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2012/09/29

北方謙三「楊令伝(一) 玄旗の章」感想。
水滸伝の続編。2012年09月25日読了。

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楊令伝〈1〉玄旗の章


北方謙三の長大長編が好きで、
「三国志」全13巻(2002年9月~10月28日にかけて読了)
「水滸伝」全19巻(2008年7月~10月15日にかけて読了)
を読んでいる。

本書は、その北方謙三版「水滸伝」全19巻の続編となる「楊令伝」である。

この「楊令伝」も全15巻である。

しかも、「楊令伝」の続編となる「岳飛伝」が執筆中(現在で2巻まで)である。


「楊令伝」の文庫化が開始されたのは2011年6月、文庫版最終巻が出たのが2012年8月。これを待って、私は全巻一気の大人買い。3年無職のド貧乏なのに。


「水滸伝」の話が長くなってしまうのは、主要登場人物が100人に達し、それぞれが特殊能力を持ち、尚且つ魅力的だからだ。

横山光輝のマンガ版「水滸伝」を読んだことのある人は、


「水滸伝」をまともに書いたらえらいことになることは分かっていただけると思う。

そのえらいことに手を染めてしまったのが北方謙三だ。


本書「楊令伝」第1巻は、北方謙三の小説版「水滸伝」の続編であり、個々のキャラクターを思い出させるためか、ストーリー展開よりもキャラクター紹介に重きを置いているため、話の流れは悪い。

しかし、これからあと14冊分の波瀾万丈が待ち受けていると思うと、多少の焦れったさは我慢できるのである。


6点/10点満点


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2012/09/27

山岡光治「地図の科学」感想。
地図解説書。2012年09月20日読了。

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地図の科学―なぜ昔の人は地球が楕円だとわかった?航空写真だけで地図をつくれないワケは!?


・地図のなぜ?に関すること、
・地図が作られ出した歴史的経緯、
・測量の方法&昔の人はどうやって測量していたのか?
・日本の地図は一般に無料公開されていてこれは実に素晴らしいことなのだよ、
・とは言っても現代ではGPS測量が中心になってしまったんだよね、
・地図から地形を読み取る読図の初歩、

などについて、初心者向けに分かり易く解説している本である。


が。

測量については、大学で地理学(及び地図学)を学んでいる私でも、ちょっと理解できない部分があったので、説明を簡単にするあまり説明不足になっているのかなあ、と思う部分も多々あり。


と文句を垂れつつも、、図やイラストも豊富で、内容もひとつの専門的なことに偏ることなく、地図という実は広範囲なキーワードに関する様々なことを分かり易く伝えようとしていることが伝わってきて、地図に興味を持った人が最初に読む本格的地図解説本として優秀な本だと思う。


私は大学の通信教育で地理学(及び地図学)を学んでいるので、客観的な判断が出来ていないだけかも。


7点/10点満点


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2012/09/25

下社学「中央アジア経済図説」感想。
ユーラシア研究書。2012年09月17日読了。

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中央アジア経済図説

本書は旧ソ連の中央アジアのうち、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタンの経済状況を解説したブックレットである。ユーラシアブックレットNo.128である。

本書の内容はタイトル通りであり、ブックレットなので不必要なことが書かれることもなく、淡々と説明されているので、分かり易いといえば分かり易いし、物足りないといえば物足りない。

・キルギスやタジキスタンで冬の電力確保のためにダムから放水した水が、下流のウズベキスタンやカザフスタンで水害をもたらす。

・中央アジアの小売業はバザール=日本でいうと昔ながらの商店街=形式が中心であったが、ウズベキスタンではごく普通のスーパー間ケットスタイルの店が急速に発展してきている。(トルコ資本)

・ウズベキスタンでは韓国の大宇自動車との合弁によるウズデウオートという自動車メーカーがあったが、現在はGMウズベキスタンとなり、順調に生産している。

・各国とも教育には熱心で、ウズベキスタンでは初等教育の就学率100%、識字率は各国とも100%近く。

・しかし、昨今キリル文字(ロシア語の文字)からラテン文字(普通のアルファベット)に移行しつつあり、世代により読み書き出来る文字が異なる状況が発生している。

などなど、興味深い話が幾つか載っていた。


興味深い話は、そのうち別の本で詳しく調べてみよう。


6点/10点満点


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2012/09/23

輪島実樹「カスピ海エネルギー資源をめぐる攻防」感想。
ユーラシア研究書。2012年09月16日読了。

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カスピ海エネルギー資源を巡る攻防

「ユーラシアブックレットNo.120」で、ブックレットの名が示す通り、60ページほどの小冊子。

この本は、ロシアのエネルギー関連投資信託を買う際に、参考で買った本。

同様の書籍として、

・坂口泉・蓮見雄「エネルギー安全保障 ユーラシアブックレットNo.113」2008年01月22日読了(6点)。

・酒井明司「ガスプロム ユーラシアブックレットNo.111」2008年01月19日読了(6点)。

を読んでいる。

その後は投資信託じゃ物足りなくなり、モスクワ証券取引所の現物株に手を出した。

やっぱりロシアの会社の株を買うなら資源だよな。資源と言っても、石油も採れる、ガスの埋蔵量は世界一、ベースメタルもレアメタル系もウランも、広大な土地にはいろんなものが眠っている。

で、エネルギー資源がわんさか埋まっているのがカスピ海。


大きな地図で見る

上図の通り、カスピ海を取り巻く国はロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、イランの5カ国である。

ソ連崩壊前は、ソ連とイランだけだった。カスピ海(正確には海底)利権は、この2カ国で取り決めをすれば良かった。実際本書を読むと、2カ国での取り決めがなされている。

しかしソ連が崩壊し、経済的に自立しなければならない国が湖岸に3つ(カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン)も増えた。

その3カ国は、ソ連とイランだけで交わした取り決めは無効である!として、

カスピ海を公平に20%ずつ所有しよう!と主張する国があれば、
それに概ね同意できるが、20%の線引きはどうやって決めるのか?と異議を唱える国もあれば、
海(公海)と同じく、湖岸から12海里を領海とし、12海里を超えた場所は公海扱いにしよう!と主張する国もある。

というような感じで、各国が自国に有利になるような意見を主張するばかりで、未だ(本書出版時の2008年)結論は出ていない。

しかし、実際は各国の利害が一致する範囲内で湖底油田の開発に取りかかり、どこか一カ国だけが利益を独占するような事態にならないよう、エネルギー外資が調整を図った結果、カスピ海の領海問題自体はさておき、経済的には何となく収まっている。

