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2012/08/30

アンドリュー・キンブレル/福岡伸一訳「すばらしい人間部品産業」感想。
啓蒙書。2012年08月24日読了。

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すばらしい人間部品産業


臓器売買に興味があり、関連する書籍をいろいろと読んでいるのです。

ただ、臓器売買そのものをテーマにしたルポ本というのは意外に少なく、紀伊國屋bookWebとamazonの検索で引っかかるものは片っ端から読んでいるけど、その結果が文末に載せている臓器関連の読了リスト程度なのです。

本書「すばらしい人間部品産業」は、紀伊國屋bookWebとamazonで「臓器」で検索すると出てくる書籍で、臓器売買がテーマではないのだが、内容が興味深かったので買ってみた。


◆本書の内容(紀伊國屋bookWebより)
血液、臓器から胎児、遺伝子、はては新種生物やクローン人間までもが効率的に生産され、市場で売買される時代。
その萌芽はすでに半世紀前から始まっていた…人間部品産業のリアルな実態を警告した歴史的名著に、新エピソードを加筆した改訂&決定版。

1 人体と部品のあいだ(血は商品か;臓器移植ビジネス ほか)
2 赤ちゃん製造工場(赤子産業;生命の種 ほか)
3 遺伝子ビジネス(遺伝子をデザインする;他人に差をつける薬 ほか)
4 人間部品産業との闘い(移動機械と神の見えざる手;機械論的な「からだ」 ほか)
「私の問題意識はこの本から始まった」 福岡伸一

★臓器や組織の効率的な売買のために、胎児の生体解剖が行われている?
★凍結されたままの胚(受精卵)に、人権や遺産相続権はあるのか?
★ある調査で、「生まれる子供が肥満体とわかれば中絶したい」と答えた人が11%
★ヒトの遺伝子をもつように改良された「動物」に次々と特許が与えられる
★「背が高くなるように」と、毎日ヒト成長ホルモンを注射する少年
★クローン技術によって生まれた生物には、なぜ「異常体」が多いのか?
福岡ハカセの“原点”が名訳とともに甦る。

人間は「人間部品の商品化」に答えを出せるのだろうか?


◆感想

本書の趣旨としては、人体の一部を売買することは果たしてどこまで許されるのか、ということを哲学的に問うもので、ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」(2011年08月23日読了。8点)に近い内容である。

大見出しでPart1~4まであるのだが、Part4は哲学であり、少々読みづらく感じる(というか飽きる)部分もあったが、私が知らなかった話も多数掲載されており、参考になる部分が多々あった。

ムーアの脾臓に関する裁判沙汰(ムーアは脾臓切除手術を受けた。医者達はムーアの脾臓に特殊なT細胞が含まれていることを突き止め、製薬化した。ムーアは「俺の脾臓から作った薬なんだから俺にも分け前よこせ」と裁判した)などは「ボディショッピング」でも取り上げており、そのほかにも幾つかネタが被っているな、と感じた。

奥付を見ると「ボディショッピング」の原著が2008年、本書の原著は1995年+1997年増補+2010年頃に更に増補改訂されているみたいで、要するにこの手の本の源流は本書「すばらしい人間部品産業」なのだな、ということが分かった。


とはいえ。
増補改訂があったとはいえ1995年に出た本を、今さら高い金出して読むのは何か悔しい。


愚痴はさておき。


本書のPart1が、私が一番知りたい臓器売買の話である。


売血の話で、ニカラグアの独裁大統領アナスタシオ・ソモサ・デバイレ(これの父アナスタシオ・ソモサ・ガルシアもニカラグアの大統領で、つまりニカラグアはソモサ家に独裁されていたっぽい)は、1973年にキューバからの亡命医者とともに、血液買取センターを開設。買った血液の2/3はアメリカやヨーロッパに輸出していて、血の品質は問わず、ウィルスに汚染されていたってお構いなしで売りまくり、とにかく血を仕入れては売りまくっていた。売血しすぎた献血者が病気になろうと死のうとほったらかし。医者の倫理は欠片もなく、ただ単に売血ビジネスを行っていた。

この実態を新聞記者チャモロ(新聞社社主かも)が告発して、国際赤十字や国際的医学組織がチャモロ支持に回ると、1978年ソモサはチャモロを暗殺。これに怒った市民がソモサを追い詰め、ソモサはチャモロ暗殺の8ヶ月後、最終的にパラグアイに逃げる。

キューバ人医師はアメリカに逃げ、マイアミでまた同じ売血センターを開設しようと画策する。

暗殺された新聞記者チャモロの妻ビオレタは、10年後にニカラグア大統領に選ばれ、1990年~1997年まで大統領を務めた。

ニカラグアと言えばオルテガ将軍しか知らなかったけど、さすがキューバ危機とかで東西冷戦の嵐に巻き込まれた中南米、激動の歴史を送っているのだな。


本書でもっとも衝撃を受けたのは、P55に掲載されている「モンテデオーカ精神衛生研究所」事件である。


アルゼンチン、ブエノスアイレス近くの州立病院「モンテデオーカ精神衛生研究所」では、患者を殺した後、患者の血や角膜、その多臓器を取り出して売っていた。患者の家族には、患者は脱走したとか死んだなどと伝えていたという。同研究所では、1976年~1991年までに何と1400人以上が脱走し、ほぼ同数が死亡したことにしていた。家族からの訴えでこの研究所は捜査され、脱走したとされる何人かの遺体を収容した。中には眼球が摘出された16歳の少年が含まれていた。病院長および11人の関係者が逮捕された。


