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2013/03/19

平野克己「経済大陸アフリカ」感想。
いわゆる新書。2013年03月08日読了。

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経済大陸アフリカ―資源、食糧問題から開発政策まで


◆内容(紀伊國屋Bookwebより)
アフリカを「援助」する時代は終わった。
新興国をはじめ、世界中が凄まじい勢いで食糧、石油やレアアースといった鉱物資源を呑み込んでいく現代。
これらの需要に対する供給源として、アフリカの重要性は突出している。
いまアフリカとの経済連携は、中国が一頭地を抜く。
世界各国がそれを追うなか、さらに大きく遅れている日本に挽回の余地はあるのか―。
広大なアフリカ大陸を舞台に、世界の未来と命運とを描き出す。

第1章 中国のアフリカ攻勢
第2章 資源開発がアフリカをかえる
第3章 食料安全保障をおびやかす震源地
第4章 試行錯誤をくりかえしてきた国際開発
第5章 グローバル企業は国家をこえて
第6章 日本とアフリカ


◆著者紹介(紀伊國屋Bookwebより)
1956年、北海道小樽市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学院経済学研究科修了。グローバルスタディーズ博士(同志社大学)。在ジンバブエ日本国大使館専門調査員等を経て1991年にアジア経済研究所入所。その後、ウィットウォータースランド大学客員研究員、アフリカ研究グループ長、JETROヨハネスブルグセンター所長、地域研究センター長等歴任し、2012年よりJETROアジア経済研究所上席主任調査研究員。著書『図説アフリカ経済』(日本評論社、2002年、国際開発大来賞受賞)ほか


◆感想

発展しつつある現代アフリカを、経済的側面から見てみよう、という内容の本。
同じような趣旨の本として、
 勝俣誠「アフリカは本当に貧しいのか」7点。2007年2月26日読了
 ロバート・ゲスト「アフリカ苦悩する大陸」10点満点。2008年5月23日読了
 ヴィジャイ・マハジャン「アフリカ動き出す9億人市場」9点。2008年8月10日読了
 ダンビサ・モヨ「援助じゃアフリカは発展しない」7点。2011年11月16日読了
などを読んだ。

本書は、経済発展しつつあるアフリカの現状を紹介するのではなく、経済的側面からいろいろと分析されている。

「第1章 中国のアフリカ攻勢」では、なぜ中国がアフリカ諸国に進出しているのかを解説する。

中国は産油国だが、経済発展に伴い1995年以降石油輸入国に転じた。中国国内の石油消費増加量はすさまじく、毎年フィリピンやスウェーデンの年間石油消費量と同じくらい需要が増えている。毎年これだけの量を確保するのである。

その結果、中国は国家戦略として、資源開発が十分になされていないアフリカ諸国に進出していった。現在、ソマリア以外の全ての国に中国大使館があるのだそうだ。

例えばギニア湾には大量の石油が眠っている。ただ、海底なので掘るのにコストがかかる。現在、石油が掘られているギニア湾岸の国は、ナイジェリア(推定埋蔵量10位)、アンゴラ(18位)、ガボン(32位)、ブラザヴィル・コンゴ(33位)、赤道ギニア(38位)などである。

ギニア湾岸諸国だけでなく、スーダンやエチオピア、リビアなど多くのアフリカ諸国に、中国は進出している。欧米諸国と違って、中国(と中国の石油会社)は石油を掘らせてくれるのなら、現政権が独裁政権だろうと軍事政権だろうと、一切批判はしない。アフリカ諸国も政治体制に口出しされないことが分かったから、中国に石油を掘らせる。見返りに賄賂をもらったり、道路や発電所やダムを造らせたりもさせる。

しかし、道路や発電所を作るのは中国人出稼ぎ労働者で、地元の雇用に繋がらない。中国人労働者は中華料理を自炊するから、飯屋も儲からない。石油利権の恩恵に与れない政権に縁のない人びとからは、中国批判が起こる。

エチオピアでは、石油の出る地方がソマリア国境近辺で、そこにシノペックという中国の石油会社が進出していたが、エチオピアからの分離独立派から襲撃を受け、中国人技術者9人が殺され、シノペックは撤退した。

リビアではカダフィにがっちり食い込み石油を採っていたが、アラブの春に巻き込まれ、カダフィとくっついている中国は悪者!と襲撃に遭い、当時リビアにいた35,000人(!)の中国人を救出した。今後のリビアで、中国は今までの利権を手放さなければならなくなるかも知れない。(リビアで民主化が進むかどうかは、甚だ怪しい。カダフィと似たような別の独裁者が出てくる可能性も高い。その場合、中国は利権を取り戻すかも知れない)


「第2章 資源開発がアフリカをかえる」では、アフリカ諸国への投資がどのように進んでいったのかを解説する。

赤道ギニアは旧スペイン領で、人口70万人の小国である。スペインからの援助で細々と生きていて、1980年代末頃の国民一人当たりGDPは300ドルと世界最貧国レベルだった。1992年に沖合で油田が発見され、エクソンモービル(アメリカ企業)が開発を担った。現在の国民一人当たりGDPは20,000ドル近い(韓国に匹敵するレベル)。20年で70倍である。

これだけ豊かになったのに、乳児死亡率は10%、平均寿命は50歳と、国民は豊かになっていない。しかも、いまだにODAで援助金を受け取っている。

これを「資源の呪い」といい、「資源産業がもたらす経済成長はかえって開発を後退させる」ということになるらしい。

アフリカ諸国(特にサハラ以南)に共通して言えることは、グローバリゼーションに対する内からの対抗力がなく、ロシアのような強権で武装した政府がなく、政府も国民もナショナリズムが希薄で、イスラムのような宗教的な結集力もない。これがアフリカの弱点でもあるが、逆説的には希望でもある(単純に言うと諸外国からの投資を呼び込めるから)。


「第5章 グローバル企業は国家をこえて」では、BOP(ボトム・オブ・ピラミッド=最底辺)ビジネスを取り上げている。

味の素はBOPビジネスに成功している日本企業である。味の素を小分けパッケージにして、1袋3円とか5円で、街の小さな商店で売っている(ちなみにインドネシアなどの東南アジアでも大成功している)。

家賃を払って、ご飯を食べて、子供学校に通わせたら、服を買う金すらままならないその日暮らしをしている母親が、ほんのちょっとだけお金を多く稼げたとする。するとその日の夕食は、入れるだけでいつもより格段に美味しい料理ができあがる魔法の粉末=味の素を買う。「短い時間で、少しでも美味しい料理を作りたい」という母親の切なる願いである。

ところが、経済が発展すると、料理に時間を割けるようになり、外食する機会も増える。経済発展とともに、味の素の需要は減っていくのである。これがBOPビジネスの宿命である。


本書は曖昧な印象論ではなく、とにかく具体的な数字を出して、過去との対比で現状を分析している。
私的に目新しいことも多数書かれていたし、逆に既に知っていることもあった。
意図的なのかよく分からないが、やたらと平仮名が用いられて読みづらい部分が多かったが、まあ些細なこと(※)だ。

良書。


8点/10点満点


※例えばp80から引用
「GDPはいろいろな項目のつみあげからなっている。アフリカの経済成長がそのうちなにによってささえられているのかを次にみてみよう」
……本書は全編こんな感じ

私としては、
「GDPはいろいろな項目の積み上げから成っている。アフリカの経済成長がそのうち何によって支えられているのかを次に見てみよう」
という程度には漢字を使って欲しい。平仮名ばかりだと却って読みづらい。

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