しかししかし、では採れた石油やガスをどこにどうやって運ぶか。

これについてはまだ解決を見ていない。

例えばアゼルバイジャンからパイプラインを通してヨーロッパに輸出するには、アルメニアとトルコを通過させる必要があるが、アルメニアとアゼルバイジャンは飛び地でいがみ合っているし(アゼルバイジャンの飛び地「ナヒチェヴァン」と、アゼルバイジャン内にあるアルメニア自治区「ナゴルノ・カラバフ」、「ナゴルノ・カラバフ」の中にあるアゼルバイジャン人自治区、そのほかにもアルメニア内にアゼルバイジャン人自治区が5箇所もあったり、逆もあったり、もうグチャグチャ)、そもそも両国ともオスマントルコに虐殺された歴史からトルコが大嫌いであるし、、、、

トルクメニスタンがパイプラインを通す場合、アフガニスタンかイランを経由しなければならなくて、イランとそんなことしたらアメリカが怒るし、アフガニスタンを通すのは単純に危険だし、ウズベキスタン・タジキスタン経由で中国に運ぶのも距離がありすぎるし、、、、


などについて、本書はブックレットならではのあっさりとした解説がなされている。


で、私は結局、本書や前掲書を参考にして、

ガスプロム(ロシアの天然ガスを独占している世界最大のガス会社。プーチンが影で支配しているとの噂)、
ルクオイル(ロシア最大の石油会社)、
ノリリスク・ニッケル(世界最大のニッケル生産会社)、
統一電力(ロシア唯一の電力会社、つまり電力供給を独占している会社)、
などの銘柄(株式現物)を買った。

買ったあとリーマンショックがやってきた。すべてが半値以下になり、統一電力に至っては会社が無くなり上場廃止になって丸損になった。

まあ、いいや。


ロシアのエネルギーは魅力的ってことで。


6点/10点満点


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2012/09/21

船戸与一講演録「『満州国演義』に見る中国大陸」感想。
講演録。2012年09月15日読了。

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『満州国演義』に見る中国大陸


船戸与一ファンとして一言言っておく。

船戸与一ファンはこの本を買ってはいけない。


本書は、愛知大学東亜同文書院大学記念センター講演会に於ける、船戸与一の講演を書き起こした「だけ」の代物である。

本書の冒頭6ページは、センター長による講演の挨拶を「そのまま」収録したものであり、本編も船戸与一の講演を「そのまま」収録しただけである。船戸与一の部分は凡そ30ページ。

本書の著者は船戸与一とは言えない。


本書は、船戸与一のファンが買ってくれることを期待し、ボロ儲けを狙った寄生虫のごとき出版関係者が作った、誠に無意味な本である。


船戸与一ファンはこの本を買ってはいけない。


扶桑社よりも下劣な出版社である。


舐めるなクソ出版社。さっさと潰れろ。


ちなみに、船戸与一の講演部分そのものは悪くないので、借りて読むにはいいかもしれない。


1点/10点満点


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2012/09/19

冲方丁「天地明察(下)」感想。
時代小説。2012年09月14日読了。

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天地明察〈下〉


最後の1章を残して、0:00をまわってしまった。

残りは翌日に読めばいいじゃないかという理性よりも、早く続きを読みたいという欲求が勝ってしまって、結局真夜中の2:30までかけて読み終えた。

そういう意味で、とても面白い小説だった。


読み終えてからamazonレビューを見たら、少なくない数のマイナスレビューが載っていた。
「和算の問題が間違っている」
「暦の歴史が間違っている」
「時代背景と異なった風景描写がある(間違っている)」
「こういうのをライト時代小説というのだろうか、とにかく軽い」
「そもそも文章が下手だ」


後半が急展開過ぎるかな、と思う部分はあったけど、まあ全編通して楽しく読めましたよ。私は。


8点/10点満点


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冲方丁「天地明察(上)」感想。
時代小説。2012年09月13日読了。

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天地明察〈上〉

ありゃ、こりゃ、意外と引き込まれる。

下巻に期待。


8点/10点満点


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2012/09/16

伊藤正孝「ビアフラ 飢餓で滅んだ国」感想。
ビアフラ戦争ルポ。2012年09月11日読了。

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ビアフラ飢餓で亡んだ国


私的10点満点のルポ。


原著(「ビアフラ潜入記」)は1970年に刊行され、文庫版の本書は1984年に出版された。文庫化に際して、第3部「飢餓と部族問題」約35ページが加筆されている。

本書は現在絶版であり、古本でしか入手できない。


本書の著者である伊藤正孝氏(朝日新聞記者)の「南ア共和国の内幕 アパルトヘイトの終焉まで(増補改訂版)」2012年02月21日読了、も私的10点満点を付けた。


◆◆◆

ナイジェリアで、ビアフラ戦争という内戦があった。ざっくりと説明する。(以下wikipediaから丸ごと引用している部分もあり)

ナイジェリアには、
北部のイスラム教徒主体のハウサ族、
西部のイスラム/キリスト教混合のヨルバ族、
東部のキリスト教主体のイボ族、
の三大部族があり、その他の多くの少数民族ともに存在した。

イギリス植民地時代には、イボ族は比較的教育レベルが高く、下級の官吏や軍人を多く輩出し、また商才もあり「黒いユダヤ人」と呼ばれることもあった。

軍のクーデター未遂などを経て、北部(ハウサ族多し)でイボ族が虐殺される事件が相次いだため、1967年、東部のイボ族は「ビアフラ共和国」として東部州の独立を宣言した。ちなみに、その当時既にナイジェリア東部では石油が採掘されていた。

当初は士気が高かったビアフラ側(東部イボ族)だったが、ナイジェリア軍の手により海岸の拠点町ポート・ハーコートが陥落(1968年5月18日)してから、内陸で孤立してしまった。

ビアフラを支援していたのはフランス(石油狙い)、ポルトガル、コートジボワール(フランス寄り)、ガボン(フランス寄り)、タンザニア(中国寄り)、ザンビア(中国寄り)、ローデシア(現ジンバブエ)、南アフリカ。

反対にナイジェリア軍を支援していたのはイギリス、アルジェリア、エジプト、東ドイツ、ソ連。

まだバリバリ東西内戦の頃であり、イデオロギー対決の部分もあったが、海岸線を失い補給ルートを確保できなくなってしまったビアフラ側は、1970年1月9日に降伏する。


海岸のポート・ハーコートを失った後の拠点となった、内陸のオウェリ。


大きな地図で見る


◆◆◆

1969年6月、国際赤十字が救援飛行を打ち切った。それまで悲惨な戦争を訴えるため外国人ジャーナリストを積極的に受け容れていたビアフラだったが、内陸に押し込められたビアフラは、1週間で餓死者3万人、小学生がゲリラ戦の訓練を受けているなど、悲惨な状況になっていた。