そんなに昔の話ではなく、20年前まで行われていた事件である。病院が組織だって患者を殺し、臓器を密売するのである。

逆に言えば、それだけ臓器を買う連中が居て、殺人を犯してまで臓器をぶんどろうとすることに罪悪感が無くなってしまうほど魅力的な高収入が得られた、ということだろう。


Part2は赤ちゃん製造工場と見出しがつき、産み分けに関する倫理、そこから発展して人工授精や、代理母に踏み込んでいる。

この章では幾つか踏み込んだ例が出ている。特に親権については考えさせられる。

・正常な妻と、精子に異常がある夫のカップルが、第三者の男性の精子と妻の卵子を人工授精させ、妻に着床させ、妻が出産した場合、精子提供者は父親となり得るか?(遺伝的には精子提供者が父である)

・卵子を作れない病気の妻(ただし子宮は正常)と、正常な夫のカップルが、第三者の女性の卵子と夫の精子を人工授精させ、妻に着床させ、妻が出産した場合、卵子提供者は母親となり得るか?(遺伝的には卵子提供者が母である)

・正常に卵子を作れる妻(但し子宮に病気があり出産できない)と、正常な夫のカップルが、妻の卵子と夫の精子を人工授精させ、代理母を雇って代理母に着床させ、代理母が出産した場合、代理母は母親となり得るか?(代理母が産んだ子に、代理母の遺伝子は入っていない)

・正常な妻と正常な夫のカップルが、自分の遺伝子を引き継いだときに起きる子供の健康、能力を憂慮し、優秀な遺伝子(例えば頭が良い)を持つ第三者の卵子と、優秀な遺伝子を持つ(例えば身長が高くハンサム)第三者の精子を人工授精させ、妻に着床させ、妻が出産した場合、その子供はカップルの子供と言えるのか?(この子供にカップルの遺伝子は一欠片も入っていない)

・胎児の段階で深刻な病気(ダウン症など)だと判明した場合、中絶することは許されるべきなのか否か。つまりこれは、人間は、どの段階から人間たり得るのか、という倫理・哲学になる。

受精したばかりの卵子は人間か?

脳が出来る前の、妊娠3ヶ月くらいの胎児は人間か?

例えば、妊娠20~24週を堺に人間と定義するならば、妊娠24週目に中絶した場合殺人罪に問われることにならないか?

胎児と人間は、どこから人間と線引きすべきなのか?


そのようなことや、その他いろんなことが書かれている。


難しいと言うより、似たような異なる話が多数出てくるので、読んでいて若干飽きる。飽きるのは私の個人的な感想であるが。


訳文もかなり読みやすく、この手の問題に関心がある人は、読んで損のない一冊と言えよう。

ただ、元もと1997年に出た本の増補なので、最新事例は期待しない方が良い。


8点/10点満点


※本エントリー公開後に、誤字脱字ヘンテコ文章の直しなど、ちょこちょこ修正しておりまする。


※ここ数年に読んだ製薬・臓器移植・臓器売買・医療関係の本
・メアリー・ローチ「死体はみんな生きている」死体の使い道ルポ。2012年08月01日読了。7点

・相川厚「日本の臓器移植―現役腎移植医のジハード」臓器移植の現実。2012年05月28日読了。9点

・スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点

・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」生命倫理の書。2012年03月29日読了。8点

・広野伊佐美「幼児売買-マフィアに侵略された日本」ルポ。2011年09月10日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・粟屋剛「人体部品ビジネス」ルポ兼思想書。2011年09月06日読了。8点

・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。7点

・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」ルポ?哲学?2011年08月23日読了。8点

・岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」エッセイ。2011年07月17日読了。6点

・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点

・一橋文哉「ドナービジネス」ノンフィクション……?2011年02月16日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点

・城山英巳「中国臓器市場」ルポ。2011年01月24日読了。6点

・青山淳平「腎臓移植最前線」ノンフィクション。2010年10月17日読了。8点

・木村良一「臓器漂流」ルポ。2010年09月09日読了。4点

・佐藤健太郎「医薬品クライシス」いわゆる新書。2010年04月29日読了。7点

・里見清一「偽善の医療」エッセイ。2009年06月10日読了。8点

・小松秀樹「医療崩壊」医療ドキュメント。2007年06月22日読了。8点

・マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」製薬業界告発ドキュメンタリー。2006年09月04日読了。8点

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2012/08/28

アクセスカウンター21万突破に感謝。

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トップに設置している忍者Toolsアクセスカウンターが21万を突破しました。
お読み下さっている皆様に感謝です。

