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2012/09/08

西山孝・前田正史「ベースメタル枯渇―ものづくり工業国家の金属資源問題」感想。
資源減警鐘書。2012年08月27日読了。

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ベースメタル枯渇―ものづくり工業国家の金属資源問題

尖閣諸島の問題が発生したあと(2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件)、中国政府がレアアースの輸出をストップさせ、日本の製造業を震撼させた。レアアースを中心に、レアメタルは地球上に極めて限られた地域にしか存在しない(偏在)物質であり、そんな貴重な物質を中国からの輸入に頼っていいのか!というような論調で新聞テレビ雑誌は騒いでいた。

私がレアメタルの偏在に伴う危険性を知ったのは、レアメタルが投機対象となり、値段がめちゃくちゃ乱高下するようになった頃、レアメタル専門商社の社長さんである中村繁夫が書いた「レアメタル・パニック」(2007年02月07日読了・7点)を読んだことによる。

2007年頃に私がこういう本を読んでいたのは、当時私は株にしこたま金を突っ込んでいて、やっぱ資源株は有望だよなあ、どこか良いところないかなあ、と投資先のネタを探していたのである。その昔、東邦チタニウムという会社の株で100万円以上儲けたことがあったので、二匹目のドジョウを探していたのですよ。結果、行き着くところまで行ってしまって、モスクワ証券取引所に上場されているルクオイルノリリスクニッケルノリリスクという環境破壊が深刻な町にある)という会社に手を出し、リーマンショックで塩漬けに至る。

そのあと、谷口正次「次に不足するのは銅だ」(2009年04月28日読了・8点)というのを読んで、なるほど資源というのはレアメタルだけが足りないのではなく、いろんな資源が不足してきていると言うことを知った。


で、本書。

本書の著者、西山孝氏は京大名誉教授で、資源地質学、資源経済学が専門。共著者の、前田正史氏は東京大学副学長、循環材料学、材料熱力学、素材プロセス工学、環境科学を専門としている。


その二人が書く本書の内容は、レアメタルというのはベースメタル(鉄、アルミ、銅、鉛、亜鉛など)に対して埋蔵量も生産量も少ないからレアメタルなのである、というところから始まり、

メタル(ベースメタルでもレアメタルでも)の量を量る数値として、埋蔵量を消費量で割る=耐用年数、というものがある。

例えば2009年の亜鉛の耐用年数は18年であり、このままの消費量が続くと18年後には枯渇する。

ところがどっこい、毎年新しい鉱床がどこかしらで発見される。だから何年経っても耐用年数は減らない。このあたりの理屈は石油と同じ。

新しい鉱床も毎年毎年発見されるわけではないが、今まではコストの問題で採掘されていなかった鉱床(目的とするメタルの含有率が低い等)が、技術の発展とともに採算に乗るようになってくる。オイルサンドから石油を抽出することがコスト的に見合うようになったことと同じ。

石油は消費すると無くなってしまうが、メタルはリサイクルが可能。

ところが本書で(も)指摘されているのは、銅に関してだけは、新しい鉱床が発見されたり、採算の合わない鉱床を復活させたり、今まで使ってきた銅をリサイクルするだけでは足りなくなる可能性があるらしい。

なぜか。

銅は電線に使われる。電気信号は光ファイバーで送ることが出来る。光ファイバーは硝子かプラスチックである。しかし電気を送る電線は銅が最も効率が良い(かつ今のところ安い)。効率が良いというのは、電気抵抗が小さいので送電ロスが少ないということである。

世界各国の中進国、発展途上国の電力網が整備されるに伴い、銅線の需要がものすごい勢いで高まってきているのである。


次、レアメタル。

レアメタルは、目的とするレアメタルそのものを採掘する鉱山と、他のベースメタルを作るときに出る不純物の塊から抽出されるレアメタル(これをバイプロダクトと言うらしい)がある。

ビスマスやタリウムは鉛の、インジウムやカドミウムは亜鉛の、モリブデンは銅の、レニウムは銅から採れるモリブデンのバイプロダクトなのだとか。

だからモリブデンを増産しようと思っても、増産するためにはまず銅を増産しなければならず、銅には需要があるから銅鉱山開発は行われるけれど、銅鉱山に必ずモリブデン精製工場を併設するとは限らないわけで、モリブデンが含まれている銅の精製カスが銅鉱山の近郊に放置されている場合もあり。


そのような話を分かり易く解説するところから本書は始まり、意外と進んでいるリサイクルの現状や、今後の動向予想など、図表も多く丁寧な本である。


「レアメタルパニック」系の資源関連本に興味がある人は読んで損のない一冊。


とはいうものの、2時間で読み終えてしまう程度の厚さなので、値段(1890円)は高く感じる。


7点/10点満点

私が読んだこの手(資源絡み)の本
・井田徹治「データで検証 地球の資源」2012年01月30日読了。7点
・中嶋猪久生「資源外交 連戦連敗―アザデガン油田の蹉跌」2011年11月03日読了。7点
・谷口正次「次に不足するのは銅だ」2009年04月28日読了。8点
・浜田和幸「ウォーター・マネー」2008年09月09日読了。7点
・柴田明夫「水戦争」2008年01月23日読了。3点
・柴田明夫「エネルギー争奪戦争」2007年12月21日読了。7点
・小若順一「リサイクルは資源のムダ使い」2007年07月06日読了。3点
・中村繁夫「レアメタル資源争奪戦」2007年03月19日読了。3点
・中村繁夫「レアメタル・パニック 石油ショックを超える日本の危機」2007年02月07日読了。7点
・泉谷渉「電子材料王国ニッポンの逆襲」2006年05月24日読了。4点
・中村靖彦「ウォーター・ビジネス」2005年08月16日読了。9点


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