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2012/09/14

平尾武史・村井正美「マネーロンダリング―国境を越えた闇金融ヤクザ資金」感想。
ルポ。2012年09月08日読了。

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マネーロンダリング―国境を越えた闇金融ヤクザ資金


マネーロンダリング、昔で言うところの「資金洗浄」。
関連する内容の本としては、以下を読んでいる。

ニコラス・シャクソン「タックスヘイブンの闇」2012年07月2日読了(8点)。

橘玲「マネーロンダリング入門」2012年04月20日読了(9点)。

福原直樹「黒いスイス」2008年06月11日読了(7点)。


◆本書の内容(紀伊國屋bookWebより)

高利を貧るヤミ金融の巨大ネットワーク―それを背後から操っていたのは指定暴力団山口組系組織だった。
捜査陣は苦難の末に犯行手口を解明、事件を摘発するが、莫大な収益は香港、スイスへとすでに消え去っていた。
刑事、検事たちは、国境を越えるブラックマネーの正体をいかにして暴いたか。
警視庁担当記者が、「五菱会ヤミ金融事件」の舞台裏を克明に追ったクライムノンフィクション。

プロローグ
第1章 山口組の資金源
第2章 プライベートバンクの闇
第3章 カネの運び屋
第4章 ヤミ金融の帝王
第5章 海外捜査の壁
第6章 暴かれた手口
第7章 消えたカネの行方
第8章 意外な判決
エピローグ
海外へ消えるブラックマネーの現在(文庫版書き下ろし)


◆感想

本書は、読売新聞の記者二人が書いた本である。

骨太な内容でありながら、税込み499円である。今どき良心的な値付けである。


それはさておき、200年に長崎県警により捜査が開始されたヤミ金事件。事件は広がり、警視庁他三県警の合同捜査になり、香港やスイスの捜査当局の力を借り、2004年に犯人グループを逮捕。

実際には、マネーロンダリング犯罪を犯罪として立証するための法整備が遅れていたため、日本国内の金融機関も非協力的であり、また「何の犯罪」で立件するのか捜査関係者の間でも意見が割れたり、海外に送金されてしまった不正蓄財資金を操作する術=外国での捜査権が無く、外務省を巻き込み各国捜査当局との協力を得るまでにやたらと時間がかかった、など問題が数多く浮かび上がった。


本書で取り上げているマネーロンダリングの手法と顛末の一端を記すと、

クレディスイス(銀行)香港の日本人営業マンが、タコ焼き屋のオヤジ(資産持ち)の営業担当になる

・タコ焼き屋のオヤジが、一度会っただけの金持ちを営業マンに紹介する。なぜかというと、クレディスイスに口座を作るには誰かの紹介が必要で、紹介者には謝礼が払われる。

・金持ちは早速クレディスイスに口座を作り、割引金融債(ワリショーとか、ワリコーと呼ばれていた代物)10億円分を入金。

・その際、誰がこの金を換金しようとしたのか知られるのが嫌だった金持ちは、営業マンとタコ焼き屋に入金の実行役をさせる。クレディスイスは日本に支店がない(1999年に不正行為で銀行免許取り消し)ので、また逆に言えばこれを利用して、

金持ちが割引債を買う(割引債は誰でも買えた。1千万円単位でもOK。銀行に持っていけば誰でも換金できる)
 ↓
割引債をタコ焼き屋に預ける
 ↓
クレディスイス営業マンが「割引債の持参人はクレディスイス香港の正式な代理人である」とスタンダードチャータード銀行東京支店に連絡しておき、なおかつ割引債の券面番号も連絡しておく
 ↓
スタンダードチャータード銀行東京支店は、割引債を換金し(その後、東京三菱銀行にあるスタンダードチャータード銀行の口座(銀行間口座)に入金し)てくれと日本証券代行に依頼する
 ↓
タコ焼き屋が割引債を日本証券代行に持っていく(ちなみにタコ焼き屋は持参した割引債の5%を手数料として金持ちから受け取る約束になっている)
 ↓
スタンダードチャータード銀行東京支店からクレディスイス香港にお金が渡る
 ↓
クレディスイス営業マンが、クレディスイス香港に入金された金を、金持ちの口座に振り分ける。

・つまり、割引債の金は、クレディスイス香港の金持ちの口座に入るのではなく、スタンダードチャータード銀行東京支店とクレディスイス香港の銀行間取引に紛れ込ませたのである。

・同じような手口その他で、金持ちはあっという間に46億円もクレディスイス香港の口座に入金。

・その金持ちはヤミ金融の大物で、山口組関係者だった。

・結果的には、ヤミ銀グループだけではなく、タコ焼き屋も、クレディスイス営業マンも逮捕された。


・捜査の途中で、クレディスイスのスイス本社が金持ちは素性が疑わしいから、金持ちの口座にあった51億円を凍結し、スイスの捜査当局経由で日本の捜査当局に連絡があった。

で、この凍結した51億円、スイスと日本で山分けしよう、というのがスイス側の発想。全額日本に戻すんじゃなく、山分け。これはスイスが強欲なのではなく、国際的な金融犯罪の場合、差し押さえた金は山分けするのが普通みたい。(今回の事件の場合、被害者に返金するのが原則であるとして、スイス側と一悶着あった)


マネーロンダリングの本を一冊でも読んだことがあれば、今回のはそれほど複雑ではない手口だけど、ひとつ国をまたいだだけで、どれだけ捜査が困難になるか。それがよく分かった。

2012年の今は、日本の法体系や各国の協力体制など多少はマシになっているだろうけど。


ばれてないだけで、この手の犯罪は山ほどあるんだろな、と思う。


いつものように最後は単純な感想ですが、面白かったです。

マネーロンダリングに興味があれば、読んで損のない一冊。


8点/10点満点



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