ビアフラ政府代表部から入国許可を得るため、著者である伊藤記者と高橋カメラマンは1969年9月にタンザニアの代表部に行く。入国許可が下りない。エチオピアの代表部に行く。入国許可が下りない。パリに飛ぶ。ロンドンに飛ぶ。交渉は遅々として進まない。飢餓が進んでいるビアフラでは、ジャーナリストを飛行機で運ぶくらいなら食料を中心とした救援物資を運びたいからだ。

運も味方し、12月になり、フランス赤十字の飛行機でビアフラに入国できることになった。ガボンのリーブルビルで待機することになった。リーブルビルでも待たされた。

しかし12月24日、遂にビアフラ行きの飛行機に乗ることが出来た。

ビアフラのオウェリに近いウーリー飛行場に行くまでに、ナイジェリア軍が発砲してくる。当たらないようにするため、真夜中に飛ぶ。ウーリー飛行場は道路と平行にジャングルを切り開き、ただ鉄板を敷いただけの空港だった。ナイジェリア空軍を警戒しているのか、滑走路の灯りも最低限しかついていない。

◆◆◆

そして遂に伊藤記者と高橋カメラマンはビアフラに入国した。

オウェリの町に行ったら、髪の毛が金髪っぽい色になっている子供や、白人と黒人の混血のような子供が大勢居た。「彼らは混血児なのか?」とビアフラ代表部のスポークスマンに聞くと、「栄養失調の度が過ぎて、体から色素が無くなっている」との返事。

黒人と言えばワキガがきつい。しかし、ビアフラではあまり臭いを感じない。イボ族の特徴かと思っていた。しかし1月1日、パリから持参した食べ物で正月を祝っているとき、ビアフラ代表部のスポークスマンにご馳走したら、ワキガの臭いが漂ってきた。飢餓はワキガの臭いも消すようである。

ビアフラを支援しているヨーロッパのキリスト教のグループは、食糧配給の基準を以下のように定めていた。
1.ピノピンして働ける者
 週1回の麦がゆ
2.妊婦又は衰弱が目立つ者
 週2回の麦がゆとミルク4杯
3.明らかに餓死直前の者
 週3回の麦がゆとミルク6杯

1日に3回の食料ではなく、週に3回である。

そのくらい、ビアフラには食べ物がなかった。

必須ミネラルである塩もなかった。戦争前は良いところのお嬢さんだった身なりの若い女性が、塩と交換で売春しようと持ちかけてきた。

ビアフラの海外担当情報官は
「欧州で1万人餓死すれば大騒ぎになる。アジアで10万人死ねば、国連が解決に乗り出す。しかしビアフラでは2年半で200万人が餓死したのに、世界中から無視された」


◆◆◆

ビアフラ独立を目指したイボ族は、アフリカにある数々の民族部族の中でも飛び抜けて商売が上手い。イボ族が暮らす地域で石油が見つかった。他部族のやっかみも含め、イボ族が攻撃対象になった。それがビアフラ独立のきっかけである。

しかし著者は言う。

イボ族は、15世紀以降のアラブとヨーロッパの奴隷貿易に手を貸していたのでは?

ビアフラ人にこのことを聞くと、皆黙ってしまった。

ビアフラのある地域は、別名「奴隷海岸」である。


◆◆◆

伊藤記者らは「飛行場まで行く車の燃料が無いから、まだかろうじて燃料が配給できるうちに早くビアフラを離れろ」と忠告されていた。高橋カメラマンは1月5日に離脱した。

伊藤記者は1月7日に離脱した。

1月9日に、ビアフラは降伏した。


◆◆◆

とんでもないルポだ。

私は現代アフリカに興味があり、現代アフリカの本ばかり読んでいたが、先日読んだカプシチンスキ「黒檀」といい、伊藤記者の「南ア共和国の内幕」といい、独立黎明期のアフリカは、今よりもっととんでもないことがあちこちで起きていたのだな。

名作と言われるルポを、これから私はたくさん読んでいきたい。


10点/10点満点


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2012/09/14

平尾武史・村井正美「マネーロンダリング―国境を越えた闇金融ヤクザ資金」感想。
ルポ。2012年09月08日読了。

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マネーロンダリング―国境を越えた闇金融ヤクザ資金


マネーロンダリング、昔で言うところの「資金洗浄」。
関連する内容の本としては、以下を読んでいる。

ニコラス・シャクソン「タックスヘイブンの闇」2012年07月2日読了(8点)。

橘玲「マネーロンダリング入門」2012年04月20日読了(9点)。

福原直樹「黒いスイス」2008年06月11日読了(7点)。


◆本書の内容(紀伊國屋bookWebより)

高利を貧るヤミ金融の巨大ネットワーク―それを背後から操っていたのは指定暴力団山口組系組織だった。
捜査陣は苦難の末に犯行手口を解明、事件を摘発するが、莫大な収益は香港、スイスへとすでに消え去っていた。
刑事、検事たちは、国境を越えるブラックマネーの正体をいかにして暴いたか。
警視庁担当記者が、「五菱会ヤミ金融事件」の舞台裏を克明に追ったクライムノンフィクション。

プロローグ
第1章 山口組の資金源
第2章 プライベートバンクの闇
第3章 カネの運び屋
第4章 ヤミ金融の帝王
第5章 海外捜査の壁
第6章 暴かれた手口
第7章 消えたカネの行方
第8章 意外な判決
エピローグ
海外へ消えるブラックマネーの現在(文庫版書き下ろし)


◆感想

本書は、読売新聞の記者二人が書いた本である。

骨太な内容でありながら、税込み499円である。今どき良心的な値付けである。


それはさておき、200年に長崎県警により捜査が開始されたヤミ金事件。事件は広がり、警視庁他三県警の合同捜査になり、香港やスイスの捜査当局の力を借り、2004年に犯人グループを逮捕。

実際には、マネーロンダリング犯罪を犯罪として立証するための法整備が遅れていたため、日本国内の金融機関も非協力的であり、また「何の犯罪」で立件するのか捜査関係者の間でも意見が割れたり、海外に送金されてしまった不正蓄財資金を操作する術=外国での捜査権が無く、外務省を巻き込み各国捜査当局との協力を得るまでにやたらと時間がかかった、など問題が数多く浮かび上がった。


本書で取り上げているマネーロンダリングの手法と顛末の一端を記すと、

クレディスイス(銀行)香港の日本人営業マンが、タコ焼き屋のオヤジ(資産持ち)の営業担当になる

・タコ焼き屋のオヤジが、一度会っただけの金持ちを営業マンに紹介する。なぜかというと、クレディスイスに口座を作るには誰かの紹介が必要で、紹介者には謝礼が払われる。

・金持ちは早速クレディスイスに口座を作り、割引金融債(ワリショーとか、ワリコーと呼ばれていた代物)10億円分を入金。

・その際、誰がこの金を換金しようとしたのか知られるのが嫌だった金持ちは、営業マンとタコ焼き屋に入金の実行役をさせる。クレディスイスは日本に支店がない(1999年に不正行為で銀行免許取り消し)ので、また逆に言えばこれを利用して、

