◆タックスヘイブンとは

本書によると、タックスヘイブン=租税回避地は、世界でおおよそ4つのグループに分けられる。

1つめはヨーロッパ。ルクセンブルクやスイスやオランダやリヒテンシュタインやバチカン市国など。

2つめはイギリス・ロンドンに存在する「シティ」と呼ばれるグループ。イギリス連邦加盟国とイギリス準州。ケイマン諸島やジャージー島、ガーンジー島、バミューダ、香港、シンガポール、ドバイ、アイルランド……

3つめはアメリカを中心とするグループ。マフィアがカジノで儲けた金を隠すために作り上げたバハマ、パナマなどのカリブ海ネットワークと、ワイオミング州とデラウェア州。

4つめはウルグアイやソマリアなど、これからタックスヘイブンに名乗りを上げようとしている途上国。但し、今はまだそれほど成功していない。


本書では1~3の国々が、どのような経緯でタックスヘイブン化し、どのような経緯で歯止めがきかなくなってきているのかを、綿密な取材で明らかにしている。


◆感想

経済の仕組みは一見するととても複雑に見えるが、基本的に足し算、引き算そして掛け算が中心で、世界中で引き算(控除)の方法が異なったり、掛け算(税率)の方法が異なったりしているだけである。

タックスヘイブンはそれら経済の仕組みに加え、会社法や守秘義務(マネーロンダリングの際に金主がばれない)の扱い方などが各国で異なるため、それらをどのように組み合わせると最も税金を払わなくてよくなるか、これを世界中の会計士が世界中の法律と引き算掛け算をにらめっこしながら、日々新しい手口を考え出しているということであり、まあそういう意味ではとても複雑だ。


本書にポストイットを貼り付けたのは30箇所以上にのぼり、私の力量ではそれら全てを要約するなどとても出来ないが、さわりだけでも感じて貰えれば幸いである。


良書である。


8点/10点満点


|

« 船戸与一「雷の波濤 満州国演義7」感想。
歴史冒険小説。2012年07月17日読了。
| トップページ | 放射能 »

◇ビジネス書」カテゴリの記事

●海外作品(原著英語)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/43036/55373323

この記事へのトラックバック一覧です: ニコラス・シャクソン/藤井清美訳「タックスヘイブンの闇」感想。
経済書。2012年07月2日読了。
:

« 船戸与一「雷の波濤 満州国演義7」感想。
歴史冒険小説。2012年07月17日読了。
| トップページ | 放射能 »