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2013/03/11

ディーン・カーラン/ジェイコブ・アペル/清川幸美訳「善意で貧困はなくせるのか?」感想。
開発経済学。2013年03月01日読了。

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善意で貧困はなくせるのか?―貧乏人の行動経済学

2013年1月に出たばかりの3,150円もする新刊。ちなみに原著は2011年に出版されている。

◆内容(紀伊國屋Bookwebより)
“社会実験”+“行動経済学”が世界を救う。
イェール大学教授と現場のリサーチャーが最前線のフィールド研究から教えてくれる貧困削減のためのアイデアが満載。

第1章 はじめに―僧侶と魚
第2章 貧困と闘う―何をどうするのか
第3章 買う―セーフティネットがある世帯を倍に増やす
第4章 お金を借りる―タクシーの運転手はどうしてローンを借りなかったか
第5章 幸せを求める―もっと楽しいことがある
第6章 力を合わせる―集団の欠点はどうする?
第7章 貯める―楽しくない選択肢
第8章 耕す―ゼロから何かを作りだす
第9章 学ぶ―大事なのは学校に来させること
第10章 健康を保つ―足の骨折から寄生虫まで
第11章 男と女のこと―裸の真実
第12章 寄付をする―結論
行動経済学とフィールド実験を結びつけ、貧困削減の手立てを根本から変える研究成果がここにある。〈新しい経済学〉のいまを紹介!


◆前振り

ムハマド・ユヌスという人物を知っているだろうか?

バングラデシュでグラミン銀行を創設し、マイクロクレジットという概念を世界で初めてもたらし、2006年にノーベル平和賞を受賞した偉大な経済学者である。(2013年3月現在、バングラデシュのノーベル賞受賞者はムハマド・ユヌス氏ただ一人……のハズ)

まずはじめに書いておく。

本書は、ユヌス氏が創設したグラミン銀行=マイクロクレジットの実用性を確かめる実験を中心にした本である。なので、グラミン銀行=マイクロクレジットが果たしている役割を知らない人には、何のことだか分からない話が満載である。

なぜなら、昨今の経済学のひとつに「開発経済学」という学問があり、これは発展途上国をいかに発展させるかを経済学的に研究する学問なのであるが、十数年前に最も効果的な施策だったのがマイクロクレジット(グラミン銀行)であり、現在マイクロクレジットはそれほど評価されていない。

なぜ評価されていないのかを実験実証で解説しているのが本書である。


従って、マイクロクレジットを理解していない人が本書を読んでも意味がない。(マイクロクレジットに関する客観的な本を4~5冊読めば本書を十分理解できると思うが、マイクロクレジット礼賛本ばかり読んでいる人は本書の中身を永遠に理解できないだろう)


◆マイクロクレジットって?(概念的な話)

グラミン銀行が奨めバングラデシュで成功しているマイクロクレジットの構造は以下のような感じである。

・縫製を学んだ女性がいる
・彼女は毎日「服の修繕」を行っている
・まとまったお金がないから、ミシンを買えず、手縫いで直している
・女性は思った「ミシンが買えたら売上が倍増以上になるのに」
・ムハマドユヌスは思った「こういう女性にミシンを買う金を貸せたら金利で稼げるのに」

・ムハマドユヌスはグラミン銀行を作った
・そしてこういう女性を30人集めて、連帯責任で金を貸すことを思いついた
・30人の女性は基本的に顔見知りである。グラミン銀行が金を貸す場合、30人全員に金を貸す
・そして30人は連帯責任を持つ。誰かがグラミン銀行からの借金を返済できなくなったら、その分を残りのメンバーが穴埋めしなければならない
・30人は基本的に顔見知りである。借金をほったらかして逃げたら、その後その地域で暮らすことはできない。バングラデシュはクチコミによる人物評定がまかり通っている社会だから。

・金の回収は月に1回、30人のメンバーを全員集めて、全員から所定の金額(返済金)を集める
・返済集会に来なかったら、ペナルティあります
・金利はべらぼうで年100%とかする


◆感想

ということの客観的効果測定と分析を「開発経済学」では行っている。

知っている人は知っているが、昨今の経済学は微分積分分散標準偏差などの数学的分析が必須で、数学を分からない者は経済学に足を踏み入れてはいけないのである。

で、本書は、数式を一切使わずに、「開発経済学」の効果を実証検証しているのである。

それはそれで見事なのだが、数式を使わないことで、かえってめんどくさい言い回しが多くなって、何が言いたいのか分からなくなっているところもある。


それはそれとして、幾つかの注目ポイントを挙げる。

●p20
援助プログラムに参加する理由について。
「あなたは会合に行こうとして湖沿いの道を歩いている。その会に出席できない200ドル失うことになっている。子供が湖で溺れているのを見かけた。あなたは、200ドルを損してでも、歩みを止め、湖に飛び込み、子供を助ける倫理的な理由があるだろうか」

ほとんどのアメリカ人はイエス(子供を助ける)と答える。

では、なぜ、援助プログラムに200ドルを寄付しないのだろうか?
結果的にはほとんど同じことなのに。


●p25(かなり抄録)
kiva.org って知っているかな?
気軽に援助形式で金を貸せる、貧困国支援ボランティアだ。

でもここはくせ者で、kiva.org 経由で支援した被支援者は、既に地元のマイクロクレジット(グラミン銀行みたいな会社だと思いなさい)から金が貸されている。

kiva.org 経由で金を貸しても、実際には被支援者に金を貸しているマイクロクレジット会社の金主になっているだけなのだよ。

ウソだと思うのなら、kiva.org のポリシーをよく読もうね。


●p35
「開発の世界には二種類の人間がいることがはっきりと分かった。考える人と行動する人だ。行動する人は現実の世界に出て行き、ベストを尽くしていた。ただし、彼らにはものが見えていなかった。一方、考える人は象牙の塔の中で、興味深い分析的な研究をしていた。ところが彼らは行動する人と話をする段になると、言葉を持たないことが多かった。研究の多くは、一度も現実の世界に出て行くことがなかった」

行動する人は確かに正しい。しかし、ここでは行動する人(援助プログラムを実行する人)の盲目的な行動が、必ずしも貧困解消に繋がっていないことを皮肉っている。

行動することは正しい行為だが、その行動が正しいとは限らないのだよ。


●著者グループは、マイクロクレジットを中心とした世界各国で行われている援助プログラムに関し、その援助が効果があるのか無いのかを検証するため、援助対象者を無作為に選別し(例えば援助申し込みに来た順番が奇数か偶数か程度の無作為さ)、恣意的ではない2つのグループで援助プログラムをする/しないを実施し、援助プログラムに効果があったのか無かったのかを検証している。

著者はビルゲイツ財団(正確にはビル&メリンダ・ゲイツ財団)から金を引っ張って、社会実験実証をするようなNGO団体を立ち上げ、実際実証実験をした。その結果がまとめられているのが本書である。


いつものことだけど、この手の本を読むと私は付箋を30~70個くらい貼る。あまりにも数が多いので全部を紹介することはできない。


いつものように陳腐な言葉でまとめると、

「開発経済学」を学んでいる人は絶対必読の本。

と書いておく。


8点/10点満点


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