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2013/01/05

黒田龍之助「はじめての言語学」感想。
言語学入門書。2012年12月22日読了。

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はじめての言語学


本エントリーは渾身の感想文であります(書くのにかなり手間がかかった、ってだけですけど)


言語学というのはいかなる学問であるか。真面目に解説するととても面倒且つ理解されにくいので、分かり易く且つ誤解を恐れず簡単に書く。

というのが本書。

本書は、私が数年前に海外で日本語を教える先生に転身しようかなと漠然と思い立ち、そのために必要な日本語教育能力検定の資格を取ろうとしていた頃に買った本。だったような記憶が。

※横道に逸れる

英語を喋れる外国人が、日本で英会話スクールの講師になるのに特別な資格は必要なく、英語を喋れればそれでいい。講師の採用基準は講師のルックスと、安月給でも我慢できるかどうかに尽きる(と昔通っていたベルリッツの講師が言っていた)。英語は世界中で研究が進んでいる言語なので、どの国に行ってもきちんとした英会話の教材が充実しているからなのだそうだ。

(1/5追記:注:日本の小中学校で英語の先生をやっている外国人は、教員免許を持っているハズです)

対して、日本人が外国に行って日本語会話スクールの講師になるには、何らかの資格を持っていないと難しい。世界中、どの国でも日本語研究者は少ないから、日本語会話の教材が充実していないからなのだそうだ。

その資格である「日本語教育能力検定試験」というのはかなり難しく、例えば
「私はご飯を食べました」
という文章に対して、どれが主語でどれが動詞でどれが目的語で……ってのをきちんと分かっていないと受からない試験である。

私=主語
は=助詞
ご飯=目的語
を=助詞
食べ=動詞
まし=助動詞
た=助動詞

「食べました」は、「食べる」の下一段活用の丁寧語の完了形らしいです(違うかも)。

※Yahoo知恵袋からの引用
「食べる」(下一段活用の動詞) の連用形→「食べ」
「ます」(丁寧を表す助動詞) の連用形→「まし」
「た」(完了を表す助動詞) の終止形。
※Yahoo知恵袋からの引用終わり


連用形って古文だけの文法じゃないのか!

と思ったあなたは正解で、多くの日本人が日本語の文法を学ぶのは古文を読むために習うであると思いがちだが(というようなことが本書に書いてある)、日本語の古文を解読するために学んだ日本語文法は、古文の文法じゃなくて日本語文法そのものなのである。

兎にも角にも、日本語を真面目に文法で説明するのは難しい、こんなことを他人に教えられるレベルに達するにはどれだけ勉強しなきゃならないんだ……ってことで、日本語教育能力検定の資格を取るのは諦めました。

それはさておき、先ほどの例文に関し、主「語」と目的「語」と動「詞」と助動「詞」を一緒くたにするなよ、などと文句を言わないように。

※本書の感想に戻る

で、本書に記載されている話。


つまり日本語は「主語(S)+目的語(O)+動詞(V)」という組み合わせが標準形になる言葉である。
 私=主語
 ご飯=目的語
 食べ=動詞
もちろん例外はある。「私は食べましたご飯を」でも意味は通じるっちゃ通じる。

ちなみに英語は「主語(S)+動詞(V)+目的語(O)」であり、
アラビア語やヘブライ語、アイルランド語は「動詞(V)+主語(S)+目的語(O)」である。


ま、そんなこんなで分析していくと、言語学というのは難しい。

何が難しいかというと、言語学というのは文法を学ぶ学問ではないからなのである。文法を研究する学問は文法学である。言語学じゃないのである。(じゃあ何で日本語の文法の話をつらつら書いたのかというと、次回読書感想文に続くからなのである)

言語学とは、その言葉が、どのような音を発し、どのように意思疎通をしているかを研究する学問なのである(たぶん)

なので、音を分析する学問を、文字で表現するのは極めて難しいのである。


というわけで、例。



◆コサ語
舌打ちをするとき「チッ」という音を口から出る。まあ普通の人なら誰でも一度は舌打ちしたことがあると思うが、これを舌打音(吸着音の一種らしい)という。

のどの奥にある声門というところを開け閉めして出す放出音というのがあるらしい。「ぐえっ」とか「ぽこん」という音になるらしい(本書にそう書いてある)