金持ちが割引債を買う(割引債は誰でも買えた。1千万円単位でもOK。銀行に持っていけば誰でも換金できる)
 ↓
割引債をタコ焼き屋に預ける
 ↓
クレディスイス営業マンが「割引債の持参人はクレディスイス香港の正式な代理人である」とスタンダードチャータード銀行東京支店に連絡しておき、なおかつ割引債の券面番号も連絡しておく
 ↓
スタンダードチャータード銀行東京支店は、割引債を換金し(その後、東京三菱銀行にあるスタンダードチャータード銀行の口座(銀行間口座)に入金し)てくれと日本証券代行に依頼する
 ↓
タコ焼き屋が割引債を日本証券代行に持っていく(ちなみにタコ焼き屋は持参した割引債の5%を手数料として金持ちから受け取る約束になっている)
 ↓
スタンダードチャータード銀行東京支店からクレディスイス香港にお金が渡る
 ↓
クレディスイス営業マンが、クレディスイス香港に入金された金を、金持ちの口座に振り分ける。

・つまり、割引債の金は、クレディスイス香港の金持ちの口座に入るのではなく、スタンダードチャータード銀行東京支店とクレディスイス香港の銀行間取引に紛れ込ませたのである。

・同じような手口その他で、金持ちはあっという間に46億円もクレディスイス香港の口座に入金。

・その金持ちはヤミ金融の大物で、山口組関係者だった。

・結果的には、ヤミ銀グループだけではなく、タコ焼き屋も、クレディスイス営業マンも逮捕された。


・捜査の途中で、クレディスイスのスイス本社が金持ちは素性が疑わしいから、金持ちの口座にあった51億円を凍結し、スイスの捜査当局経由で日本の捜査当局に連絡があった。

で、この凍結した51億円、スイスと日本で山分けしよう、というのがスイス側の発想。全額日本に戻すんじゃなく、山分け。これはスイスが強欲なのではなく、国際的な金融犯罪の場合、差し押さえた金は山分けするのが普通みたい。(今回の事件の場合、被害者に返金するのが原則であるとして、スイス側と一悶着あった)


マネーロンダリングの本を一冊でも読んだことがあれば、今回のはそれほど複雑ではない手口だけど、ひとつ国をまたいだだけで、どれだけ捜査が困難になるか。それがよく分かった。

2012年の今は、日本の法体系や各国の協力体制など多少はマシになっているだろうけど。


ばれてないだけで、この手の犯罪は山ほどあるんだろな、と思う。


いつものように最後は単純な感想ですが、面白かったです。

マネーロンダリングに興味があれば、読んで損のない一冊。


8点/10点満点



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2012/09/12

モフセン・マフマルバフ/武井みゆき・渡部良子訳「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」感想。
アフガン&タリバン解説。2012年09月04日読了。

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アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ

2012/9/17ちょっと改稿。2014/07/01ちょっと改稿。


本書のタイトルは強烈である。しかし真意は以下である。

著者はこう述べる(P27)

「ついに私は、仏像は、誰が破壊したのでもないという結論に達した。仏像は、恥辱のために崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人々に対し世界がここまで無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにも成らないと知って砕けたのだ」


アフガニスタン人が20年間で250万人死んだことより、630万人もの人が国外脱出し難民と化したことより、

バーミヤンの仏像(世界遺産)が爆破されることの方が、世界中の人々にとっては衝撃的で重要だったのだ。


◆◆◆

エンタメノンフィクション作家高野秀行のブログ「ムベンベ」に、「アフガニスタン本ベストワンはこれだ!」というエントリーが出ていて、それを読んですぐにamazonに飛んだら在庫切れっぽい表示が出ていて、2001年に出版された本だし絶版なんだろなと勝手に解釈してマーケットプレイスで購入しました。

絶版じゃないです。

まだ普通に売ってます。自戒を込めて、こういう本はなるべく版元の利益になるような買い方をしましょう。

◆◆◆

本書のタイトルは、アフガニスタンを支配したタリバンが「バーミヤン遺跡」を爆破したことに対する、イラン人映画監督の著者のメッセージである。

アフガニスタンは何度も戦争に巻き込まれている。
アフガニスタンへのソ連侵攻開始は1978年、撤退は1989年)

(タリバンの政権掌握は1996年)

バーミヤン遺跡の爆破は2001年2月26日)

(タリバン崩壊は2001年9月11日のアメリカテロの首謀者ビンラディンを匿ったことにアメリカが激怒して、2001年10月7日からアメリカがアフガン空爆を開始し、同時に反タリバンの北部同盟が首都カブールに侵攻成功)

(911の首謀者がビンラディンだ!というのは、西側マスコミはすぐに気付いた。だから当然アメリカ政府も分かった。この経緯は高木徹「大仏破壊」2005年09月08日読了(9点)を読んで下さい)


◆◆◆

国土の大部分が峻険な山岳地帯で、それでありながらか幾度となく干魃に襲われる。

P21~22
「1992年のアフガニスタンの人口は2000万人だった。ソ連侵攻開始から現在までの過去20年間に、約250万人が殺され、あるいは死んだ。この大量死と殺戮の原因は、軍事的攻撃、あるいは餓死、あるいは医療設備の不足にあった。言い換えれば、年に12万5000人、1日340人、1時間14人となる。つまりこの20年間、アフガニスタンでは、5分に1人がこの悲劇により殺され、あるいは死んだのである。

(中略)

アフガン難民については、悲劇の桁はこれをまた上回る。より正確な統計によれば、特にイランやパキスタンなど「アフガン国外にいる」アフガン難民の数は、630万人に達している。この数字をまた年・日・時間・分で割れば、過去20年間、毎分1人がアフガニスタンの国から難民として国外に出ていたことになる」


冒頭の繰り返しになるが、著者はこう述べる(P27)

「ついに私は、仏像は、誰が破壊したのでもないという結論に達した。仏像は、恥辱のために崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人々に対し世界がここまで無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにも成らないと知って砕けたのだ」


実際、そういうことだ。

アフガニスタン人が20年間で250万人死んだことより、630万人もの人が国外脱出し難民と化したことより、

バーミヤンの仏像(世界遺産)が爆破されることの方が、世界中の人々にとっては衝撃的で重要だったのだ。


著者はそれを嘆いている。世界中の無関心に、深く、深く、嘆いている。

◆◆◆

高野秀行のブログにも出ているが、本書では普通の日本人が知らないことが出てくる。


「デュランドライン」(もしくはデュランド線)
である。


とりあえずすごく大雑把に説明。

パキスタン(&バングラデシュ)とインドとビルマ(現ミャンマー)とセイロン(現スリランカ)は、第二次世界大戦後までイギリス領インド帝国だった。

1947年にインドとパキスタンが分離独立し、翌1948年にはビルマとセイロンも分離独立した。東パキスタンだったバングラデシュは1971年に独立した。

デュランドラインは、1893年にイギリス領インド帝国の外相(つまりイギリス人)と当時のアフガニスタン国王の間で調印されたおよそ2,640kmに及ぶパキスタンとアフガニスタンの国境線である。

