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2012/09/10

スティーヴ・ブルームフィールド/実川元子訳「サッカーと独裁者 アフリカ13カ国の紛争地帯を行く」感想。
ルポ。2012年09月03日読了。

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サッカーと独裁者―アフリカ13か国の「紛争地帯」を行く

コートジボワールは、西アフリカで最も発展した国家だった。旧宗主国フランスの後押しもあったのだろうが、政治的に安定していて経済は好調、最も大きな都市アビジャンには上下水道が完備され、高層ビルが林立し、高速道路も張り巡らされていた。アビジャンのwikipediaを見ると、数枚だが写真がある。ナショナルジオグラフィック公式サイトにも、アビジャンの夜景が載っている。

参考:大林公子「アフリカの小さな国・コートジヴォワールで暮らした12ヶ月」エッセイ。2005年06月24日読了(6点)。

この国は2002年頃に政治対立から国が二分し、内戦が勃発してしまった。分かりやすく書いてしまうと、海側の南部(生粋コートジボワール人でキリスト教)と、内陸の北部(ブルキナファソやニジェールなどの移民や混血が多くイスラム教)が対立したのである。北部が反体制側で、北部の主要都市はブアケ(下地図参照)である。


大きな地図で見る


内戦状態でありながら、サッカーの国際試合は行われていた。

2007年、アフリカネイションズカップ(アジアカップみたいな大会だと思って下さい)予選で、コートジボワールVSマダガスカルが、コートジボワールのホームで行われた。

サッカー代表チームであるから、選ばれる選手に南部も北部もない。

そしてこの試合は、北部のブアケで開催された。

イングランド・プレミアリーグ・チェルシーのレギュラーで2回も得点王に輝いているアフリカサッカー最高のスーパースタードログバ(今は上海のチームに行っちゃったけど)の活躍もあり、コートジボワールは5-0で勝利し、アフリカネイションズカップ出場権を勝ち取った。

この試合を応援する人達にとって、代表チームの活躍には南部も北部も関係なく、今までの南北対立を捨て、南部と北部は手を取り合って応援した。

サッカー代表の試合が内戦を終結させたわけではないが、内戦終結のために重要な役割を担ったのは間違いなかった。

◆◆◆

アフリカ各地どこに行ってもプロサッカーリーグがあるのだが、多くの国のサッカーリーグも寂れていて、自国のリーグよりもイングランドのプレミアリーグの方がダントツに人気があり、レプリカユニフォーム(偽物含む)がたくさん出回っていて、寂れたリーグはイングランドプレミアリーグと試合時間が重ならないようにリーグ戦を組んでいたほどだった。

でも自国の代表チームとなると、人々は自国チームを応援する。代表チームが活躍すると、自国民は(一瞬にせよ)まとまる。自国がまとまることを、政治家は利用する。特に独裁者は利用する。

著者は、娯楽らしい娯楽があまりにも少ないアフリカ各地で、政治とサッカーに関連性があることを見つけ、これをテーマに何か書けないか探っていた。

調べていったら、政治家がサッカーを利用しているケースが多数見つかった。


本書の構成は以下の通り。

まえがき チーター世代が台頭するアフリカをサッカーで読み解く
第1章 エジプト―サッカーを利用した独裁者
第2章 スーダンとチャド―石油をめぐる哀しい争い
第3章 ソマリア―紛争国家に見出される一筋の希望の光
第4章 ケニア―サッカーは部族間闘争を超える
第5章 ルワンダとコンゴ民主共和国―大虐殺と大災害を乗り越えての再生
第6章 ナイジェリア―サッカー強豪国が抱える深い悩み
第7章 コートジヴォワール―サッカー代表チームがもたらした平和と統一
第8章 シエラレオネとリベリア―アフリカナンバー1になった障がい者サッカー代表チーム
第9章 ジンバブエ―破綻した国家でサッカーを操る独裁者
第10章 南アフリカ―アフリカ初ワールドカップ開催国の光と影


エジプトは30年の独裁の末に失脚したムバラクの話で、
「2006年エジプトがアフリカネイションズカップで優勝したあと、政府は統制している食料価格を高騰させた。代表チームの勝利に浮かれているときしか、政府はその政策がとれないのだ」(P47)


チャドとスーダンは、ダルフール紛争の影響で戦争しており、国交は断絶している。
ダルフールのスーダン難民がチャドに逃げる(アラブ人でイスラム教の政府側が、ベルベル人やヌビア人(9/15追記:バンツー人とかフール人とかいろいろな民族が居る)でキリスト教徒のダルフール人を迫害している)。スーダン政府軍は難民をぶっ殺すため、チャドに越境攻撃を仕掛ける。怒ったチャドはダルフール難民に反乱軍を組織し、武器や資金を援助し、スーダンの首都ハルツームに襲撃を仕掛ける。

そんな状態だが、スーダンとチャドはワールドカップの地区予選で同じ組になってしまった。当然両国政府は、サッカーを政治に利用した。


こんな感じで、アフリカ諸国で政治がサッカーを利用している様が、何例も挙げられている。


著者は丁寧に取材している。

それには理由があり、著者はイギリス人で、プレミアリーグ アストン・ヴィラの熱狂的ファンなのだそうだ。だからプレミアリーグに詳しい。アフリカ中どこに行ってもプレミアリーグは人気がある。スーダンのダルフール難民キャンプ取材を終え隣町に移動するバスに乗っているとき、スーダン公安警察に見つかり、難癖付けられて捕まってしまった。バスは走り去っていった。何時間も拘束された。しかし、「僕はイギリス人で、ベッカムは友達、オーウェンも友達、ジェラードも友達!」と言ったら開放され、それどころか公安警察が隣町に行く車まで用意してくれた(このエピソードはプロローグに書かれている)。

そのくらいアフリカ各国ではプレミアリーグに人気がある。

丁寧な取材が出来たのは、著者がプレミアリーグファンであることが取材上の武器になったことは間違いあるまい。


サッカーと政治を強引に結びつけている部分が若干見受けられる。

サッカーの話と政治の話が半々くらいの構成なので、読みようによっては、どっちつかずの中途半端な印象を受けてしまうかも知れない。

でも、サッカー好きで、アフリカの政治にも興味があれば、間違いなく面白く読める一冊である。

値段が3150円と高価なので、おいそれと買える本ではないが、それでも読む価値あり。


ま、というわけで、これからアフリカに行く人は、マンチェスター・ユナイテッドのユニフォームを着た「香川真司」と「自分」が肩を組んでいる合成写真を作って、アフリカにいる間ずっと持ち歩いていると、憧れや尊敬のまなざしで見られ、便宜を図ってくれるかもよ。


8点/10点満点

あと、この本もおもろかったよ。

桃井和馬「観光コースでないアフリカ大陸西海岸」ルポ。2007年11月19日読了(9点)


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