この舌打音と放出音を両方(下のビデオでは clicking sounds と言っている)使う言葉が、南アフリカの公用語のひとつであるコサ語。この言葉を喋る人数(話者)は約790万人!ですって。

下の動画の1:27頃から、コサ語独特の喋り方例が出てきます。(英語とちゃんぽんなので、英語との境目が分かりづらいかも、ですが)

チッチやらチュッチュやらカックッコと鳴らしてますが、これは苛々して舌打ちしてるんじゃなくて、コサ語の発音なんですって。



◆中国語
中国語は音の上げ下げで、同じ音でも意味が異なってくる。それを声調といい、中国の場合は4種類あるので四声という。

中国語練習の有名な早口言葉で、
妈妈骑马,马慢,妈妈骂马
日本語訳:
お母さんが馬に乗る。馬が遅くて、お母さんは馬を罵る

と言うのがあり、この発音は、
mā ma qí mǎ mǎ màn mā ma mà mǎ

マーマチーマー マーマン マーママーマーと、言っているのは全部「マー」なんだけど、
母の妈はmā
馬の马はmǎ (ǎは正しく表示できていないかも。下のビデオを見て下さい)
罵るの骂はmà

となる。

下の動画の0:15頃から、マーマチーマーの中国語が出てきます。(ポルトガル語とのちゃんぽんなので分かりづらいかも、ですが)

ちなみに中国語を勉強する場合は、四声の前に拼音(ピンイン)=要するに中国語の「あいうえお」を勉強しないと、中国語をマスターするのは無理らしいです。

日本語は、あかさたな、がぎぐげご、ぎゃぎゅぎょ、などを全部区別しても110音くらいしか存在しないのに対し、中国語は拼音だけで400音以上あり、更に四声が加わります。



◆ベトナム語
ベトナム語の声調は、四声じゃなくて六声あるらしく、中国語より難しいとか。
六声のイントネーションは参考リンクの図をご覧あれ:「ふむふむベトナム」

下のビデオは「ベトナム語練習 旅行につかえるベトナム語」
このビデオだと今ひとつベトナム語の難しさが伝わらないけど、ビデオのベトナム文字に六声の発音記号が書かれているので、ご参考に。






ね、難しいでしょ。

コサ語なんて、「チッチッぺらぺらチュッチュぺらぺらカックッコッぺらぺら」と舌打ちが言語なんですよ。

そんなこんなで分析していくと、フランス語とイタリア語とスペイン語とルーマニア語には何となく共通点があることを見つけた学者がいて、辿っていくとインドの古代語であるサンスクリット語が起源であることが分かった。こういうことを見つける学問を比較言語学という。らしい。

その分析結果によると、インドのベンガル語と英語は親戚であり、
英語は「インド・ヨーロッパ語族/ゲルマン語派/西ゲルマン語群」
ベンガル語は「インド・ヨーロッパ語族/インド・イラン語派/インド語群」
なんですって。


2012年の秋、私は大学スクーリングで「地誌学特講・東南アジアの起源」について学んでいて、インドネシア語は「オーストロネシア語/インドネシア語派」という話を聞いて、

む!

と思って、ほったらかしにしていた本書を手に取ったので御座います。


というわけで(どんなわけだ)、言語学に興味を持った人は本書を読むとよろしいと思われるのであります。


8点/10点満点


ちなみにコサ語の言語学的言語系統はwikipediaによると、

ニジェール・コンゴ語族
 大西洋コンゴ語派
  ベヌエ・コンゴ語群
   バントイド諸語
    南部バントイド諸語
     バントゥー語群
      中央バントゥー語群
       ングニ諸語
        コサ語

だそうだ。


コサ語の類似語(?)にサンダウェ語(リンク先は英語)というのがあって、以下のような言葉。タンザニアのドドマに住む約4万人のサンダウェ族が使っているらしい。
コサ語に負けず劣らず、チュッチュカッコチッチ言ってますな。


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