« 平尾武史・村井正美「マネーロンダリング―国境を越えた闇金融ヤクザ資金」感想。
ルポ。2012年09月08日読了。
| トップページ | 冲方丁「天地明察(上)」感想。
時代小説。2012年09月13日読了。 »

2012/09/16

伊藤正孝「ビアフラ 飢餓で滅んだ国」感想。
ビアフラ戦争ルポ。2012年09月11日読了。

にほんブログ村 本ブログへブログランキングに参加しております。
バナーをちょこっと押していただけると恐悦至極なり。

ビアフラ飢餓で亡んだ国


私的10点満点のルポ。


原著(「ビアフラ潜入記」)は1970年に刊行され、文庫版の本書は1984年に出版された。文庫化に際して、第3部「飢餓と部族問題」約35ページが加筆されている。

本書は現在絶版であり、古本でしか入手できない。


本書の著者である伊藤正孝氏(朝日新聞記者)の「南ア共和国の内幕 アパルトヘイトの終焉まで(増補改訂版)」2012年02月21日読了、も私的10点満点を付けた。


◆◆◆

ナイジェリアで、ビアフラ戦争という内戦があった。ざっくりと説明する。(以下wikipediaから丸ごと引用している部分もあり)

ナイジェリアには、
北部のイスラム教徒主体のハウサ族、
西部のイスラム/キリスト教混合のヨルバ族、
東部のキリスト教主体のイボ族、
の三大部族があり、その他の多くの少数民族ともに存在した。

イギリス植民地時代には、イボ族は比較的教育レベルが高く、下級の官吏や軍人を多く輩出し、また商才もあり「黒いユダヤ人」と呼ばれることもあった。

軍のクーデター未遂などを経て、北部(ハウサ族多し)でイボ族が虐殺される事件が相次いだため、1967年、東部のイボ族は「ビアフラ共和国」として東部州の独立を宣言した。ちなみに、その当時既にナイジェリア東部では石油が採掘されていた。

当初は士気が高かったビアフラ側(東部イボ族)だったが、ナイジェリア軍の手により海岸の拠点町ポート・ハーコートが陥落(1968年5月18日)してから、内陸で孤立してしまった。

ビアフラを支援していたのはフランス(石油狙い)、ポルトガル、コートジボワール(フランス寄り)、ガボン(フランス寄り)、タンザニア(中国寄り)、ザンビア(中国寄り)、ローデシア(現ジンバブエ)、南アフリカ。

反対にナイジェリア軍を支援していたのはイギリス、アルジェリア、エジプト、東ドイツ、ソ連。

まだバリバリ東西内戦の頃であり、イデオロギー対決の部分もあったが、海岸線を失い補給ルートを確保できなくなってしまったビアフラ側は、1970年1月9日に降伏する。


海岸のポート・ハーコートを失った後の拠点となった、内陸のオウェリ。


大きな地図で見る


◆◆◆

1969年6月、国際赤十字が救援飛行を打ち切った。それまで悲惨な戦争を訴えるため外国人ジャーナリストを積極的に受け容れていたビアフラだったが、内陸に押し込められたビアフラは、1週間で餓死者3万人、小学生がゲリラ戦の訓練を受けているなど、悲惨な状況になっていた。

ビアフラ政府代表部から入国許可を得るため、著者である伊藤記者と高橋カメラマンは1969年9月にタンザニアの代表部に行く。入国許可が下りない。エチオピアの代表部に行く。入国許可が下りない。パリに飛ぶ。ロンドンに飛ぶ。交渉は遅々として進まない。飢餓が進んでいるビアフラでは、ジャーナリストを飛行機で運ぶくらいなら食料を中心とした救援物資を運びたいからだ。

運も味方し、12月になり、フランス赤十字の飛行機でビアフラに入国できることになった。ガボンのリーブルビルで待機することになった。リーブルビルでも待たされた。

しかし12月24日、遂にビアフラ行きの飛行機に乗ることが出来た。

ビアフラのオウェリに近いウーリー飛行場に行くまでに、ナイジェリア軍が発砲してくる。当たらないようにするため、真夜中に飛ぶ。ウーリー飛行場は道路と平行にジャングルを切り開き、ただ鉄板を敷いただけの空港だった。ナイジェリア空軍を警戒しているのか、滑走路の灯りも最低限しかついていない。

◆◆◆

そして遂に伊藤記者と高橋カメラマンはビアフラに入国した。

オウェリの町に行ったら、髪の毛が金髪っぽい色になっている子供や、白人と黒人の混血のような子供が大勢居た。「彼らは混血児なのか?」とビアフラ代表部のスポークスマンに聞くと、「栄養失調の度が過ぎて、体から色素が無くなっている」との返事。

黒人と言えばワキガがきつい。しかし、ビアフラではあまり臭いを感じない。イボ族の特徴かと思っていた。しかし1月1日、パリから持参した食べ物で正月を祝っているとき、ビアフラ代表部のスポークスマンにご馳走したら、ワキガの臭いが漂ってきた。飢餓はワキガの臭いも消すようである。

ビアフラを支援しているヨーロッパのキリスト教のグループは、食糧配給の基準を以下のように定めていた。
1.ピノピンして働ける者
 週1回の麦がゆ
2.妊婦又は衰弱が目立つ者
 週2回の麦がゆとミルク4杯
3.明らかに餓死直前の者
 週3回の麦がゆとミルク6杯