2005年12月15日 ブログ始める
2006年11月23日 アクセス01万突破 (344日) 一日平均 29
2007年10月09日 アクセス02万突破 (321日) 一日平均 31
2008年06月21日 アクセス03万突破 (255日) 一日平均 39
2009年01月19日 アクセス04万突破 (212日) 一日平均 47
2009年05月28日 アクセス05万突破 (129日) 一日平均 77
2009年09月06日 アクセス06万突破 (101日) 一日平均 99→11月に世界一周開始
2010年01月06日 アクセス07万突破 (122日) 一日平均 82
2010年02月22日 アクセス08万突破 ( 47日) 一日平均212
2010年04月27日 アクセス09万突破 ( 65日) 一日平均154→5月末に世界一周終了
2010年07月01日 アクセス10万突破 ( 65日) 一日平均154
2010年09月02日 アクセス11万突破 ( 62日) 一日平均161
2010年11月21日 アクセス12万突破 ( 80日) 一日平均125
2011年02月01日 アクセス13万突破 ( 72日) 一日平均139
2011年04月26日 アクセス14万突破 ( 86日) 一日平均116
2011年07月08日 アクセス15万突破 ( 73日) 一日平均137
2011年09月07日 アクセス16万突破 ( 60日) 一日平均167→フィリピン留学記
2011年11月25日 アクセス17万突破 ( 80日) 一日平均125
2012年01月30日 アクセス18万突破 ( 66日) 一日平均152
2012年04月23日 アクセス19万突破 ( 83日) 一日平均120
2012年06月24日 アクセス20万突破 ( 62日) 一日平均161
2012年08月28日 アクセス21万突破 ( 65日) 一日平均154

※合計2448日で21万アクセス突破です。通算平均で一日85.8アクセスです。

※読書感想文を書いているブログなのに、この2ヶ月で11冊しか本を読んでいないのですが(感想未掲載3冊ありますので実際に読んだのは14冊です)、掲載している読書感想文の量が多くなり、検索でヒットする確率が上がったので、多くの方に読まれているのだと思います。

※相変わらず、某ジャーナリストに失望した記事だけが、激しいアクセス数を記録しています。

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2012/08/23

東郷和彦「北方領土交渉秘録―失われた五度の機会」感想。
外務省元官僚の暴露。2012年08月13日読了。

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北方領土交渉秘録―失われた五度の機会

何でこの本を買ったんだったかなー。
既に文庫版も出ているのに、単行本で持っているんだよなー。

◆著者について
本書の著者 東郷和彦(とうごう かずひこ、1945年(昭和20年)1月10日 - )は、日本の元外交官。

京都産業大学法学部教授(専門は国際関係論)、ライデン大学人文科学博士。

第二次世界大戦終戦時に外務大臣を務めた元外交官の東郷茂徳(開戦時の外務大臣だったためA級戦犯)は祖父。元外交官の東郷文彦は父、元ワシントンポスト記者の東郷茂彦は双子の兄。

とここまでwikipediaから引用。


本書によると、鈴木宗男と田中真紀子がドンパチ始めて、鈴木宗男が逮捕されるにいたって(ついでに佐藤優も逮捕されて)、外務省でソ連・東欧担当だった著者もこのドンパチに巻き込まれて退官を迫られ、抵抗するもやむなく外務省を辞職。とのこと。


◆本書について
ソ連・東欧担当の外交官だった著者は、若い外交官時代に失態なく勤務し、ソ連課長、欧亜局長、などを勤め、オランダ大使を最後に退官。

ソ連と深く関わり合っていた17年間で知り得た北方領土交渉の過程を、元外交官として国家守秘義務に違反しない程度に(と言っても読む者にはかなり踏み込んだところまで書いているなと思わせる内容になっている)、北方領土が戻ってくるチャンスは5回もあったのに、

ソ連側のサインを政治家が見落とした、
日本の政局で北方領土問題が後回しになった、
国内世論が4島一括返還に傾きすぎてソ連がそっぽを向いた、

等々の理由で、結局未だ何の進展もしていないことを、事実関係を中心に淡々と書いている本である。もちろんソ連担当だった著者が在官時代に北方領土交渉が進展しなかったことに対する感想(悔恨)も多々書かれているが。


◆感想
本書は全14章で構成されていて、最初は鈴木宗男vs田中真紀子のドンパチに巻き込まれ外務省を辞める羽目に陥った著者の不遇など、感情が全面に押し出た描写もあり、先を期待しながら読んでいったのだが、第3章あたりからなぜ北方領土交渉がこのような事態になってしまったのか、その事実を年代順に淡々と書くようになってきて、「ここまで細かいことまで書かなくてもいいだろうに」と思えるくらい細かなことまで書き出していて、はっきり言えば途中で飽きてきた。

とはいえ、北方領土交渉がなぜ今こんな事態になっているのかその経緯を知るには、このくらい詳しい方が良いのかも知れない。


失われた五度の機会の概略は、

1) 1985年にゴルバチョフがソ連共産党書記長に就任したとき。(1987年7月に、著者東郷氏はソ連課長に就任する)