パキスタンは元もとイギリス領インド帝国だった。

だが、アフガニスタンは違った。

現パキスタンと現アフガニスタンの国境近辺には、パシュトゥニスタン(パシュトゥン人が住んでいる地域)があり、1893年パシュトゥニスタンの真ん中あたりにデュランドラインを設定し、パシュトゥニスタンを分割した。

(つまり国として明確に認められていたわけではないが、現アフガンと現パキスタンの間にパシュトゥニスタンという国があったんだろう)

それには前提条件があり、100年後に、デュランドラインで分割されたイギリス領インド帝国地域(現パキスタン)は、アフガニスタンに戻す、というものである。

すごくややこしいし、現時点(2012年9月12日)のwikipediaを読んでも、あまり詳しく書かれていないから、この事実関係を読み解くだけでも一苦労である。(実際の話、偉そうにこんなことを書いている私だって、正しく理解しているのかどうか自信が持てない)


端的に言うと、

香港は、イギリスと中国が1898年に交わした香港領域拡大協約によって(99年間の租借)、1997年に中国に主権が移動した。

マカオも、ポルトガルから中国に主権が移動した。

同じように、現パキスタンの一部(パシュトゥニスタン)も、1993年にアフガニスタンに返還されるべき土地なのである!


とはいうものの、今やパキスタンはイギリスの要請(命令)を聞く耳を持った国ではなく、それどころか現インドとカシミールの領有権を争って何回も戦争しているくらいなので、パキスタンが自らの土地をアフガニスタンに渡すわけがない。


ということで、現パキスタンは、100年前にアフガニスタン領であったパシュトゥニスタンの主権を確保するべく、正統なるアフガニスタン人がパシュトゥニスタンの主権を主張する前に、アフガニスタンに住むパシュトゥン人をタリバンというイスラム原理主義者に教育し、パキスタンの傀儡として育ていった。


というようなことがコンパクト(あとがき入れて全191ページ)にまとめられた、とんでもなくすごい本である。


うん、これはすごい本だ。


少なくとも、パキスタンとアフガニスタンの国の成り立ちについて書かれた本を、最低2冊読みたくなった(1冊だと見解が偏向するかも知れないから)。


タリバンってそんなに悪い奴等かな?

って個人的見解もあるけど、そういうのはまたいつか。

8点/10点満点


※本が好きな人達へ

この本に限ったことじゃないけど、堅い本であればあるほど売れない。売れない本は出版されない。売れないテーマは出版されない。

古本、今でいうとBOOKOFFやamazonマーケットプレイスで古本を買うことは否定しないけど、そういう所から買った本は、著者(もしくは翻訳者)にも出版社にも書店にもお金が届かない。

出版社にお金が入らないと出版社が潰れてしまう。こういう良心的な本(だけ)を出すところほど、潰れる可能性が高い。著者や翻訳者にお金が入らないと、原稿を書く人が居なくなってしまう。つまり画一的でネット的などうでも良いポピュリズム本ばかりになってしまう。

お金に余裕が無くても、読みたい本はなるべく本屋から定価で買いましょう。

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2012/09/10

スティーヴ・ブルームフィールド/実川元子訳「サッカーと独裁者 アフリカ13カ国の紛争地帯を行く」感想。
ルポ。2012年09月03日読了。

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サッカーと独裁者―アフリカ13か国の「紛争地帯」を行く

コートジボワールは、西アフリカで最も発展した国家だった。旧宗主国フランスの後押しもあったのだろうが、政治的に安定していて経済は好調、最も大きな都市アビジャンには上下水道が完備され、高層ビルが林立し、高速道路も張り巡らされていた。アビジャンのwikipediaを見ると、数枚だが写真がある。ナショナルジオグラフィック公式サイトにも、アビジャンの夜景が載っている。

参考:大林公子「アフリカの小さな国・コートジヴォワールで暮らした12ヶ月」エッセイ。2005年06月24日読了(6点)。

この国は2002年頃に政治対立から国が二分し、内戦が勃発してしまった。分かりやすく書いてしまうと、海側の南部(生粋コートジボワール人でキリスト教)と、内陸の北部(ブルキナファソやニジェールなどの移民や混血が多くイスラム教)が対立したのである。北部が反体制側で、北部の主要都市はブアケ(下地図参照)である。


大きな地図で見る


内戦状態でありながら、サッカーの国際試合は行われていた。

2007年、アフリカネイションズカップ(アジアカップみたいな大会だと思って下さい)予選で、コートジボワールVSマダガスカルが、コートジボワールのホームで行われた。

サッカー代表チームであるから、選ばれる選手に南部も北部もない。

そしてこの試合は、北部のブアケで開催された。

イングランド・プレミアリーグ・チェルシーのレギュラーで2回も得点王に輝いているアフリカサッカー最高のスーパースタードログバ(今は上海のチームに行っちゃったけど)の活躍もあり、コートジボワールは5-0で勝利し、アフリカネイションズカップ出場権を勝ち取った。

この試合を応援する人達にとって、代表チームの活躍には南部も北部も関係なく、今までの南北対立を捨て、南部と北部は手を取り合って応援した。

サッカー代表の試合が内戦を終結させたわけではないが、内戦終結のために重要な役割を担ったのは間違いなかった。

◆◆◆

アフリカ各地どこに行ってもプロサッカーリーグがあるのだが、多くの国のサッカーリーグも寂れていて、自国のリーグよりもイングランドのプレミアリーグの方がダントツに人気があり、レプリカユニフォーム(偽物含む)がたくさん出回っていて、寂れたリーグはイングランドプレミアリーグと試合時間が重ならないようにリーグ戦を組んでいたほどだった。

でも自国の代表チームとなると、人々は自国チームを応援する。代表チームが活躍すると、自国民は(一瞬にせよ)まとまる。自国がまとまることを、政治家は利用する。特に独裁者は利用する。