1日に3回の食料ではなく、週に3回である。

そのくらい、ビアフラには食べ物がなかった。

必須ミネラルである塩もなかった。戦争前は良いところのお嬢さんだった身なりの若い女性が、塩と交換で売春しようと持ちかけてきた。

ビアフラの海外担当情報官は
「欧州で1万人餓死すれば大騒ぎになる。アジアで10万人死ねば、国連が解決に乗り出す。しかしビアフラでは2年半で200万人が餓死したのに、世界中から無視された」


◆◆◆

ビアフラ独立を目指したイボ族は、アフリカにある数々の民族部族の中でも飛び抜けて商売が上手い。イボ族が暮らす地域で石油が見つかった。他部族のやっかみも含め、イボ族が攻撃対象になった。それがビアフラ独立のきっかけである。

しかし著者は言う。

イボ族は、15世紀以降のアラブとヨーロッパの奴隷貿易に手を貸していたのでは?

ビアフラ人にこのことを聞くと、皆黙ってしまった。

ビアフラのある地域は、別名「奴隷海岸」である。


◆◆◆

伊藤記者らは「飛行場まで行く車の燃料が無いから、まだかろうじて燃料が配給できるうちに早くビアフラを離れろ」と忠告されていた。高橋カメラマンは1月5日に離脱した。

伊藤記者は1月7日に離脱した。

1月9日に、ビアフラは降伏した。


◆◆◆

とんでもないルポだ。

私は現代アフリカに興味があり、現代アフリカの本ばかり読んでいたが、先日読んだカプシチンスキ「黒檀」といい、伊藤記者の「南ア共和国の内幕」といい、独立黎明期のアフリカは、今よりもっととんでもないことがあちこちで起きていたのだな。

名作と言われるルポを、これから私はたくさん読んでいきたい。


10点/10点満点


|

« 平尾武史・村井正美「マネーロンダリング―国境を越えた闇金融ヤクザ資金」感想。
ルポ。2012年09月08日読了。
| トップページ | 冲方丁「天地明察(上)」感想。
時代小説。2012年09月13日読了。 »

■アフリカ」カテゴリの記事

◇ルポ・ドキュメンタリー」カテゴリの記事

☆私的10点満点」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。私はフォーサイスの『ビアフラ物語』を読みました。

これは、著者のフォーサイスが宣言しているように、ビアフラの、正確にはオジュクの側に立ったルポルタージュです。そのため、その中立性を疑われていますが、それでも、書かれている内容に衝撃を受けました。

子供や赤ん坊が飢えて死んでいく様を目の前にして、「飢えは武器であり、それを叛徒に使うことを躊躇わない」という言葉には、人はどれほど残酷になれるのかと背筋も凍る思いをしました。

天野さんの、一つのテーマに沿って何冊もの本を読むというのは、読書としてあるべき姿で、記事を拝見して感服しています。立花隆がそうしているそうです。

これからも示唆に富む記事を楽しみにしてます。

投稿: rascal | 2012/09/18 23:42

rascal様、コメントありがとうございます。

私の場合、ひとつのことにのめり込むと、その事柄について徹底的に知りたくなってしまいます。それ故、同じテーマの本を何冊も読むことに。

意図していたわけではないのですが、立花隆氏と同じとは、光栄と言いますか、恐れ多いと言いますか。

ちょっと関係ない話になってしまいますが、私が反原発活動家を信用できないのも、彼らが反原発スタンスの科学者の意見だけを採用して、反原発を普及させようとしているところに違和感を感じます。

チェルノブイリ周辺のベラルーシやウクライナでは健康被害が発生しています。それは事実でしょうし、因果関係として原発の存在は無視できないと思います。しかし、チェルノブイリから25年経った現在、医学が進歩し、25年前は防げなかったことを防げるようになっている、というスタンスの反原発活動家は見たことがありません。

25年間、世界中の医者が何の手だても打ってこなかったというのでしょうか。

反原発活動家は、もう少し、原発肯定派の意見に聞く耳を持った方が良いと思うのです。

そういうわけで、私は同じテーマの本を何冊も読んでいます。

とはいえ根本的なところでは、このブログは私の備忘録であり、読書感想文であり、そういう意味に於いて、何年経っても文章が下手くそで恥ずかしい限りです。

今後ともご贔屓にどうぞ。

投稿: 天野才蔵 | 2012/09/19 14:47

追記

フォーサイスの『ビアフラ物語』、そのうち読んでみようと思います。

何年か前までは、フォーサイスは、クライブ・カッスラーのような娯楽小説の大家なのだと思っていましたが、ベースはロイターの記者なんですよね。

今さらながら興味津々です。

投稿: 天野才蔵 | 2012/09/19 14:50

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/43036/55625458

この記事へのトラックバック一覧です: 伊藤正孝「ビアフラ 飢餓で滅んだ国」感想。
ビアフラ戦争ルポ。2012年09月11日読了。
:

« 平尾武史・村井正美「マネーロンダリング―国境を越えた闇金融ヤクザ資金」感想。
ルポ。2012年09月08日読了。
| トップページ | 冲方丁「天地明察(上)」感想。
時代小説。2012年09月13日読了。 »