2) 1991年秋以降のソ連崩壊、そしてゴルバチョフ訪日。

3) 1992年のエリツィン大統領訪日の頃。しかし訪日延期。

4) 1997年~1999年にかけて、エリツィン大統領辞任直前の頃。

5) 2000年9月、プーチン大統領訪日の頃。


本書に興味を持たれた方は、佐藤優の解説を立ち読みされると良い。上記五度の機会についての解説が詳しく載っている。

さらに解説だけで20ページ以上もあり、本書で何が書かれているのか、何が書かれていないのかが分かる。(書かれていないことは外交機密で書けなかったのかも知れない)

その解説によると、外交政策策定で最も重要な役割を果たすのは外務省の課長とのこと。事務次官、外務審議官、局長が幾らトップダウンで政策を遂行しようとしても課長が首を横に振れば、(課長より上の役職は)実務の手駒がいなく、また情報も課単位で管理されているので、生の情報が得られないのだとか。


私は、北方領土に住んでいるロシア人の処遇をどうするのか決めないまま北方領土だけ返してもらっても、後で禍根が残るんじゃないのかなあ、と考えています(受け売りですけど)。


数千人のロシア人が住んでいる北方領土と、人が住めない竹島を同列に考えちゃ駄目だと思うのです。


7点/10点満点


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2012/08/22

JALマイレージ(備忘録)

JALマイレージバンクのWebサイトを見たら、

今年の年末で、18,945マイルが期限を迎える。

全体としては114,000マイルあるので、失効しても大きな痛手ではないのだが、

商品券か何かに取り替えれば大した問題じゃないのだが、

石垣島に行って帰ってこれるマイル数なので、

9月に石垣に行こう、ついでに波照間島か与那国島に行こう、

と今、決めた。


無職なのに……

(追記)
マイレージの無料チケットじゃ石垣→与那国は飛ばないみたいだなあ。国内旅行は宿代が高いからなあ。

成田→マニラは往復19,000マイル(+燃油17,000円)だよ。

JALチャーター便で行く成田→パラオは40,000マイル(+燃油17,000円)だよ。

香港ドラゴン航空を使って、成田→香港→ネパール・カトマンズに行っちゃおうかなあ。


今年初めての旅行。

自分の財政状況も省みない無謀な行動。

でも、わくわく。

旅ですぜ、旅。今週中に決めよかな。

わくわく。

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2012/08/21

吉村昭「高熱隧道」感想。
実話ベースの小説。2012年08月03日読了。

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高熱隧道 (改版)

2006年のゴールデンウィーク、奥多摩の三頭山へ登山をしに行き、偶然バスが一緒になった爺さん(70歳と言っていたような・四街道から来たのだとか)と知り合った。単独登山を好み、70歳過ぎて年10回は登山しているスーパー爺さん。しかも70歳にして冬山2泊3日単独行をするという、すごい爺さんだった。結局一緒に三頭山の頂上まで登った。

その爺さんが薦めてくれた本が、本書「高熱隧道」

で、2006年の夏にケニア旅行に行き、そのときこの本を持っていったけど、結局読まず。
2009年~2010年の世界一周旅行にも持っていったけど、結局読まず。

2012年、法政大学の夏期スクーリング「地図学演習」で、担当教官(民間の測量会社社員)が「この本は面白いよ!」と薦めていて、購入してから苦節(?)6年、ようやく読むのである。吉村昭を読むのは実に久しぶり。

黒部ダムの建設で、

トンネルを掘っている最中に、

温泉の発生地帯にぶち当たってしまって、


トンネル内部の温度が摂氏165度(!!!!!!)


にも達したのに、ダム建設が第二次世界大戦に於けるエネルギー問題に直結していたため、作業員が死のうとどうしようとお構いなしにトンネル工事は進められました。


作業員に水をぶっかけながらダイナマイトで掘削した瓦礫を運び、でも作業員にかけた水がすぐに湯になるので作業員は20分で作業を終えることとか、高温の岩盤にダイナマイトを仕掛けると自然爆発が起きて何人も死んだとか、黒部の山は恐ろしくて泡雪崩でコンクリート造りの宿舎が数百メートル吹っ飛んだとか、そういう話満載です。


昭和11年に着工し、昭和15年に竣工した黒部第三発電所にまつわる実際の出来事をベースにしたお話しです。


登場人物は架空の人物らしいのですが、昭和初期の苛酷な工事現場の著し方が、とてつもなくリアリティ感溢れるのです。


人間的なドラマは薄いですけどね。


単純におもろかったデスヨ。


7点/10点満点


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2012/08/19

メアリー・ローチ/殿村直子訳「死体はみんな生きている」感想。
死体の使い道ルポ。2012年08月01日読了。

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死体はみんな生きている

理由はさておき、私は臓器売買に並並ならぬ関心を抱いていて、無職でヒマな毎日の合間に、関連書籍を読んでいるのです。

ヒマだから毎日もっとたくさんの本を読めるハズなんだけど、毎日のように自分の職務経歴書を書いているため、というかこれがバカにならないくらい毎日続いて、いい加減嫌になるのよ、無職は辛いね。