著者は、娯楽らしい娯楽があまりにも少ないアフリカ各地で、政治とサッカーに関連性があることを見つけ、これをテーマに何か書けないか探っていた。

調べていったら、政治家がサッカーを利用しているケースが多数見つかった。


本書の構成は以下の通り。

まえがき チーター世代が台頭するアフリカをサッカーで読み解く
第1章 エジプト―サッカーを利用した独裁者
第2章 スーダンとチャド―石油をめぐる哀しい争い
第3章 ソマリア―紛争国家に見出される一筋の希望の光
第4章 ケニア―サッカーは部族間闘争を超える
第5章 ルワンダとコンゴ民主共和国―大虐殺と大災害を乗り越えての再生
第6章 ナイジェリア―サッカー強豪国が抱える深い悩み
第7章 コートジヴォワール―サッカー代表チームがもたらした平和と統一
第8章 シエラレオネとリベリア―アフリカナンバー1になった障がい者サッカー代表チーム
第9章 ジンバブエ―破綻した国家でサッカーを操る独裁者
第10章 南アフリカ―アフリカ初ワールドカップ開催国の光と影


エジプトは30年の独裁の末に失脚したムバラクの話で、
「2006年エジプトがアフリカネイションズカップで優勝したあと、政府は統制している食料価格を高騰させた。代表チームの勝利に浮かれているときしか、政府はその政策がとれないのだ」(P47)


チャドとスーダンは、ダルフール紛争の影響で戦争しており、国交は断絶している。
ダルフールのスーダン難民がチャドに逃げる(アラブ人でイスラム教の政府側が、ベルベル人やヌビア人(9/15追記:バンツー人とかフール人とかいろいろな民族が居る)でキリスト教徒のダルフール人を迫害している)。スーダン政府軍は難民をぶっ殺すため、チャドに越境攻撃を仕掛ける。怒ったチャドはダルフール難民に反乱軍を組織し、武器や資金を援助し、スーダンの首都ハルツームに襲撃を仕掛ける。

そんな状態だが、スーダンとチャドはワールドカップの地区予選で同じ組になってしまった。当然両国政府は、サッカーを政治に利用した。


こんな感じで、アフリカ諸国で政治がサッカーを利用している様が、何例も挙げられている。


著者は丁寧に取材している。

それには理由があり、著者はイギリス人で、プレミアリーグ アストン・ヴィラの熱狂的ファンなのだそうだ。だからプレミアリーグに詳しい。アフリカ中どこに行ってもプレミアリーグは人気がある。スーダンのダルフール難民キャンプ取材を終え隣町に移動するバスに乗っているとき、スーダン公安警察に見つかり、難癖付けられて捕まってしまった。バスは走り去っていった。何時間も拘束された。しかし、「僕はイギリス人で、ベッカムは友達、オーウェンも友達、ジェラードも友達!」と言ったら開放され、それどころか公安警察が隣町に行く車まで用意してくれた(このエピソードはプロローグに書かれている)。

そのくらいアフリカ各国ではプレミアリーグに人気がある。

丁寧な取材が出来たのは、著者がプレミアリーグファンであることが取材上の武器になったことは間違いあるまい。


サッカーと政治を強引に結びつけている部分が若干見受けられる。

サッカーの話と政治の話が半々くらいの構成なので、読みようによっては、どっちつかずの中途半端な印象を受けてしまうかも知れない。

でも、サッカー好きで、アフリカの政治にも興味があれば、間違いなく面白く読める一冊である。

値段が3150円と高価なので、おいそれと買える本ではないが、それでも読む価値あり。


ま、というわけで、これからアフリカに行く人は、マンチェスター・ユナイテッドのユニフォームを着た「香川真司」と「自分」が肩を組んでいる合成写真を作って、アフリカにいる間ずっと持ち歩いていると、憧れや尊敬のまなざしで見られ、便宜を図ってくれるかもよ。


8点/10点満点

あと、この本もおもろかったよ。

桃井和馬「観光コースでないアフリカ大陸西海岸」ルポ。2007年11月19日読了(9点)


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2012/09/08

西山孝・前田正史「ベースメタル枯渇―ものづくり工業国家の金属資源問題」感想。
資源減警鐘書。2012年08月27日読了。

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ベースメタル枯渇―ものづくり工業国家の金属資源問題

尖閣諸島の問題が発生したあと(2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件)、中国政府がレアアースの輸出をストップさせ、日本の製造業を震撼させた。レアアースを中心に、レアメタルは地球上に極めて限られた地域にしか存在しない(偏在)物質であり、そんな貴重な物質を中国からの輸入に頼っていいのか!というような論調で新聞テレビ雑誌は騒いでいた。

私がレアメタルの偏在に伴う危険性を知ったのは、レアメタルが投機対象となり、値段がめちゃくちゃ乱高下するようになった頃、レアメタル専門商社の社長さんである中村繁夫が書いた「レアメタル・パニック」(2007年02月07日読了・7点)を読んだことによる。

2007年頃に私がこういう本を読んでいたのは、当時私は株にしこたま金を突っ込んでいて、やっぱ資源株は有望だよなあ、どこか良いところないかなあ、と投資先のネタを探していたのである。その昔、東邦チタニウムという会社の株で100万円以上儲けたことがあったので、二匹目のドジョウを探していたのですよ。結果、行き着くところまで行ってしまって、モスクワ証券取引所に上場されているルクオイルノリリスクニッケルノリリスクという環境破壊が深刻な町にある)という会社に手を出し、リーマンショックで塩漬けに至る。

そのあと、谷口正次「次に不足するのは銅だ」(2009年04月28日読了・8点)というのを読んで、なるほど資源というのはレアメタルだけが足りないのではなく、いろんな資源が不足してきていると言うことを知った。


で、本書。

本書の著者、西山孝氏は京大名誉教授で、資源地質学、資源経済学が専門。共著者の、前田正史氏は東京大学副学長、循環材料学、材料熱力学、素材プロセス工学、環境科学を専門としている。


その二人が書く本書の内容は、レアメタルというのはベースメタル(鉄、アルミ、銅、鉛、亜鉛など)に対して埋蔵量も生産量も少ないからレアメタルなのである、というところから始まり、

メタル(ベースメタルでもレアメタルでも)の量を量る数値として、埋蔵量を消費量で割る=耐用年数、というものがある。

例えば2009年の亜鉛の耐用年数は18年であり、このままの消費量が続くと18年後には枯渇する。

ところがどっこい、毎年新しい鉱床がどこかしらで発見される。だから何年経っても耐用年数は減らない。このあたりの理屈は石油と同じ。

新しい鉱床も毎年毎年発見されるわけではないが、今まではコストの問題で採掘されていなかった鉱床(目的とするメタルの含有率が低い等)が、技術の発展とともに採算に乗るようになってくる。オイルサンドから石油を抽出することがコスト的に見合うようになったことと同じ。

石油は消費すると無くなってしまうが、メタルはリサイクルが可能。

ところが本書で(も)指摘されているのは、銅に関してだけは、新しい鉱床が発見されたり、採算の合わない鉱床を復活させたり、今まで使ってきた銅をリサイクルするだけでは足りなくなる可能性があるらしい。