それはさておき。


臓器売買のルポから臓器移植そのものの現実を書いた本を何冊も読んでいくうちに、

「生きている人間の頸動脈をぶった切って、人工心肺装置みたいなので脳に血液を送り続け、そのままそいつの首をぶった切って胴体と切り離したら、果たしてその脳は生きているのか死んでいるのか? (脳には血液が行き届いているし、血液を通して必要な栄養素を送り込むことも出来る)」

という疑問が湧いた。


本書にその答えの一端が載っていて、つまり私と同じことを考える医学者は既に存在していて、


でもさすがに人体実験はできなくて、動物実験に留まっているのだけれども、2頭の犬の首のすげ替え実験を行った学者が居るのだそうな。(正確には、1頭の犬の首をぶった切り、別の犬の首に取り付け、双頭の犬に仕立て上げた)

その顛末は本書の第9章「頭だけ」に載っている。


この疑問が呈されたのは、フランス革命でギロチン刑が実施されたことに起因する。

ギロチンで首をぶった切られた犯罪者は、首を切られた直後は明らかに意識があり、しばらく経ってからようやく死ぬ、という証言があるのだ。


というような話を含め、本書は「死体」がどのように扱われているかを興味深くルポしている。

本書でルポされている一例。

故人の意思により献体された遺体数十体。

この数十体の遺体は顔面の美容整形外科のトレーニングに使われる。

トレーニングに胴体は不要なため、頭は首から切り離され、頭部(生首)だけ並んだ状態で研修室に並べられている。


献体だと知っていても、首から切断された頭部だけ数十体が並ぶ研修室に入り込む著者のルポ魂はすごい。


で、首と頭部を切り離す仕事をする医師も居るわけで、この医師はインタビューに拒否的な存在であったり。


そんなこんなで、面白い本です。


7点/10点満点

※ここ数年に読んだ製薬・臓器移植・臓器売買・医療関係の本
・相川厚「日本の臓器移植―現役腎移植医のジハード」臓器移植の現実。2012年05月28日読了。9点

・スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点

・小松美彦「脳死・臓器移植の本当の話」生命倫理の書。2012年03月29日読了。8点

・広野伊佐美「幼児売買-マフィアに侵略された日本」ルポ。2011年09月10日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・粟屋剛「人体部品ビジネス」ルポ兼思想書。2011年09月06日読了。8点

・岸本忠三・中嶋彰「現代免疫物語」講談社ブルーバックス。2011年08月29日読了。7点

・ドナ・ディケンソン「ボディショッピング 血と肉の経済」ルポ?哲学?2011年08月23日読了。8点

・岩田健太郎「「患者様」が医療を壊す」エッセイ。2011年07月17日読了。6点

・デレック・ハンフリー「安楽死の方法 ファイナル・エグジット」安楽死指南書。2011年08月06日読了。6点

・一橋文哉「ドナービジネス」ノンフィクション……?2011年02月16日読了。評価不能(内容が嘘っぽい)

・山下鈴夫「激白 臓器売買事件の深層」言い訳本。2011年01月25日読了。3点

・城山英巳「中国臓器市場」ルポ。2011年01月24日読了。6点

・青山淳平「腎臓移植最前線」ノンフィクション。2010年10月17日読了。8点

・木村良一「臓器漂流」ルポ。2010年09月09日読了。4点

・佐藤健太郎「医薬品クライシス」いわゆる新書。2010年04月29日読了。7点

・里見清一「偽善の医療」エッセイ。2009年06月10日読了。8点

・小松秀樹「医療崩壊」医療ドキュメント。2007年06月22日読了。8点

・マーシャ・エンジェル「ビッグ・ファーマ」製薬業界告発ドキュメンタリー。2006年09月04日読了。8点

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2012/08/18

世界一周旅行(もしくは長期旅行)で命の次に大事なのは写真データ。

ちなみに16GBあったら、一眼デジカメでも1,000枚以上の写真が撮れる(ラージ+RAWだと500枚くらいしか撮れんかも)。

あくまで個人的な意見だけど、世界一周旅行みたいな長期旅行の場合、命の次に大事なのが写真データだったりする。

思い出が一杯詰まっている写真データの紛失(もしくは盗難)は、悔やんでも悔やみきれない。

長期旅行中にパスポートを紛失(や盗難)すると、旅行はしばらく足止めを食ってしまうけど、親兄弟に頼んで戸籍謄本を海外に送ってもらえば、パスポートを紛失した国の日本大使館でパスポートを再発行してくれる場合もある(駄目な場合もあるらしい)。

長期旅行中にお金を紛失(や盗難)すると、金額次第では旅行が終わりになってしまうけど、悔しくてたまらないだろうけど、でもまたお金を貯めて旅行に来ればいい。

パスポートは再発行が可能だし、お金はまた貯めればいい。

でも写真データが無くなったら、そいつは二度と戻ってこない。写真データを詰め込んだパソコンを盗まれると、もうショックなんてもんじゃない。

なので私は世界一周旅行中、写真データを
・パソコンの内蔵HDD
・耐衝撃の外付けHDD
・2枚持っていった16GBのSDHCメモリーカード
の3箇所に保存し、全部別々の場所(スーツケースとリュックと手提げ)に隠していました。


オンラインストレージサービス……ねぇ。

月額費用云々よりも、写真データのアップロードがサクサク出来る国は、まだそれほど多くないってことですよ。

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2012/08/17

amazonアフィリエイト(16GBのSDHCカードが安くなったなあ)

年間に2000円くらいの収入になっているamazonアフィリエイト。

本日久しぶりに売上レポートを見たら、


16GBのSDHCメモリーカード(class10)が、

933円

なんですね。


安くなったなあ。


8/18修正と追記

2008年10月23日に買った16GBのSDHCカード(Transcendのclass6)は4300円、
世界一周旅行直前の2009年9月25日に買った16GBのSDHCカード(上海問屋のclass6)は2899円でした。


今日見たら980円だった。ちなみに↓ね。

ちなみに16GBのヨドバシドットコムでの最安値は、バッファロー製品の1970円でした。


amazonでその値段出せば、32GBのSDHCカードが買えるっちゅうねん。↓


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京極一樹「中学・高校 数学のほんとうの使い道」感想。
カス本。2012年07月27日読了。

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中学・高校数学のほんとうの使い道―ちょっとわかればこんなに役に立つ

私の現在の立場は大学生(通信教育)です。実態は46歳の無職の汗かきオヤジですが。

で、通信教育の大学には、通学必修というのがありまして、これをスクーリング必修というのですが、おおよそ年2回開催されます。真夏と真冬です。通学している現役大学生が休みの間に開催されるのです。

無職でヒマな私は、今夏もスクーリングに参加しました。(昨年の夏も参加した)

私が学んでいるのは法政大学・文学部・地理学科で、世間的なイメージでは地理学科というと理系のイメージがあるかも知れませんが、法政大学は文系扱いです。

でも、授業で地図学というのがありまして、これは要するに測量(を含めた地図学全般)を学ぶのですが、地図学というのは科学技術の発展に伴って機械の操作がどんどん簡単になっている分野で、要するに学問的にはとても古くさくなってしまい、来年からは授業そのものが無くなってしまうような状態にある学問です。

今夏のスクーリングで「地図学演習」というのがありまして、これが法政大学地理学科最後の地図学演習かと思うと感慨深くなって受講したわけです。


その地図学を受講するにあたり、三角関数の復習と、関数電卓の使い方をマスターしておけ!

という指令が下ったのです。


で、本屋に行って三角関数の初歩を思い出す本を探していたら、本書が見つかったのです。


本書の最初の10ページくらいは、三角比(三角関数の初歩の初歩)を使って、

「船で灯台目指して進んでいた。最初の測定で灯台まで(例えば北極星から)の角度を測る。数時間後、同じく灯台までにの角度を測る。進んだ距離が正確に分かれば、灯台までの距離も分かる」

これが三角比である。


これぞ!


私が求めていた本ぞ!


と思って買ったけど、

使えるのは最初の数ページのみで、

以降は

対数って何?の説明もないまま自然対数の「e」について説明したり、

二次方程式と三次方程式の違いの説明がないまま、四次方程式や五次方程式などの高次方程式は難しいと宣ったり、

微分積分より先に複素数を説明したり、

その複素数の説明(とオイラーの公式の説明)が、たった12ページだったり、

まあ、カス本

です。


買うのはやめとけ。


3点/10点満点


買うのはやめとけ。レビュー見れ。


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2012/08/14

子猫の万歳モフ

すみません、すみません、すみません、

リンクをクリックしてみて下さい萌え死にます

http://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/8/2/82f35c6e.gif


すみませんすみません

カラパイアからパクって来ましたすみません


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2012/08/11

金をかけられるライブはここまできているのか。

Perfumeが7月23日(月)に渋谷ヒカリエでやったサプライズイベント「氷結SUMMER NIGHT」のダイジェストムービー

というやつです。

ライブで3D映像を出せる時代になったんだ。


まあ、ロンドンオリンピックで3Dテレビ放送をしていないのは、OECD加盟国(蔑称:先進国クラブ)では日本とカナダくらいなので。

ロンドン五輪、日本で3D生中継が行われない理由とは?(1)

(2)以降は自分で記事を探して読んでね。


ライブで3Dイメージを合成して、

DVD(やyoutubeとか)では見ることが出来ないもしくは体験することが出来ない

未来観を出す、

金を払ってライブに来なきゃ体験できないことを体験させる、

っていうのは、iTunesが出現してからずっと言われていたことだけど、こういう実例を見ちゃうとなあ。私はただの時代に乗り遅れたオッサンになっちゃったなあ。という乗り遅れ感がきつくて。十数年テレビ業界に居たので、流行に乗り遅れるのが恐いのです、はい。


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英語のお勉強(自戒の愚痴)

自戒を込めているけれども、基本単なる自分に対する愚痴なので、普通の人々は本稿読まれないことをお薦めいたします。


昨年(2011年)7月~8月、現在在籍している法政大学(通信教育)の夏期スクーリングに出て、いろんな意味で刺激を受けて(これはどういうことかと言いますと、私は無職でヒマが有り余っているのに私より遥か真面目に勉強している人々の多さに驚愕してしまったということです)、