なぜか。

銅は電線に使われる。電気信号は光ファイバーで送ることが出来る。光ファイバーは硝子かプラスチックである。しかし電気を送る電線は銅が最も効率が良い(かつ今のところ安い)。効率が良いというのは、電気抵抗が小さいので送電ロスが少ないということである。

世界各国の中進国、発展途上国の電力網が整備されるに伴い、銅線の需要がものすごい勢いで高まってきているのである。


次、レアメタル。

レアメタルは、目的とするレアメタルそのものを採掘する鉱山と、他のベースメタルを作るときに出る不純物の塊から抽出されるレアメタル(これをバイプロダクトと言うらしい)がある。

ビスマスやタリウムは鉛の、インジウムやカドミウムは亜鉛の、モリブデンは銅の、レニウムは銅から採れるモリブデンのバイプロダクトなのだとか。

だからモリブデンを増産しようと思っても、増産するためにはまず銅を増産しなければならず、銅には需要があるから銅鉱山開発は行われるけれど、銅鉱山に必ずモリブデン精製工場を併設するとは限らないわけで、モリブデンが含まれている銅の精製カスが銅鉱山の近郊に放置されている場合もあり。


そのような話を分かり易く解説するところから本書は始まり、意外と進んでいるリサイクルの現状や、今後の動向予想など、図表も多く丁寧な本である。


「レアメタルパニック」系の資源関連本に興味がある人は読んで損のない一冊。


とはいうものの、2時間で読み終えてしまう程度の厚さなので、値段(1890円)は高く感じる。


7点/10点満点

私が読んだこの手(資源絡み)の本
・井田徹治「データで検証 地球の資源」2012年01月30日読了。7点
・中嶋猪久生「資源外交 連戦連敗―アザデガン油田の蹉跌」2011年11月03日読了。7点
・谷口正次「次に不足するのは銅だ」2009年04月28日読了。8点
・浜田和幸「ウォーター・マネー」2008年09月09日読了。7点
・柴田明夫「水戦争」2008年01月23日読了。3点
・柴田明夫「エネルギー争奪戦争」2007年12月21日読了。7点
・小若順一「リサイクルは資源のムダ使い」2007年07月06日読了。3点
・中村繁夫「レアメタル資源争奪戦」2007年03月19日読了。3点
・中村繁夫「レアメタル・パニック 石油ショックを超える日本の危機」2007年02月07日読了。7点
・泉谷渉「電子材料王国ニッポンの逆襲」2006年05月24日読了。4点
・中村靖彦「ウォーター・ビジネス」2005年08月16日読了。9点


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2012/09/04

スコット・カーニー/二宮千寿子訳「レッドマーケット 人体部品産業の真実」 の著者インタビュー。

ダイヤモンドオンラインに、


需要ある限り、闇のビジネスは止まらない
世界の人体部品市場「レッドマーケット」の実態
――ジャーナリスト スコット・カーニー氏に聞く

という記事が載っていたのでご紹介。


私的には9点/10点満点を付けた本です。

スコット・カーニー「レッドマーケット 人体部品産業の真実」臓器売買ルポ。2012年04月30日読了。9点

ダイヤモンドオンラインに登録しないと読めないかも知れませんが、登録制だったとしても無料です(私は金を払っていないので)。



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2012/09/03

世界のプロサッカーリーグランキング。

IFFHS(国際サッカー歴史統計連盟) というのがあって、

ドメインから見るとIFFHSってデンマークっぽいんだけど、

リンク先(リンクしないのでコピペって下さい)
http://www.iffhs.de/?b6e28fa3002f71504e52d17f7370eff3702bb1c2bb11

それによると2011年のリーグ評価は

1. España 1194,0 スペイン・リーガエスパニョーラ
2. England 1103,0 イングランド・プレミアリーグ

3. Brasil 889,0 ブラジル・カンピオナート・ブラジレイロ・セリエA

4. Portugal 886,0 ポルトガル
5. France 883,0 フランス・リーグ・アン
6. Deutschland 880,0 ドイツ・ブンデスリーガ
7. Italia 873,0 イタリア・セリエA
8. Argentina 840,0 アルゼンチン

9. Nederland 791,5 オランダ・エールディヴィジ
10. Chile 741,5 チリ
11. Russia 733,5 ロシア・プレミアリーグ
12. Paraguay 725,0 パラグアイ
13. Belgique 722,5 ベルギー
14. Ukraine 697,0 ウクライナ
15. México 629,0 メキシコ
16. Ecuador 619,5 エクアドル
17. Colombia 617,0 コロンビア
18. Republic of Korea 589,0 韓国
19. Schweiz 588,5 スイス
20. România 588,0 ルーマニア
21. Greece 582,0 ギリシャ
22. Scotland 560,0 スコットランド
23. Japan 539,0 日本のJリーグ
24. Česká Republika 529,5 チェコ
25. Türkiye 524,5 トルコ
26. Österreich 510,0 オーストリア
27. Israel 507,0 イスラエル

何を元にスコア化しているのか分からない(リンク元をちゃんと読んでない)けど、なんでこんなことを調べているかというと、「サッカーと独裁者」というアフリカ諸国のサッカーリーグと政治に関係性があるのでは?という本を読んでいるからです。(本の感想はそのうちアップします)

ポルトガルリーグが4位ってのはホンマか?とか、

韓国リーグがJリーグより上ってことは無いだろう?(代表チームのランキングならともかく、リーグとして比べたらこれは違うんじゃね?)

スペインは、レアルマドリードとバルセロナが飛び抜けているだけで、リーグとしてはどうなのよ(少し前までバレンシアに存在感があったが)、それにユーロ危機でスペイン経済はどん底まで来ているから、2強以外はスポンサーが獲得できなくてサッカーどころじゃなくなるでしょ、

それに比べるとプレミアリーグは、マンチェスターユナイテッド、チェルシーの2強にマンチェスターシティが加わって、アーセナルとリヴァプールも頑張っているぞ、と。

しかしやっぱりアレですね、イタリアは八百長サッカーが明るみに出てから、リーグの力が落ちちゃったんだね、私がサッカーをしていた30年くらい前は、イタリアがダントツだったんだけど。

フランスリーグ自体の力は知らんけど、パリ・サンジェルマンはアラブマネー(カタール資本だって)が流れ込んでいて、信じられないくらいの金をかけて補強しているよね、

それを言ったらイングランドのマンチェスターシティだってUEAの金満アラブがスポンサーになったから強くなったんじゃね、とか、

そーゆーことを言い出すと、本田圭佑が居るCSKAモスクワだって、ロシアの石油会社がバックについているから、移籍金目当てで本田を放出してくれないのよ。(金に困ってないから、本田を出す必要がないってこと)

さらには、上海申花はトウの経ったドログバを獲得したりしてますよ、ってあいつらのバックは(たしか)中国不動産王ですから(なので、中国不動産バブルがはじけつつある今、ドログバへの給料未払い問題が出てきているのね)