まあ何と言いますかやっぱり英語のひとつも喋れないといい歳こいたオッサンはろくな職にありつけないぞということでありまして、

善は急げとばかりに、昨年9月中旬、勢いでフィリピンに短期英語留学してしまったのです。

前にも書きましたが、私は世界一周旅行をしたくせに、旅行英会話以外はさっぱりダメダメで、
フィリピン留学前のTOEICスコアは360点でした。
で、留学直後にTOEIC受けたら450点になりました。


なるほど。

英語は勉強すれば(それなりに低いレベルで)伸びるのだ、ということを実感した私は、

英語の勉強方法をいろいろ試しつつ、(流行りのフィリピンの英語ぺらぺらな人達とSkypeで英会話!も試しました)

2011年11月27日(日曜)より、日曜から土曜までを区切りとして毎週8時間英単語の勉強をする!

を36週間連続で続けていたのですが、

今週、つまり今日、遂に途切れてしまいます。


先々週から大学のスクーリングに突入し、今週は月曜から今日(土曜)まで、

そこそこ面白い東洋史概論(という名の中国史=殷、周、始皇帝から項羽と劉邦、三国志、隋、唐まで)と、

超眠たくなる西洋史概論(という名の帝政ロシアにおける内政史=ゼムストヴォ詳論)

を受講していました。ゼムストヴォ詳論を10時間、その他帝政ロシアの内政論を6時間、スターリンを30分。


いやまあなんといいますか、ゼムストヴォ詳論は、西洋史概論どころかロシア史ですらないじゃん。


ついでに書くと、先週の経済原論はマルクス経済学をみっちり16時間30分やりましたよ。今どき。今さら。G-W-G'。


こんな内容で大丈夫か、法政大学通信教育部?


いやまあそれはそれとして、今週はオリンピックのサッカーが男女とも良いところまで進んでしまって、3日のうち2日は夜中の3時4時に起きてサッカーを見ていました。

自業自得なんですけれども、今週の(週8時間英単語)ターゲットをクリアするには、今日2時間30分やらなきゃならなくて、この連続36週間、かなり酷く酔っぱらって週末土曜日に大苦戦したときも、意地で週間ターゲットをクリアし続けていたんだけれども、

今週、遂にやる気が起きなくなってしまって、連続ターゲットクリアはこれで途切れることに。これ書いている今から単語学習をはじめればぎりぎり間に合うけれども、やる気が起きず。


ゼムストヴォ恐るべし。


違う。


やる気が起きない理由ははっきりしていて、7月22日にTOEICを受験したのだけれども、3月のTOEIC(535点だった)より点が取れた気がしなくて、結局のところ単語を勉強したって意味がないんじゃないかなあ、と独学の限界を感じているからなのです。

TOEICのスコアアップを目的とした学校があり、そういう所で受験テクニックを勉強してみたいな、と思う今日この頃なのです。


世界一周したのはダテじゃありませんぜ、現実のTOEICスコアより英語を喋れまっせ、と自己主張したところで、そんな主観的な話を信用できるかボケ、客観的な数値を持ってこんかい! というのが日本社会なのでありまして。


つーか、TOEIC!

試験を受ける度にリスニングパートが難しくなっとるやんけ。

そんなんだったら、インド人の喋る英語とかエクアドル人の喋る英語とかも出題せえや!

あんなん、聞き取れんぞ!


といったところで、本当にインド人英語がリスニングパートに出てきたとしても、1年以内に試験対策は完了しているんだろうな。


マンツーマンで英会話能力を試験する、リアルカンバセーション試験とかって登場しないかなあ(すさまじく値段が高くなりそうだが)

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2012/08/08

放射能

現代ビジネスにこんなのが載っていた。

「あなたの隣にもきっといる 原発ポチたちの貧困なる「想像力」について 日本は変わらなくていい!?」

こういう記事を書く奴等に聞きたい。(この記事だけをやり玉に挙げたいわけじゃない)

広島と長崎に原子爆弾が落とされてから、まだ”わずか”67年しか経っていない。

放射能が君たちのいうほどに危険な物質なら(危険なことは間違いないのだが)、

なぜ広島と長崎に人が住めるのだろうか。


爆心地は福島原発の比じゃねーぞ。


ってことをデータで示しても理解できない、にわか反原発、エセ反原発、ファッション反原発、報道に踊らされている反原発……

……バカばっか。


(放射性物質の総量は原発の方が多いんだけどさ、爆心地の放射線量は福島の比じゃねーだろって話)

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2012/08/07

ニコラス・シャクソン/藤井清美訳「タックスヘイブンの闇」感想。
経済書。2012年07月2日読了。

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タックスヘイブンの闇―世界の富は盗まれている!

マフィアが闇で稼いだ資金を、タックスヘイブンに隠している。

大金持ちが税金をのがれるため、タックスヘイブンに住居を移している。

アップルやGoogleやマイクロソフトやGEやトヨタやサムスンは、タックスヘイブンを迂回して利益を見えなくして法人税をまともに払っていない。

と言うことをニュースや雑誌記事などで目にすることがある。

タックスヘイブンとはケイマン諸島のような税金がかからない国のことを指し、要するに合法的節税をしているんだろう。

私はタックスヘイブンについて、その程度の知識しか持ち合わせていなかった。

本屋で本書「タックスヘイブンの闇」の数ページを立ち読みしたとき、かなりの手応えを感じ、いったん帰宅してamazonレビューを見たら評価が高かったので買ってみた(値段も高かったけど)。


◆プロローグ
まずここで度肝を抜かれる。

1994年に発覚した、フランスのエルフ事件について書かれている。

フランスの元植民地で、現在は独立しているアフリカの小国ガボン。

ガボンのオマール・ボンゴは、1967年に33歳の若さで2代目大統領に就任してから、2009年に死去するまで実に41年以上にわたってガボンを支配してきた。

ボンゴは若い大統領だったが故、フランスの後ろ盾(=フランス軍の駐留)を必要としていた。

ボンゴは、ガボンに眠る石油など天然資源の採掘権をフランスの国営企業エルフに売った。

エルフ社からガボンに金が入る。
その金はボンゴにも入る。
その金は秘密裏にプールされ、金の出所がたぐられないようあちこち迂回させながら、フランスの右派政党の資金源になる。
その資金源は、ミッテラン元フランス大統領(の政党)も利用していた。

ちなみに第3代ガボン大統領は、オマール・ボンゴの息子のアリ・ボンゴである。


◆バナナ会社は儲けているのか?

世界3大バナナ会社、デルモンテ、ドール、チキータは、2006年にイギリスで7億5000万ドル(当時レートで900億円くらいか)の売上を記録したが、払った税金は3社合わせて23万5000ドル(同じく当時レートで3000万円くらいか)だった。

バナナ会社は多国籍企業である。熱帯地域でバナナプランテーションを経営し、収穫したバナナを船で運び、世界各所で売る。

実態はこれだけなのだが、会計上は複雑だ。

会社がアメリカにあり、ホンジュラスでバナナを獲り、イギリスで売る場合でも、
イギリスのスーパーマーケットに売っているのはケイマン諸島にあるバナナ会社の販売子会社で、
輸送子会社はマン島にあり、
経営部門はジャージー島に、
金融部門はルクセンブルクに、
保険子会社はバミューダにあるかも知れない。

この場合、どこの国に法人税を払うのが妥当なのだろうか?

数字を出してみよう。

ホンジュラスのバナナ生産子会社がバナナを収穫した。
ルクセンブルクの金融子会社が、ホンジュラスの生産子会社に運転資金2000万ドルを貸し出した。
ホンジュラスの生産子会社は、借りた2000万ドルの利子をルクセンブルクの金融子会社に払う。従ってホンジュラスでは利益が出ない。

ルクセンブルクの法人税は極めて安い。

ホンジュラスに入るべき法人税が、ルクセンブルクに移動してしまった(しかも税率は安い)。


手口は他にもある。

ホンジュラスの生産子会社で使う日用品は、本社購買部門から一括購入すればよい。トイレットペーパーを4000ドルで買って、経費で落とせばいいのだ。


しかしこれは(程度の問題はあるにせよ)いずれも合法的であり、普通オフショア取引といわれる手法だ。


◆タックスヘイブンとは

本書によると、タックスヘイブン=租税回避地は、世界でおおよそ4つのグループに分けられる。

1つめはヨーロッパ。ルクセンブルクやスイスやオランダやリヒテンシュタインやバチカン市国など。

2つめはイギリス・ロンドンに存在する「シティ」と呼ばれるグループ。イギリス連邦加盟国とイギリス準州。ケイマン諸島やジャージー島、ガーンジー島、バミューダ、香港、シンガポール、ドバイ、アイルランド……

3つめはアメリカを中心とするグループ。マフィアがカジノで儲けた金を隠すために作り上げたバハマ、パナマなどのカリブ海ネットワークと、ワイオミング州とデラウェア州。

4つめはウルグアイやソマリアなど、これからタックスヘイブンに名乗りを上げようとしている途上国。但し、今はまだそれほど成功していない。


本書では1~3の国々が、どのような経緯でタックスヘイブン化し、どのような経緯で歯止めがきかなくなってきているのかを、綿密な取材で明らかにしている。


◆感想

経済の仕組みは一見するととても複雑に見えるが、基本的に足し算、引き算そして掛け算が中心で、世界中で引き算(控除)の方法が異なったり、掛け算(税率)の方法が異なったりしているだけである。

タックスヘイブンはそれら経済の仕組みに加え、会社法や守秘義務(マネーロンダリングの際に金主がばれない)の扱い方などが各国で異なるため、それらをどのように組み合わせると最も税金を払わなくてよくなるか、これを世界中の会計士が世界中の法律と引き算掛け算をにらめっこしながら、日々新しい手口を考え出しているということであり、まあそういう意味ではとても複雑だ。


本書にポストイットを貼り付けたのは30箇所以上にのぼり、私の力量ではそれら全てを要約するなどとても出来ないが、さわりだけでも感じて貰えれば幸いである。


良書である。


8点/10点満点


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