まあそんなこんなで、各国の競合クラブには金満石油会社や不動産王がバックにいて、でも各国の上位2~3クラブだけが資本主義の成功者に支えられているリーグってのは、プロサッカーリーグとして正しい在り方なのか?と思うことしきりなわけですよ。


まあつまり、Jリーグ頑張ってるじゃん。


ってことなんですが。


個人的な感想だけで言えば、Jリーグってベルギーリーグより上だと思うんですけどね。と言うことは世界トップ15には入るってことなんだけど、個人的感想なんで根拠無し。


この話、詳しくは「サッカーと独裁者」の感想にて。

(5~10日後にアップ予定)



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河内祥輔「日本史リブレット22 中世の天皇観」感想。
日本史特講の教科書。2012年08月25日読了。

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日本史リブレット〈22〉中世の天皇観

私は法政の大学生(通信教育)であります。

通信教育という名称だけで考えれば、卒業まで全て自宅学習と思われるかも知れませんが、法政の場合、通学授業(スクーリング)で30単位以上とらないと卒業できません。

このスクーリング、時間さえあれば、夏に6教科12単位、冬に4教科8単位、春と秋は2教科4単位とれます。

夏と冬は、1教科につき午前3時間もしくは午後3時間×6日連続。これが夏は3週間、冬は2週間開講され、

春と秋は週1回90分×12~14週連続(教科によって変わる)、月曜から金曜まで1日2教科(18:30スタートと20:10スタート)、各曜日全部異なる教科が開講されます。(1~2年生なら10教科20単位も可能…なのかな? でも3年4年生が受ける必須教科は2教科しかなかったり)


このスクーリング30単位というのはなかなか苛酷で、夏に3週間びっちり受講しても12単位しか得られない。会社勤めの人が夏に3週間の連続休暇をもらうなんて、普通の会社ならまず無理。

私が今に至るまで無職を続けているのも、スクーリングを目一杯受講したいためで、入学から2年かけ、今夏ようやっと30単位の目処がついたのです。

ちなみに、普通の会社に勤めている人向けに地方スクーリングというのもあって(これは東京では開講されない)、金土日か、土日祝の3日間ぶっ通しで開講されるものもあります。地方スクーリングというだけあって、青森だ広島だ福岡だ鹿児島だ、なかなか金のかかる場所で開催されます。名古屋スクーリングは関東の通教生にも大人気。


何の話かというと、今回読んだ「日本史リブレット22 中世の天皇観」という本は、夏スクーリングで開催された日本史概論という教科の教科書なのです。

教科書なんだけど、内容が興味深く、100ページほどと手軽なページ数だったこともあり、教科書なのに全部読んでしまいました。


中世日本、西暦1200年頃の天皇とはどのような位置づけだったのか。

1339年、北畠親房(きたばたけちかふさ)によって書かれた「神皇正統記(じんのうしょうとうき)」と、遡る1221年頃に慈円(じえん)によって書かれた「愚管抄(ぐかんしょう)」を元に、中世の天皇観をひもとく。

初代天皇は神武(じんむ)。そこから12代後は日本武尊(やまとたけるのみこと)が直系だったが、夭逝(早死のこと)したので日本武尊の弟に当たる成務(せいむ)が13代天皇を継承する。

そこからまた後、
16代は応神(おうじん)、
17代は直系の仁徳(にんとく)、
18代も直系の履中(りちゅう)、
しかし19代は履中崩御のため、弟の反正(はんぜい)が兄弟継承、
20代は反正が皇太子を決めずに崩御したので、履中、反正の弟允恭(いんぎょう)が兄弟継承、

21代は允恭の直系、安康(あんこう)、
22代は安康の弟、雄略(ゆうりゃく)。

この22代雄略天皇が、実在がほぼ確認されている最初の天皇である(「日本書紀」にその存在が書かれているから。21代以前の天皇は「古事記」によるものだが、「古事記」は神話と正史の境が曖昧らしい。それに対して「日本書紀」は日本の正史)


この雄略天皇の在位期間は、西暦で456年12月25日 - 479年9月8日。

(「日本書紀」は720年完成)

23代は雄略の直系、清寧(せいねい)。

しかしここで清寧の血統は途切れ、24代は18代履中の孫に当たる顕宗(けんぞう)が継承。

25代は顕宗の弟仁賢(にんけん)

26代は仁賢の直系、武烈(ぶれつ)。


武烈に男子の血統が存在しなかったため、17代仁徳から続いてきた血統はここで傍流へと押し流され、


朝廷が16代応神の玄孫(やしゃご-孫の孫)に当たる継体(けいたい)を探し出し、継体を27代天皇に据えた。


このように、本来、本流になれる血統ではなかったが、本流になるべき血統の男子が途切れたため、傍流が本流になってしまうケースがいくつか見られる。

27代継体、
49代光仁(こうにん)、(40代天武(てんむ)の血統が48代称徳(しょうとく)で途切れた)
58代光孝(こうこう)、(55代文徳(もんとく)の血統が57代陽成(ようぜい)が殺人を犯した悪君だったので朝廷が退位させた)

この3人は傍流から主流になった典型的な3例なのだとか。


このような話が書かれている本である。こういうディープな日本史はまったく知らなかったので、とても興味深かった。

まあ、著者の河内先生の授業を聞きながら読んだから、理解しやすかったというのもありますけれども。

7点/10点満点


どうでもいいけど、北畠親房も神皇正統記も慈円も愚管抄も、全て一発変換したATOKはすごいなあ。

……でも一発変換を一発返還と誤変換し、一発で一発変換と変換してくれないんだよなあ。


※9/3追記 神話の世界
初代天皇神武天皇ってのは……

伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)という神の夫婦が日本列島を産み、
この島々を治める君主として天照大神(あまてらすおおみかみ)を産み、
天照大神は「正統」第一世となる。

天照大神は太陽神の姿で生まれたため、天上にいるのがふさわしいため、高天原(たかまがはら)の神となった。


天照大神(初代)はヲシホミミノミコト(二代目)を養子にし、そしてヲシホミミノミコト(二代目)の子であるニニギノミコトに(三代目)に地上の君主と成るよう命じた。

ニニギノミコト(三代目)は天から日向の高千穂に降った(天孫降臨)。

ニニギノミコト(三代目)の子がホデミノミコト(四代目)、ホデミノミコト(四代目)の子がフキアヘズノミコト(五代目)と言い、ホデミノミコト(四代目)フキアヘズノミコト(五代目)の二人は日向に留まった。

フキアヘズノミコト(五代目)の子が神武天皇(神の六代目で初代天皇)であり、神武天皇は大和に入り橿原(かしはら)に都を定めた。

だそうだ。

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